Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    nonon0003

    @nonon0003

    SS、落書きなど。腐敗度高めなもの😇

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍬 👠 🍠 💗
    POIPOI 3

    nonon0003

    ☆quiet follow

    七風リレー小説②

    #七風リレー小説
    sevenWindRelayNovels

     影の落ちる廊下。直線的に伸びる白と黒のコントラスト。
     その光景に風真もまた、幼い頃の記憶を蘇らせた。学校の帰り道、横断歩道の白い所だけを渡るという、ひどく単純な遊びだ。黒い所にはワニがいて食べられてしまう、などと、子供は空想とはいえ物騒な事を言う。『だめだよ、落ちちゃうよ』と思い出の中の幼い彼女が笑った。それは彼にとって懐かしく美しく、そして少しの切なさを携えた、記憶の欠片だった。

    「どこ行きますかね。アルカードに季節限定のスイーツ出てる筈だし、ショッピングモールに新作チェックに行ってもいいし」

     カザマはどこか行きたい所ある?と尋ねる声に応えが無く、七ツ森はもう一度、彼の名前を呼んだ。

    「カザマ?」
    「あ、えっと、…悪い、何だった?」
    「ボンヤリするなんて珍しいね。疲れてるならまっすぐ帰る?」
    「いや、大丈夫だ。その、昔の事を、思い出して、」

     風真の少し俯いた顔を覗き込むように、七ツ森は身を屈ませる。眼鏡の奥、新緑の瞳が、夕日に染まりその葉を紅く染めていた。

    「何を思い出してたの?」
    「…横断歩道の、白い所だけ渡るやつ」
    「うわ、なつかしー。黒い所は溶岩で、踏むと溶けちゃうんだよな」
    「溶岩?!何だそれ怖すぎるだろ」
    「あ、学区によってちょっと内容違うのかも。カザマのとこは何だったの?」
    「ワニに食べられる」
    「え、その方が怖くナイ?」
    「そうか?」

     七ツ森は、四角く切り取られた夕日の中でぴたりと立ち止まる。

    「久々にやってみる?」

     そう言って廊下に浮かんだ光の道を、とん、とん、と進んでいく。風真は苦笑しつつも、七ツ森に続くように足を踏み出した。時折現れる深い影も、あの頃とは違い、造作もなく越えていけた。

    「「あ、」」

     突き当たり、曲がり角の先は、この時間薄暗く光が差し込まない。つまりそこは一面、湿原の波立つ沼、あるいは灼熱の黒い谷だった。

    「まぁ、そうなるよな」

     職員室はこの廊下沿いにある。残念ながら懐かしい遊びはこれまでのようだ。

    「カザマ、待って」

     構わず進もうとする風真の手に、その小指に、七ツ森は自身の小指をそっと絡めた。きゅっと結ばれたそれは、窓の外、校庭で部活に励む生徒の声にゆっくりと離される。

    「…魔法をかけました。俺たちは無敵になったので、どこへでも行けマス」
    「…ありなのか、それ」
    「ありデショ。ほら、日誌出しちゃお」
    「ワニに食べられたら責任とってもらうからな」
    「だから溶岩だって」

     そう言って笑う二人の声が、廊下に響いた。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭🙏🙏🙏🚥💴💴💴💴💴👏💴💴🐊🌋🐊🌋🐊🌋👬👬👬💗🙏💘❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    whataboutyall

