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    panda_otete

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    三ツ谷君、重いっすねっていう話

    沢田家長女と三ツ谷君の小話①がま口のペンケース。花柄のキャラメルポーチ。刺繍が入ったポケットティッシュケース。手編みのカーディガン。二重のフリースブランケット。スクールバッグについたうさぎのマスコット。

    私の身の回りのものは、大体が三ツ谷製。

    冬になるとマフラーとイヤーマフと帽子と手袋が追加される。
    毎日使うレッグウォーマーは洗い替えできるように三セットもある。

    「いや重すぎて引く」
    「やっぱり一般的にはそうだよね」
    「三ツ谷くんヤバい奴じゃん」
    「もっとヤバいのは私が特に嫌じゃないこと」
    「ヤバいカップルじゃん。縁切ろうかな」
    「友情儚すぎ。桜か?」

    三ツ谷が部活に行っている間、私は教室で他に残っている女子と適当に喋って待っている。
    ちなみに私の部活は英語部で、ていのいい帰宅部の隠れ蓑だ。
    活動実績は特にない。

    伝説のせいで少数しかいない同性の友達と恋バナをしていたらウッカリ友情が終わりかける四時半の教室。困った。

    「イチ!」
    「三ツ谷。部活どうしたの」
    「ちょっとだけ抜けてきた」

    そんな時、件の重たい彼氏が顔を出した。
    部長が抜けて大丈夫なのか。

    「これ、今日の部活で作ったからやるよ」
    「リボンカチューシャだ。つければいい?」
    「ん。オレがやるわ」

    三ツ谷が持ってきたのはデニム生地のリボンカチューシャ。うさぎの耳風のやつ。
    私はショートボブだからろくにヘアアクセを使わないが、カチューシャならつけられる。

    三ツ谷は慣れた手つきでカチューシャをつけて髪を手ぐしで整えた。

    「キツくねぇ?」
    「うん。ちょうどいい。市販のだとむしろ緩いんだけど」
    「そりゃイチのサイズで作ったし」
    「人の頭のサイズいつ測った???」

    カーディガンの時に上半身の採寸はしたけど、頭なんて測っただろうか。
    問いかければ「目算で」と返ってきた。目算にしてはピッタリなんだが。

    「めっちゃ似合う。可愛い」
    「そ。ありがと。学校だと没収されるから休みの日に使うね」
    「おう。じゃあオレ戻るな。五時には切り上げてくっから」
    「はいよ」

    手を振って見送った。
    カチューシャはそのままに席に戻ると、ドン引きしている友人がいた。

    「……あいつマジでやべぇ奴だ」
    「なんで今のやりとりで三ツ谷の好感度下がったの」
    「逆に聞くけどなんで下がらないと思ってんの」
    「え……分かんない……」
    「マジでやべぇカップルだった。エンガチョ」
    「理不尽」

    エンガチョされちゃった。


    ◇  ◇  ◇


    帰りは三ツ谷のバイクで送ってもらう。ちなみにバイク登校なんてOKのはずないので学校の近くに隠して停めている。

    三ツ谷の背中をちょうどいい風避け&カイロ代わりにしながら、声を張って聞いてみた。

    「ねぇ、三ツ谷って重いの?」
    「体重の話か?」
    「いや彼氏として」
    「……………………」

    黙ってしまったんだが。
    しばらくインパルスのエンジン音と風の音しかしない。
    並盛に入ってから漸く三ツ谷は口を開いた。

    「………………別に普通だろ」
    「私、分かっちゃうから嘘つく人苦手なんだ」
    「ごめんたぶん結構重い」

    超直感により人の嘘は絶対に分かってしまう。
    お世辞でも、人を想った嘘も、気遣いの嘘も。
    嫌いではなく苦手と言っただけなのに、三ツ谷は
    早口で訂正・肯定した。

    「ふーん」

    三ツ谷に自覚があるならまあいいか。
    私はそんな気持ちで軽く返事をした。

    「お前、なんかもっとコメントあるだろ」
    「別にないよ。嫌じゃないし」

    それはつまり私も重い女ってこと?マジかぁ。私の方が自覚なかったわ。

    「三ツ谷の重さごときでどうにかなるわけないじゃん」

    私がそう言うと、三ツ谷の耳がブワッと赤くなった。耳どころか首まで赤かった。
    そんなに恥ずかしいこと言ったかな。

    「……オレ、お前のそういうところすげぇ好き」
    「どういうところ?」
    「オレが重いのは絶対イチのせいだからな」
    「責任転嫁だよ」

    冤罪だと思います。


    …………………………………………
    自覚あるならいっか、っていうのは今後自分以外の人と付き合った時に苦労するからねって意味だったりする。
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    rinrizerosyura

    DONEGEGO DIG. AUTUMN 開催おめでとうございます。展示用の新作長編です。
    祓ったれ本舗の夏油傑と、祓ったれ本舗であるはずの五条悟、二人の舞台(世界)と過去の縛り。
    夏油目線でお送りします。

    夏五Forever……
    ☆作品の感想等は、スペースの書き込みボードか、当方のTwitterにあるwaveboxからお送り頂けますと嬉しいです(о´∀`о)
    あの照明(光り)を覚えているか「……、さとる」

     隣に佇む相方の肩を叩く。サングラスに隠された、日本人とは思えない蒼の瞳が瞬きもなく会場を見つめていた。

    「さとる、悟。行こう、呼ばれてるよ」
    「……すぐる、俺たち……」
    「そうだよ」

     たくさんの紙吹雪が舞い、歓声が響く。金色のテープも床や私たちの頭の上にまで引っかかってて、悟の頭のそれを取ってあげた。

    「私たち、優勝したんだよ!」

     念願だった。芸人としてデビューしてから今日まで長かったような、あっという間だったような。十年以上寄り添ってきた相方兼親友はまだ現実を飲み込めていないのか、一言と発さない。私は彼の手を引いて舞台の中央まで向かった。
     私たちが優勝したのは、若手芸人の登竜門とも言われ、全国で生放送されているお笑いグランプリだった。ずっとこれを目標に生きてきたのだ、嬉しくない訳が無かった。
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    おはぎ

    DONEWebイベ展示作品③
    テーマは「くるみ割り人形」 現パロ?
    彫刻と白鳥――パシンッ
     頬を打つ乾いた音がスタジオに響く。張りつめた空気に触れないよう周囲に控えたダンサーたちは固唾を飲んでその行方を見守った。
     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
     日本人離れしたすらりと長い手足と儚く煌びやかなその容姿から『踊る彫刻』の異名で知られるトップダンサーがサトル・ゴジョウその人だった。今回の公演では不慮の事故による怪我で主役の座を明け渡すことになり、代役として白羽の矢がたったのが新進気鋭のダンサー、スグル・ゲトーである。黒々とした艶やかな黒髪と大きく身体を使ったダイナミックなパフォーマンスから『アジアのブラックスワン』と呼ばれる彼もまた、近年トップダンサーの仲間入りを果たした若きスターである。
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