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    そうこ

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    そうこ

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    #LH1dr1wr
    お題「朝帰り」
    ヒュが遊び人に転職する話。
    シリーズから色々とネタ拝借。橙世界線に無いものがあります。たぶんギャグです。
    初投稿のため色々と至らない点もあるかと思いますが、ご容赦いただければ幸いです。

    #ラーヒュン
    rahun
    #LH1dr1wr

    朝帰り 消えた勇者を探す道すがら、偶然見つけたその施設はどうやら転職を司る神殿だとか何とかで、望む者は職を変えることが出来るらしい。
    戦士として死を迎えたヒュンケルはこれ幸いにと新たな職に就くことを喜んだが、どうにもタイミングが悪かった。
    だいぶ前から道に迷いまともな休息をとれる場所もなく、食べるのもままならない状態で旅を続け、やっと見つけたのがこの施設だ。
    久々のまともな寝食に無意識にテンションは上がり、そのままの勢いで新たな職について相談したものだから後先など考えるはずもなく。


    魔王の脅威は過ぎ去ったがいまだ凶暴な魔物は絶えず、度々交戦は起こる。
    竜の騎士に従事したオレが遅れをとる敵など存在しない、本来であれば。
    しかし、
    「だーれだ」
    「……ヒュンケル」
    戦闘中突如後ろから目を覆われ尋ねられる。
    敵が魔法を使うタイプじゃなくて良かった、とりあえず接近する気配に槍を振るえばこちらに被害は無い。
    そっと目を覆う手を退け、残りの魔物を退ける。
    戦闘が終わり少し離れた場所に立つ恋人を見れば、申し訳無さそうに佇む姿が目に映る。新たに就いた職業の特性として出る行動、それが先程の行為だ。
    遊び人、ヒュンケルが転職した職業はとんでもないおまけがついていた。
    なぜ遊び人なんだ、何度もあの時の自分に問う。あの時は疲労と空腹の限界が解消された反動でどうも正気ではなかった。
    「遊び人か……そういえば遊ぶことなど幼少の頃以来ずっとしてこなかったな」
    職業について一通り説明を聞いている時、ヒュンケルが呟いた言葉がいけなかった。いや、いけなくはない、壮絶な人生を歩んできたこの男が少しでも楽しめるなら遊びの一つや二つと言わずいくらでも付き合おう。
    だからと言って職業を遊び人にすることはないだろう。あの時のテンションは確実におかしかった。
    「いいんじゃないか、遊び人」
    昼食のメニューを勧めるが如くその職を勧めた時はどう考えても頭が回っていなかった。
    ヒュンケルも少し驚いてこちらを見ていたが、
    「お前は少し真面目すぎる。多少茶目っ気が増えれば人との交流もしやすくなるのではないか?」
    と、いかにもそれっぽい言葉で諭せば
    「なるほど、さすがラーハルトだな」
    と納得した様子だった。
    ヒュンケルも相当にキているのか今思えばらしくない返答だ。お互いどうしようもない頭で考えた結論はそれが最適解だと言わんばかりに勇んで転職を申し出る。
    思い返せば転職を司る神官がなんとも言えない表情をしていたのは同意しかない、なぜ止めてくれなかった。いや、1度確認された気はしたがあの時は聞く耳を持たない状態だった。
    そうして出来上がったのが現状だ。先程の目隠しから始まり、急に地面に落書きをしたり、敵を挑発したり、転んで思い切り敵にぶつかったり、オレを応援したり……これはやぶさかでないが。
    「すまない、ラーハルト……」
    しょんぼり、という効果音が付きそうな程落ち込む姿は初めてのことでは無い。
    「気にするな、この程度なんの障害にもならん」
    その度、それとなく励ますがどうにも気分が上向かないようで。
    「それに、お前が応援してくれた時は嬉しかったぞ」
    少しからかうように前回の謎行動について触れれば、ようやく照れたように笑みを見せる。
    そんなやりとりも何度行われただろうか、長いとも短いとも言えない旅もやがて終わりを告げる。


