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    takeke_919

    @takeke_919

    多分絶対使いこなせてない😇

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    POIPOI 13

    takeke_919

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    終わりまちた。当初の予定からかけ離れるのはいつものことです(。-∀-)

    ポイピクの使い方これであってるのかな?って終始思ってます。

    #K暁

    無二の目覚め負の感情──それは人が誰しも抱いている感情の一つだ。怒り、悲しみ、不安や孤独。例を挙げればキリが無い其れらは、人々が多く集まれば集まるほど、少しずつ生まれ落ちていく。
    それ自体は何ら可笑しな事ではなく、仕方のない事だ。

    ……しかし、一人が抱くソレが僅かなモノであったとしても、積り積もればやがては大きな畝り、所謂『穢れ』へと変貌する。そういった闇深い穢れほど其処に住まう生き物や土地に悪影響を与え、良からぬ存在を招くに至るのだ。

    そんな、穢れた場を浄化する為にKKと暁人の両人は今宵も駆り出されていた。

    何ら難しい事はない。いつも通り、穢れに招かれた化け物共を祓い退け、後は穢れの中心たる核を浄化すれば終わる……筈だった。枯木の様に枝々を上方へと伸ばす、黒き穢れの大木を探るKKの背後に、音も無くずうるりと湧き出したのはマレビトの中でも厄介な存在──裂紅鬼だった。

    「KKッ!!」

    いち早く異変に気付いた彼の相棒──暁人の切羽詰まった声が闇夜に響き渡る。KKとて、油断していた訳ではなかったが背後からの急襲に応戦が後手に回ってしまった。

    耳まで裂けた大きな口を歪めて、ケタケタと笑う裂紅鬼。身に纏う血の様な深紅のコートを翻し、手に持つ大きな裁ち鋏でKKへと襲い掛かる。
    近距離からの、この一撃を避けるのは不可能に限りなく近い。満足な防御体勢もとれぬまま、己の中の勘がそう囁いていた。

    「(飛んで火にいるナントヤラってか……クソ)」

    恐らくこのマレビトは闇に潜み窺っていたのだろう。同胞共を浄化する彼等が最も無防備になる、その瞬間を。しかしその思惑に気付いたとて、今や後の祭りだ。それを理解しているからこそKKは胸中にて悪態を吐く。

    だが此方も素人ではない。不意の一撃を見舞われ例え手負いになったとしても、眼前の存在を祓い去るその技術も力量も備えている。……何より今は、KKは一人ではないのだ。

    その事実が彼の中に余裕を生みだす。ニヤリと不敵な笑みまで湛えたその形相は何とも好戦的だ。自身目掛けて振り下ろされる刃物には目もくれず、ただ相手の愉悦に歪む眼睛を眼光鋭く睨め付てやる。……オマエ如きがヤレるものならヤってみろと、彼の目が如実に語っていた。

    しかし、次の瞬間──

    彼の眼前に見覚えのあり過ぎる背中が躍り出ていた。それはまるで、裂紅鬼の放つ一撃から己が相棒を庇い立てるとでもいうかの様に。
    裂紅鬼とKKとの間に暁人がその身体を割り込ませ、深紅の女の一槌をその身に受けたのだった。
    ガツンと、鈍い音と共に横面に一撃を食らった暁人は衝撃に従う様に流されその場に崩れ落ちる。そのままピクリとも動かない、いや、動けないと言った方が正しいだろうか。

    KKの双眸が驚愕に見開かれる。

    相棒が、暁人が地に倒れ伏すその光景がまるでスローモーションの様に彼の目に写り込んだ。
    頭の芯で何かがチリチリと爆ぜ、足元がぐらつく。無意識に力の入った拳は指先が白くなるほど握り込まれ、キーンと鳴り響く耳鳴りが思考の邪魔をする。

    刹那、己の中で烈々たる赫怒が湧起るのをKKは感じていた…が、抑制する気など更々起きなかった。自身でも頭に血が上っている自覚はある、しかしソレを咎める者は此処には誰も居ない。唯一彼を宥められた存在は、既に害されてしまったのだから。

