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    ebizou_1127

    @ebizou_1127

    『容植』最推し。

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    ebizou_1127

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    我的可爱小督公

    #成化十四年
    14thYearOfChenghua
    #汪植
    wangShik
    #丁容
    dingRong
    #唐泛
    tangPan

    小督公 隋州の危機に際して、頼れるのは汪植しかいない。

    時々ひねくれた物言いをするのが気に入らないが、我々の中では一番官位が上だし、財産もあるようだし、強大な権力を持っている。

    一番年下なのに。

    汪植はいつも仕事ばかりしている。

    遼東でも、あんな深夜に起きて仕事をしていた。
    信じられない。
    必然として、丁容も起きているのだろう。
    気の毒に。


    冬儿から聞くところによると、話題の菓子を携えて、時々昼間に顔を出すらしい。

    「最初はちょっと苦手だったけど、いつも美味しいもの持って来てくれるから、悪い人ではないと思う」

    と、すっかり手懐けられている。

    さすが、宮中生活が長いだけあって、女子供の扱いに長けている。

    若くて、仕事が出来て、敵は多いけど陛下の絶大な信頼があって、まぁ、そこそこ整った顔をしている。

    頭は切れるし、基本中の基本である四書五経のみならず、あれこれと読み漁っているようで、隋州とは出来ない詩の話が出来るのは楽しい。

    そう言えばこの前は筍子の話で盛り上がったな。

    いや、そんなことではなく!

    何か弱点はないだろうか。

    ここは角度を変えて、一番身近な丁容から攻めてみよう。

    船倉で、厨司と今夜の食事の打ち合わせをしているらしい丁容を、密かに観察する。

    「これは、督公のお好みではない」
    「こちらは八角と一緒に煮込んだほうが督公のお好みだ。小さく切ってからお出しするように」
    「今朝は、椀物を残されていた。督公には塩がきつ過ぎたようだから、次からは気をつけるように」

    督公、督公、督公!

    丁容、こんなことまで指示していたのか!

    細か過ぎる!

    八角、煮込む、となると、今夜は肉だな。

    楽しみだ。

    船倉から出て来た丁容を捕まえて、さりげなく事情聴取だ。

    「丁容、今夜は肉が食べたいなぁ」

    「肉料理ありますよ、唐大人」

    またこいつは食べ物のことばかり考えているな、とでも言うように、丁容は少し眉をひそめて答えた。

    明らかに警戒している。

    「そうか、楽しみだな!ところで丁容は、汪督公に仕えてもう何年になる?あいつの下で働くのは大変だろう?こき使われているんじゃないのか?」

    と、少し気遣う様子で聞いてみる。

    「もう三年になります。大変な事などひとつもありません。督公の下で働けることを誇りに思います」

    何という模範解答。さすが丁容。

    「三年?十四歳の汪植か、どんな感じだったんだろう。最初からあんな風に、ひねくれた物言いで、酷薄で、生意気だったのか?」

    わざと否定的な言葉で、丁容を煽ってみる。

    「そんなことはありません!あの頃の督公はまだ少しお小さくて、素直でお優しく、西廠の皆から"小督公"と呼ばれていました。あどけないお顔でお笑いになると、大変可愛らしくて…」

    余計なことまで言ってしまったと言う顔をした丁容は、

    「申し訳ありません、急ぎますので。失礼します」

    と言い、慌てて汪植の船室の方へ行ってしまった。

    私はほくそ笑んだ。

    小督公!

    素直!優しい!あどけない!

    あの丁容があんなに喋るとは思わなかった。

    もう少し煽れば、何か出てきそうだが、次はもっと警戒されるだろう。

    次は船室をこっそり覗いてみよう。


    小窓が少し開いている。

    ここからなら室内が見えそうだ。

    お、汪植はうたた寝をしているな。

    丁容が何か報告をしているようだが、よく聞こえない。

    寝ながら聞いているのか?

    器用な奴だ。

    すると、船首の方で、大きな声がした。

    どうやら一旦どこかの港に立ち寄るらしい。

    そして、その時、私は見てしまった。

    目を開けた汪植が身を起こすと、丁容がさっと跪き、靴を履かせているのを!

    靴!

    副官は、そこまでしないといけないのか?

    私は思わず目を見開いた。

    外套の紐まで結んでもらうのか!

    しかも汪植、子供のように顎を上げてるじゃないか!

    襟元の乱れまでもか…。

    丁容の満足そうな笑みに、思わず身震いがした。

    宮中ではこんな甘い光景が、日夜繰り広げられているのか?

    宮中とは、なんと恐ろしい場所なのか!

    船室から二人が出てくるようなので、慌ててその場を離れる。

    どうやらこの港では、物資の補給以外に、誰かが汪植を待っているらしい。

    桟橋では、供を引き連れた地方の高官らしき人物が、恭しく礼をしている。

    辺りを睥睨し、西廠提督として重々しく振る舞うあの汪植が、実は副官に身の回りのことを何もかもしてもらっているなんて。

    高官からは、信書をいくつか受け取っているらしく、食事の招待も受けているようだ。

    きっと美味いものにありつける。

    承諾するんだ、汪植!

    しばらくすると、荷物を積み終わったところを見計らって、汪植が返礼をした。

    高官は名残惜しそうにしているが、どうやら食事は無理そうだ。

    船が岸を離れ、川の流れに乗る。

    甲板になんとなく立っていると、汪植がこちらへやってきた。

    そして、腹を空かせた犬を宥めるような声で、

    「信書を確認するまで待て。どうしても待てないようなら、食事は先に用意させるが」

    と言った。

    「さっきの港で食事の招待を受けたんだろう?どうして受けなかった」

    私の不満そうな声に驚いた様子で、

    「隋州の危機だから、早く吉安に行きたいのでは?お前は本当に食べ物のこととなると、どうしようもなくなるのだな」

    と嘲笑した。

    「あ、そ、それはそうなんだが。でも少しくらいなら…」

    つい本音が出てしまった。

    この辺りの名物料理が食べられたかもしれないのに。

    汪植は、たまに見せるあの薄笑いを浮かべながら、

    「隋州も気の毒だな。どうせこの辺りの名物料理とか、些末なことを考えていたのだろう?ん?」

    と言って、扇で頬をぱちぱちと叩いてきた。

    正直、その通りなのでぐうの音も出ないが、私には切り札がある。

    年上の威厳を持ってにやりと笑い、二人にだけ聞こえるように囁いた。

    「靴くらい自分で履けよ?小 督 公」

    「…!」

    汪植が、見たことのない恐ろしい顔で丁容を見た。

    すまない、丁容。
    きっと怒られるんだろうな。
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