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    teimo27

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    teimo27

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    付き合っているフェイジュニの忘れられない一日

    忘れられない一日 ファ―ストキス特集。
     フェイスが暇つぶしに雑誌をめくっていると、その特集のページが出てきた。そこには読者のファーストキスの思い出が書かれていた。
     部活の帰り道、先輩と公園で初めてキスをした。ドキドキした甘い思い出。
     初めて彼氏の部屋に遊びに行ったときに、映画を観ていたらそういう雰囲気になってキスをした。
     教室に残っていたら好きでもない男の子から突然キスされた。最悪。
     夏合宿で肝試しをやったときにたまたまペアを組んだ男の子となんとなくキスしてしまったけど、好きな男の子ではなかったからもっと大事にすればよかった。
     ……などと言った甘酸っぱい思い出から、苦い思い出ある。
     それを見ながらフェイスは自分の時のことを思い返した。
    「……全然、思い出せない」
     セックス初体験の時の思い出はうろ覚えであるものの、ファーストキスになるといつだったのか全く思い出せないのだ。色々面倒くさくて彼女たちと付き合うようになったのは、アカデミーに入学してからだったが、フェイスは幼少の頃からモテていて女の子たちから迫られることがよくあった。子供の頃に奪われたような気もする。
     世間的にはファーストキスは大事な思い出なのかもしれないが、フェイスにとってはどうでもいいことだった。
     そもそもキスは特別なことじゃない。
     ずっとそう思っていた。
     ジュニアと付き合うまでは。
    (……おチビちゃんと初めてキスした時のことは、昨日のことみたいに覚えてるのに)
     その日はフェイスにとって忘れられない特別な一日だった。
     
     
     ジュニアとキスをしたのは付き合ってから一ヶ月くらい経ってからだった。
     なぜ一ヶ月も開いてしまったのかというと、フェイスは恋愛初心者のジュニアのペースに合わせていたのと、好きな子と付き合うことが初めてで勝手がわからずに悶々とした日々を過ごしていたからだ。
     今までデートもキスもセックスも自分からしたいと思ったことはほとんどない。ほとんど彼女たちから望まれてしてきた。そしてそれは面倒なことを回避するための手段だった。
     そんな生き方をしていたため、自分からアクションを起こして彼女たちを喜ばせることなんてしたことはない。彼女たちが満足できる最低限のことだけで過ごしてきた。
     だから、同世代に比べたらそれなりの経験を積んでいるにも関わらず、フェイスは本命の相手を喜ばせる方法がわからない。
     普通ではない付き合い方をしてきたから、普通もよくわからない。そしてフェイスの周りには、そういうことを相談できる相手がいなかった。
     ジュニアに恋愛経験がそれなりにあるのならば、次のステップに進むことを躊躇しなかっただろう。
     だが、ジュニアは女の子と付き合ったこともない、初恋もまだのようなお子様だった。初めて付き合うのが男のフェイスになれば、交際の進みも慎重になる。
     だって、流石に精通はしていると思うが、ジュニアが自慰をしているところを一度も目撃したことがないのだ。一緒に暮らしていればそういうことをしていることにもなんとなく気付くが、ジュニアは一切その気配がなかった。性欲もあるのかよくわからない。確実に性欲よりも食欲や睡眠欲が勝っている子供に安易に手を出すことなどできる筈もなく。
     フェイスにできるのは、ジュニアに嫌われないように徐々に距離を近づきながら探ることだった。好き勝手してジュニアに嫌われたくない。
     そんな日々を壊したのは、意外にもジュニアの方だった。