    荒れ狂う激情に身を委ね、KKは今だニタニタと不愉快な笑みを深める裂紅鬼と対峙する。

    「ぶっ殺す……!!」

    獣の唸り声の様に低く、怒気を孕んだ声を皮切りに彼の右手は風の構えをとる。
    その様相は悪鬼羅刹も恐るると言わんばかりであったのだとか。無論、唯一その様を目の当たりにした存在は当該者によって跡形もなく浄化されたのだった。


    ⬜︎⬜︎


    アジトの一室──其処に設けられた寝台で、暁人は眠っていた。額に巻かれた包帯が何とも痛ましい。彼のすぐ側、寝台脇の椅子に腰掛けたKKは眠る暁人のことをただじっと見詰めている。

    倒れ伏す暁人の姿を目にした瞬間、ぶちりと自身の頭の中で何かが切れる音をKKは聞いた。其処からの記憶は、正直言って酷く朧げだ。気付いた時には梔子と紅掛花を織り交ぜたような色彩の、裂紅鬼の心臓たる核を自身の手で握り潰していたのだ。恨み辛み言を宣いながら跡形もなく消え去る裂紅鬼には目もくれず、怒り昂る自分自身を何とか抑え込み倒れた暁人を自らの腕に抱え起こす。

    「…暁人ッ!おい…しっかりしろ…!!」
    「……け…ぇ、けぇ……」

    KKの呼び掛けに固く閉ざされたままだった瞼を僅かに持ち上げた暁人だったが、彼の名を呟いてすぐにぐったりと意識を飛ばしてしまった。KKを庇い、裂紅鬼からの一撃を受けた場所だろう顳顬からは、一筋の赤い糸がタラリと垂れていた。


    この傷が致命傷にはなり得ない事ぐらい、己の経験からも、そうして頭でも理解はしている。いっそ自身と暁人が出逢った、あの雨の夜に般若から受けた胸部への一撃の方がよっぽど危険だったし、確実に致命傷だった。

    そんな事は分かり切っている筈なのに。

    固く閉ざされた双眸を、力無くダラリと投げ出された四肢を。……そして、額横に流るる赤、緋、朱───

    それら全ては、KKにかつての経験を、憂懼を想起させるには十分だった。……いや、十分すぎる程であったのだ。



    眠る暁人の右手を、そっと自らの手で握り込む。

    命に別状はない、怪我の処置も済んでいる。意識を失ったのは、受けた一撃の当たりどころが悪かったからだ。軽い脳震盪の様なものだと原因も分かっている。直に目を覚ますだろうと凛子も言っていた。……しかし、どうしてもKKは落ち着いていられなかった。

    繋がれたその手から伝わる温かな熱が、穏やかに上下する胸の動きが。彼が確かに此処に存在している事をKKに知らしめる。

    「……随分と、弱くなっちまったモンだな」

    ポツリと溢された独白は悔恨か、それとも悲歎か。応えは出ない、ただぐるぐると自らの頭で考え続けるが今の彼の状態ではどう足掻いても堂々巡りから抜け出せないだろう。


    その時、握り込んでいた暁人の右手が僅かに動く。
    KKの視線は導かれる様に、暁人の双眸へと吸い込まれた。視線の先、長い睫毛に縁取られた瞼を薄らと持ち上げ、己を静かに見詰める相棒の姿にKKは堪らず立ち上がる。予想外の勢いにガタン、と音を立てて倒れてしまった椅子のことなど彼にとって今は瑣末事だった。

    そんな事よりも、今は暁人のとる行動全て、発する言の葉全てを気に掛けたいと。そう言わんばかりに、伏す片割れの相貌を覗き込む。

    「……大丈夫か?痛いとか、気持ち悪ぃとか……可笑しなとこはないか?」

    至近距離からお互いの瞳を合わせ、空いている方の手をするりと暁人の頬に伸ばしながらそう問い掛ける。今し方目覚めてばかりの相手にするには些か矢継ぎ早過ぎると、その自覚はあった。……それでも止まらなかった。止められなかった。

