Scoutが食事を終え立ち上がった時、食堂の入り口には人だかりができていた。
人だかりを覗き込むと、数名のオペレーターが足元のコンテナから細長い缶を取り出して周囲に配っている。鮮やかな色とわかりやすいイラストの入った細長い缶を受け取った面々は嬉しそうに彼らに礼を告げ、めいめい足取り軽く去っていく。それらの背中を見送りながら、適当なひとつに並んだScoutは缶を手渡してくれた男に話しかけた。
「昨日のミーティングで言ってた特別な支給品か」
「ああ、調達部門が期限切れを押し付けられたというのが真相だが、味は悪くなっていないし栄養的にも特に問題はない」
できるだけ穏やかな口調で話しかけると――というのもScoutは自身の長躯と様相が威圧感を与えることを十分に承知していたからなのだが――小柄な白衣の男は一瞬目を見開き、にこりと人当たりの良い笑顔で流れるように答えてくれた。もう何度も同じことを答えているのだろう口調はなめらかで、しかし特に妙な様子などないはずの目の前の男のことが少しだけ意識に引っかる。
1356