あまたカササギの背を渡り「うん、わかった。……それはもういいから。あの、さ……―――ううん、お土産楽しみにしてるね」
他愛もない話。満天とは言い難い星空を頭上に据えて立つ屋上は少々蒸し暑さを感じる。うっすら噴き出る汗が額や喉元を通ってどうにも不愉快だ。そう、だから気分がよくないのは風があんまり吹いてくれないからで、決して喉元につっかえている言葉のせいじゃない。決して。
電話を切り一呼吸、目印にした真っ赤なネオン看板に隠れて適当に座ったところでぬるい夜風が頬を撫でた。風上には見慣れた天狗がすいすいと飛んでいるがどこか憐れみというか慰みのようなものが伺えて、さっきのそよ風は「元気出せよ」という気持ちが乗っているような気がした。があがあと鳴いている意味は正確にはわからないけど。
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