    DONE七風リレー小説①
     放課後の茜色の教室は七ツ森と風真の二人きりだった。窓際の席で、今日の当番日誌を書く風真に向かい合って、七ツ森は座り、風真の手元を見ている。粒の揃った文字が、空白を埋めていく様子は見ていて面白い。自分が夢中になっているゲームよりも、こちらを見ていたいとも思う。七ツ森の視線を感じ、風真は日誌に落としていた視線を七ツ森に向けて問う。
    「……ん? 何見てるんだよ」
    「……べつにー。カザマのことしか見てませんが?」
    「なっ……、お前学校でそういうこと言うなよ」
    「誰もいないんだからいいでしょ」
     そう言いながら、七ツ森は窓枠に頬杖をついて、窓の外を眺めている。その横顔から耳に掛けて赤いのは、斜めに傾く太陽の光の色が映っているからなのだろうか。どこかの腕の良い彫刻家が丹精込めて丁寧に削り上げたような整った七ツ森の横顔と、その彼の頬にあてた手を見て、七ツ森の手が好きだな、と風真は思った。骨の形が浮き出た肉の薄い長い指に、ラグビーボールのような楕円形の整えられた爪、手首の内側に浮き出る数色の血管も、いい。身体の大きさに見合う大きな手のひらを自分に向けて差し出し、耳元で「手、つなぐか」と言われたとき、身体の中を正しく循環していたはずの血液が逆回転したのかと思うぐらい、心臓が不穏な動きをしたのを思い出す。
    913

    むんさんは腐っている早すぎたんだ

    DONE七風リレー小説企画 第一弾ラストになります。
    お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!!

    (なおラストはどうしても1000文字で納められなかったので主催の大槻さんにご了承いただいて文字数自由にしてもらいました💦今後もラストパートはそうなると思います)
    七風リレー小説⑥ 一度だけ響いた鐘の音に惹かれて風真は歩を進めていく。理事長の方針なのかは知らないが目的地までの道は舗装されておらず、人工的な光もない。すでに陽は沈みきってしまっているため、風真は目を慣らしつつ〈湿原の沼地〉を進んでいく。草木の茂る中ようやく着いた開けた場所にぽつんとあるそこは、予想はついていたが建物に明かりなどついておらず、宵闇にそびえる教会はいっそ畏怖さえ感じる。……大丈夫。俺は今無敵だから。そう心で唱えた後、風真は教会の扉に歩みながら辺りを見回して声を上げた。
     
    「七ツ森。いるのか?」
     
     ――返事はない。
     シン、とした静寂のみが風真を包み、パスケースを握った右手を胸に当てて風真は深くため息をついた。あれだけ響いた鐘の音も、もしかしたら幻聴だったのかもしれない。そもそもこんな闇の中、虫嫌いの七ツ森が草木を分けてこんな場所にくるはずもなかった。考えてみたらわかることなのに、やはり少し冷静さを欠いていたようだ。風真はそっと目の前の扉を引いてみる。……扉は動かない。
    2524

    recommended works

    むんさんは腐っている早すぎたんだ

    DONE七風リレー小説企画 第一弾ラストになります。
    お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!!

    (なおラストはどうしても1000文字で納められなかったので主催の大槻さんにご了承いただいて文字数自由にしてもらいました💦今後もラストパートはそうなると思います)
    七風リレー小説⑥ 一度だけ響いた鐘の音に惹かれて風真は歩を進めていく。理事長の方針なのかは知らないが目的地までの道は舗装されておらず、人工的な光もない。すでに陽は沈みきってしまっているため、風真は目を慣らしつつ〈湿原の沼地〉を進んでいく。草木の茂る中ようやく着いた開けた場所にぽつんとあるそこは、予想はついていたが建物に明かりなどついておらず、宵闇にそびえる教会はいっそ畏怖さえ感じる。……大丈夫。俺は今無敵だから。そう心で唱えた後、風真は教会の扉に歩みながら辺りを見回して声を上げた。
     
    「七ツ森。いるのか?」
     
     ――返事はない。
     シン、とした静寂のみが風真を包み、パスケースを握った右手を胸に当てて風真は深くため息をついた。あれだけ響いた鐘の音も、もしかしたら幻聴だったのかもしれない。そもそもこんな闇の中、虫嫌いの七ツ森が草木を分けてこんな場所にくるはずもなかった。考えてみたらわかることなのに、やはり少し冷静さを欠いていたようだ。風真はそっと目の前の扉を引いてみる。……扉は動かない。
    2524