    何でも良い、一言でも構わないから話してくれと、オマエの声を聞かせてくれと。急く己を戒められなかった。

    それでも、己を庇い手傷を負った片割れを急かす様なことだけはしたくなかった。だから、今だぼんやりと自身の眸を見遣る彼の頬を指の背で二度、三度と撫で摩る。まるで壊れモノに触れる様な、そんな柔らかな手つきに自分自身でも軽く驚きを覚える程だった。

    「(……まさかこのオレが、まだこんな風に誰かに触れる事が出来るなんて……な)」

    頭の片隅で、そんな事を考え始めたKKのことを見抜いているのか、いまいのか。ぱちりぱちと、自身の覚醒を促す様に緩やかに瞬きを繰り返した暁人はゆうるりとその相好を崩す。それは、珍しく阻喪している眼前の相棒を安心させる様なソレだった。


    眉尻を下げ、困ったように微笑みを浮かべる暁人はあることに気付く。しっかりと強く、自身の右手を握り込んだその手が──指先が、酷く冷たく強張っていることを。己が容態を気に掛け発されたその声音が、僅かに揺れ震えていたことを。

    どうやら随分と心配を掛けてしまったらしい。そう如実に悟った暁人は自身の相棒に倣い、左手をそっと彼の頬へと押し当てる。

    なんて顔してるんだよ、と。

    ポツリと小さく溢しながら労いの意も込めて、涙堂辺りを親指ですりすりと摩る。するとより一層、KKの表情が歪むものだから。一方的に握り込まれたままだった右手を一度解き、再びしっかりと繋ぎ直す。

    「……ねぇ、KK。僕はだいじょうぶ、大丈夫だよ」
    「……本当か?」
    「うん、本当。何処も痛くないし、気分だって悪くない。……それよりもさ」

    KKの方こそ、大丈夫?

    対峙する者に確かな安堵感を与える、とても穏やかな笑みを湛えながら暁人はぎゅっと右手に力を込める。自身の熱が、その鼓動が。冷え込んでしまった相棒のこの手に、悲愴した心に伝わる様に、分け与える様に、包み込む。

    手負いである筈なのに、片割れの心根に寄り添い、尚且つ無二の強さを見せるその姿にKKは再認識せざるを得なかった。

    相棒──暁人の抱く、その真価を。

    「(ホント、コイツにゃ敵わねぇな……)」

    特大の溜息と共に、KKはぼすりと暁人の肩に顔を埋める。突然の彼の行動に軽い驚愕を見せた暁人だったが、そのままぐりぐりと肩口に額を擦り付けられればくすくすと小さく朗笑を溢しながら、空いた左手で相棒の後頭部やら首の付け根やらを撫で摩った。

    大の男を捕まえて可愛いなんて何処か不釣合いな事を考えているに違い無い、と彼の小さな笑声を耳にしたKKは見当つける。しかし、普段なら突っぱねるソレも今は甘受しても良かろうと思えてしまう所を見るに、どうやら此度の一件は相当堪えたらしい。

    「……頼むから、今回みたいなことは二度としてくれるなよ。でないとオレの心臓が保たん」
    「僕だって、あんな肝の冷える想いは御免だよ」

    顔を埋めたまま、ぼそぼそと耳元で囁けばすぐさま返される反論。反駁を加える元気がある事を喜べば良いのか、悩みどころだ。

    「おま……そこは素直に頷いとくモンだろ」
    「逆の立場なら、KKだって僕と同じ行動とってたと思うけどね」
    「んなモン、そん時になってみなきゃ分かんねぇだろうが」
    「断定できない時点でアウトだね」
    「……ああ言えばこう言う」
    「ふはっ、何だよソレ」

    愉快そうに笑い声を上げる暁人に異常は見受けられなかった。この様子ならもう心配はいらないだろう。
    心密かに、そっと胸を撫で下ろしたKKは上体を起こしながら傷に触らない程度に暁人の髪をくしゃりと掻き混ぜる。


    先に蔓延っていた憂いの色は消え失せ、その形相は暁人のよく知るKKの姿へと忽ち様変わりしていた。


    時に鋭く、時に穏やかに。自らの歩むその先を聢と見据える、そんな相棒の姿へと───




     ─終─








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