    勇者を見つけ出し遂に真の平和を取り戻した今、行く宛ても無いヒュンケルはオレの提案でパプニカ王国より少し離れた場所に位置する森の中に居を構え、共に生活をすることとなった。
    オレは城に住むダイ様に仕えるためその家から通うこと許可いただいた。日中は主君に仕え、日が暮れれば恋人の元へ帰る、充実した日々が続く。
    しかし、その幸せは長くは続かなかった。
    それはヒュンケルの行動だった。遊び人の職業としての本能がそうさせるのか、低くない頻度で遊びに出かけている。
    基本的に行く時は「遊びに行ってくる」と言いどこで何をしているのかは言ってこない。
    少し不安に感じ、ある時普段何をしているのか尋ねると、
    「今日はアルミラージとかけっこをしたりデスジャッカルと戯れていた」
    と、なんの負い目もなく教えてくれる。
    一般に想像する遊びとはかけ離れているが、変な人間とつるんでいないことに安心する。しかし良いのかそれで、お前一応人間だよな?
    そう聞いていたから自由にさせていたが、最近帰りが遅く、朝帰りも少なくない。
    オレを起こさないように気配を消して帰ってきているし、寝室には入らず居間のソファで寝ているのでいつ帰ってきたのかはわからない。
    「おい、寝るならベッドで寝ろ」
    その度起こしベッドに連れていくが、やめる気配がない。
    「こんな朝帰りをするほど何をやっているんだ」
    「しにがみと隠れんぼ……」
    咎めるように聞いても寝ぼけながらいつもの回答。どうやらいつもの遊びの延長のようだが、無駄に夜更かしをされ生活にすれ違いが生じ、最近あまりまともに顔を合わせていない。
    近いうちに転職させよう、そう誓い次にまとまった休みをとるべく主君に相談しようと思っていた矢先のことだった。
    「た、大変です! 町外れに凶暴化した魔物の群れが!」
    転ばぬ勢いで部屋に入ってきた兵士がそう叫ぶや否や、ダイ様は窓を開け放つ。
    「どっちの方角!?」
    「に、西側です!」
    兵士の情報を聞いたダイ様は目にも止まらぬ速さで窓から飛び立った。オレも主君を追うべく飛び立つ。
    ダイ様に並び立ち現場へ向かうと、そこでは既にヒュンケルが交戦していた。
    それなりに戦えるように回復したとはいえ、今回は数が多く魔法を使う敵もいるため苦戦気味だ。
    「ヒュンケル!」
    思わず叫べばヒュンケルはこちらを見、安堵したように微笑む。
    「ラーハルト、ダイ!」
    「ヒュンケル、どうしてここに?」
    加勢するべくダイ様と共にヒュンケルと並び立ち尋ねる。
    「友が知らせに来てくれたのだ、凶暴化した魔物達が国を襲おうとしていると」
    戦いの手は止めず答えるヒュンケルに、少し訳が分からないという顔でオレを見る。
    「……最近モンスターと友達になり遊び回っているんです」
    こんなことならダイ様に現状についてもっと話しておけば良かった。少し呆れ交じりの物言いになってしまったが、我が主も元々魔物に育てられた身。
    「へぇー、オレも友達になりたいな!」
    「ああ、今度紹介しよう」
    なんとも平和なやり取り、こんな状況でなければ微笑ましく見守れたのだが今は戦いの最中だ、そちらに集中せねば。
    この地上で最強格の3人が相手だ、如何に大勢の魔物が来ようと援軍を待つことなく片付けられる。
    さして時間もかからずにほぼ片付いたが、最後の1匹がやけに頑丈だ。
    さてどうしたものかと思案しようとした矢先、
    「2人がいるなら、心置きなく遊べるな」
    不意にヒュンケルが不敵に笑う。
    何事かとダイ様共々手が止まりヒュンケルを見つめる。
    徐々に闘気が収束する。合点がいったオレたちはサポートに回るべく魔物に向き直る。
    その瞬間、闘気は十字を形どらず敵に向かう。ダイ様共々驚き見つめる先で、闘気は檻の様に形を変え、魔物を閉じ込める。
    そしてヒュンケルはオレたちを抜き去り敵の元に駆け、真上から叩き斬るように剣を振り下ろした。
    魔物は為す術なく真っ二つに割れ消え去った。
    全ての魔物が倒れ、静寂が訪れる。
    見たこともない技にダイ様もオレも呆気にとられているからだ。
    「ひ、ヒュンケル……今の技は?」
    一足先に我に返ったダイ様が呆然と尋ねる。
    「ああ、先日通りすがりの魔族に教えてもらった遊びだ」
    楽しそうに返すヒュンケルをぼんやりと眺めながら思う、どういう遊びだ。というか通りすがりの魔族ってなんだ。
    「しかし、最近魔物の暴走が多いな……今回は良かったがまたあの特性が出て足を引っ張ったら問題だな」
    こちらの気持ちなど全く気づいた様子もなく思案するヒュンケル。
    「また、転職の必要があるのかもしれないな」
    その一言にオレ自身も我に返る。
    「ダイ様、オレもそれを考えておりまして、しばしお休みをいただきたく」
    魔物の襲撃に中断されて話しそびれた要件をダイ様に伝える。
    「もちろんかまわないよ! でも今ヒュンケルってなんの職業だっけ?」
    「遊び人だ」
    「あそびんに……遊び人!?」
    いつもの態度で突拍子もない職業を聞いたダイ様は大層驚かれている。そしてオレを見ないでいたたきたい。オレだって後悔しているんです。
    「そうだ。次は踊り子にでもなろうかと思う」
    普段のヒュンケルからは考えられない発言に、ダイ様は完全に思考が停止している。
    いたずらっ子のように笑うヒュンケルは、遊び人として道を極めたようだった。
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