息は酔い宵、帰りは 「やってしまった」という後悔と「やってしまえ」という欲望が耳元でがなり立てながら殴り合いをしている。
均整のとれた若い男の体が草臥れかけたソファでばらけて弛緩している、のを真上から覆いかぶさるかたちで見下ろしている。
取り乱してぐらぐらと揺れる視線で組伏した彼の肢体を眺めた。まだ成人して片手で数えられるほどの年しか重ねていない、成長期が終わった体躯は固すぎず柔軟な筋肉がついて引き締まっている。首筋を彩る血色のいい肌は上気して熟れた果実を思わせる。かぶりつきたいなんて言ったら即突き飛ばされる。それから一発殴られる…だけで済めばマシだろうな。
こんな子供に懸想しているなんて言ったら過去の自分は鼻で笑って軽蔑するだろう。あるいは昔馴染みの知り合いに通報するかもしれない。それだけ信じがたいことだが事実だった。
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