全ての片付けを終えると時計が0時を知らせる。暁人は時計を見ると何かを考え家の鍵だけ持ち外に出た。
ー最初はどこに行こうかな?やっぱりあそこかな…ー
暁人は思いつくままに目的地に向かう、そこは渋谷のスクランブル交差点。
ーここで僕は事故を起こし…瀕死の状態であんたに会った…状況は最悪で不思議な霧は出るしあんたは僕の体を乗っ取ろうと首を絞めるし本当に印象が悪かったなー
暁人はあの日を思い出すとクスッと笑う。あの時は最悪で大変で笑い話じゃないのに人間っていうものは不思議とそういう記憶でさえも笑い話にしてしまうんだなと暁人は思った。
スクランブル交差点に背を向け歩き出し次の目的地は「カゲリエ」
KKが体に入っていた名残なのかエーテルや霊視、グラップルも使えるがエーテルに関してはあの日程威力も無ければ弾数さえ少ない。だからここぞと言う時以外は弓と札を使っている暁人の今の手持ちは家の鍵のみ。カゲリエに着くと暁人はグラップルで頂上に向かう。勿論監視カメラなどに配慮して隠れながらだが…
頂上に着くと暁人はポツリと「絶景かな絶景かな」と呟く。
これはKKがあの日渋谷の街並みを見ながら言っていたセリフだった。
ーあの日は雨ばかり降っていてマレビト達のせいで街並みも華やかさが欠けていたけれど、KKとの記憶は大事なものなんだよー
一度深呼吸すると暁人は下に降りた。次の目的地に向かう為だ、そして暁人が向かった先は「代山神社」
沢山並ぶ出店には今の時間人はいない。だが暁人の脳裏には猫又が浮かんでいた。
ーここで狸の親分に出会って色々探し回ったなぁ…狸に似たポメラニアンとか見つけちゃってKK困惑してたなー
あの日の出来事が鮮明に思い出せる今寂しさもあり切なさもありKKが側にいない辛さがある。
だが暁人は前を見つめ神社で御詣りをすると最後の場所に向かう。
目的地に着くと鍵を出しドアを開け奥に進む。
「ただいま」
「おう、おかえり。随分長い時間出掛けてたじゃねぇか」
目的地はKKのアジト。
中に入るとタバコをふかしテレビを見ていたKKが暁人の方を見た。
「あの日の思い出を振り返ってたんだ。でもやっぱり今の方が良い。だってあんたに触れるから」
そう言うと暁人は思い切りKKに抱き着き肺いっぱいにKKの匂いを吸う。
「おーおー、お暁人くんは積極的だねぇ?」
「茶化すなよ、僕だって恥ずかしいんだから」
少し頬を赤らめた暁人は頬を膨らませながらもKKから離れようとはしない。KKも満更でもなさそうな顔をしながら暁人の頭をポンポンと軽く撫でているとまさか暁人から爆弾発言が飛んでくるとは露ほど思っていなかった。
「やっぱりKKの匂いは落ち着くよ、ずっと吸っていたい」
「おまっ…!!!お前…!!!!」
今夜は寝かせねぇと強く誓うKKだった。