    「クソDJ」
    「なに?」
    「……」
     ジュニアはちらちらフェイスの方を見て何か言いたそうにしているが、一向に口を開かない。
    「おチビちゃん? どうかした?」
     不審に思ったフェイスがジュニアに近づいて顔を覗き込む。いつもまっすぐフェイスを見つめるオッドアイは不安そうに揺れている。
    「言いにくいこと?」
    「あー、まー……そう」
     いつも自分の意見を言うジュニアが言い淀むことは珍しかった。よほど伝えにくいことを言おうとしている。
     嫌な予感がした。
     フェイスが思い浮かぶ、ジュニアの言いにくいことは一つくらいしかない。
    「いっとくけど、別れないからね」
     先手必勝とフェイスは先に自分の思いを伝えた。
     別れたくない。
     そんな風に思う相手ができるのは思っていなかった。
     フェイスは今まで去っていく相手を引き留めたことがない。去る者は追わない。それで生きていたのに、ジュニアだけはそのルールに当てはまってくれない。
     みっともなくてもいい。悪いところがあるなら直す努力はする。ただ、フェイスはジュニアと別れたくない。その重いがジュニアに伝わっているのかいないのか、ジュニアは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
    (あれ、違った?)
    「別に、別れたいとかそういう話じゃない。つーか、俺が別れたいって思ってるって考えてたのかよ!」
    「思ってないけど、おチビちゃんが言いにくい話っていうから。俺と別れたいっていうのしか思いつかなかったの」
    「ふーん、ならいいけど」
     そう言いながらもジュニアは疑うような目で見ている。
    「別れたくない……じゃないなら、なんなわけ?」
     別れ話ではないなら何を言われても大丈夫だ。多分、たいていのことなら受け入れられる。
     ジュニアの話を促す様に、オッドアイを見つめた。
    「……クソDJが別れたくないって思ってるってことは、俺達付き合ってるんだよな?」
    「付き合ってるよ」
     付き合い始めてこの一ヶ月はジュニアとの時間を優先してきた。クラブにだって通わずに、毎日隣にいて過ごしてきたのに、付き合っているかどうか疑問に思われると考えていなかった。
    「……だったら、なんで何もしねーんだよ」
     恥ずかしいのか、ジュニアは頬染めてもじもじしながら言った。
    「何も?」
    「だって、何もしてない……普通、付き合ったら色々するんだろ?」
    「……」
    「おい、何か言えよ」
    「……おチビちゃん、色々って何のことかわかっていってる?」
    「なっ! わかってる!」
    「それなら言ってみてよ」
     先程までの威勢の良さはどこにいってしまったのか、ジュニアはぐっとなり言葉に詰まる。それから、視線を落とすともじもじしながら言い始める。
    「その……手握ったり、キスとかしたり……」
     フェイスの反応が気になるのかジュニアがそっと視線を上げる。いつも強気の瞳が不安そうにしているのを見て、フェイスの背中がぞくぞくする。
     ジュニアが不安になるのは、フェイスが手を出さないからだ。恋人らしいことをしてないから、本当に付き合っているのか信じられなくなったのだろう。
     理想が高く負けん気の強いジュニアが、フェイスのことで不安になる。フェイスのことが本当に好きだからそうなるのだ。ジュニアから一心に好きと気持ちを向けられるのは気持ちがいい。
    「おチビちゃん、手を出して」
    「手?」
    「こうやって広げて」
     フェイスは片手を広げて見せた。ジュニアが同じように手を出すと、フェイスはその掌の指の間に指を挟んでぎゅっと握る。
    「恋人握り」
     ジュニアの言った恋人だったらやることの一つを実践して見せた。
     自分と同じ男の手だ。小さいといってもトレーニングして鍛えているジュニアの手は、フェイスよりも小さく筋張っているが、滑らかで指どおりは良い。ずっと触っていたくなる手だった。
    「次はキスだっけ?」
     ジュニアが目をパチパチさせて戸惑っているうちに、顔の距離を縮めて唇を奪った。
     軽く触れて離れた子供がするようなライトキス。それでも、唇の柔らかさは伝わってくる。
     経験者として、それと年上の矜持から、かっこ悪いところを見せたくなくて、フェイスは平気な振りをしているけれど、心臓の音の高鳴りがやばい。いつジュニアにバレるのか、冷や冷やしてくる。
    「キスはどう?」
     フェイスは平気な振りをして問いかけた。
    「っ――!」
     固まっていたジュニアがはっとなった後、キスされたことに気付いて開いていた手の甲で唇を抑えながら真っ赤になっている。
    「今……キ、キ、キスしたのか?」
    「したよ。もう一回する?」
     ジュニアが頷いたのを見ると、フェイスはジュニアの後頭部を掴んで自分の方に引き寄せて唇を重ねた。一度目よりももっと長く、唇を押し付けてジュニアの唇を堪能する。
     十秒以上経ってからゆっくりと唇を離した。そして動けなくなっているジュニアの耳元に口元を寄せて囁く。
    「ねえ、おチビちゃんがやりたいことはそれだけ?」
    「ぴっ……! それだけ、って……」
     慌てたジュニアが少しどもる。
    「俺はおチビちゃんとエッチなことしたいけど」
     キス以上のことをしたいと伝えると、ジュニアの肩が跳ねた。
    「なっ!」
    「おチビちゃん、したくないんだ。俺はおチビちゃんの恋人なのに、そんな風に思われてたなんて残念」
     耳元から離れて残念そうに言えば、ジュニアが焦りだす。
    「別にしたくないって思ってない!」
    「じゃあ、してもいいんだ?」
    「それは……」
    「……おチビちゃんはまだお子様だし、どうしてもしたくないなら無理にとは言わないよ」
     エッチは大人がするものと匂わせて伝えれば、案の定乗ってきた。
    「ふあっっっく! 俺は子供じゃない! クソDJがどうしてもっていうなら、俺は大人だからエッチしてやってもいい!」
     上から目線な言い方にも、言わせたフェイスは全く気にならなかった。
    「なら、今からしよっか!」
    「へ」
     フェイスはジュニアの腕を掴むと、そのままベッドへ連れて行く。展開の速さについていけないジュニアはなすがままで、簡単に押し倒された。
    「今日は、キースもディノもいないから、ちょうどいい」
     メンターたちは飲み会で不在だ。きっと朝方まで帰ってこない。それまで、フェイスとジュニアは二人きりで、セックスするのに最適な日だった。
    「い、今から本当にするのか?」
     男同士のセックスという未知な体験が怖くなったのかジュニアが少し顔を引きつりながら言った。
    「おチビちゃん、男に二言はないよね?」
     挑発するように伝えると、ジュニアはうっと言葉に詰まった。そして、あーうーと奇声を上げた後、瞼をぐっと閉じて開いた。
    「ねーよ」
     この短い間に腹を括ったのかジュニアにもう迷いはない。
     それを見たフェイスがうっすらと笑う。
     我慢は止めだ。ジュニアがしたいと言うのだから、我慢する必要はない。
    「おチビちゃん」
    「なんだよ」
    「おチビちゃんのこと、好きだよ」
     初めて恋愛感情で人を好きになった。多分これ以上、好きになる人は現れない。まだ二十年程しか生きていないけれど、この時は最初の最後の恋になればいいと本気で思った。
    「俺も……クソDJが好きだ」
     好きな人が好きだと返してくれる。そのことがどれだけ幸福なことなのか、ジュニアを好きになって初めて知った。
     フェイスは口角が上がったことに気付かないまま、三回目の口づけをした
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    recommended works

