Aurora 底なし沼のようだった闇色の視界が波打ち、形を変え始めた。
淡い蛍光が脳裏に点滅し、徐々にピントが合ってくる。
目に入るのはとっくに溶け切った蝋燭と、埃だらけのタイル。木でできた直線が数本。――ベッドの足だ。
這いずりながら体勢を変え、肘をついて起き上がる。
全身が痛い。いつから床に転がっていたのかよく覚えていない。
散らばった酒瓶をどんよりと見やる。強い酒の匂いに混じって、何とも言えない異臭。
自分の匂いだと気づくまで数秒かかった。
汗まみれの下着は月明りでも分かるくらいに染みだらけで、長髪は絡まりべたついている。
「戦士たるもの、常に清潔、勤勉であれ。これは理想ではない、命を守る手段だ」
師であり父である、偉大なる竜の騎士の言葉が耳に響く。
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