    にし乃

    REHABILIいんこさんよりアイディアを頂きました、『狭いロッカーに閉じ込められてむらむらむんむんしてしまうまだ付き合っていない五夏♀』です。好みで呪専時代の二人にしてしまいました。むらむらむんむんはしなかったかも知れません、すみません…。
    拙いものですが、いんこさんに捧げます。書いていてとっても楽しかったです、ありがとうございました!
    とても短いので、スナック感覚でどうぞ。
    In the ×××「元はと言えば、君が帳を下ろし忘れたせいじゃないか!何で私までこんな目に!」
    「うるせぇ、今は口より足を動かせ!」

    特級の二人は、呪専の敷地内を並んで激走していた。

    「待て〜!!」
    「待〜て〜!!」

    担任である夜蛾が放った、呪骸の大群から逃れるために。

    「チッ、しつけーなぁ!」

    呪骸達が悟と傑を追いかけくる理由は一つ、彼らの親(?)が大変にお冠だからである。
    事の発端は昨日の、二人の共同任務にあった。現場は三年前に廃業し廃墟となったコンクリート工場であったのだが、悟が帳を下ろし忘れ、彼の手加減なしの『赫』と傑が繰り出した一級呪霊の容赦ない攻撃が営業当時のままにされていた大きなタンクを破壊してしまったのだ。
    住宅街からは離れた場所にあったとは言え、空気が震えるような爆発音に周囲は一時騒然となり、野次馬達や緊急車両の他に、上空には新聞社やテレビ局のヘリコプターなどもやって来る大騒動となった。
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