愛情流転 天狗がふわふわの新入りを見せに来た。
「えっかわいい」
「なにこれ、かわいい」
さっそく絵梨佳と麻里に構われているそれは、見た目はほとんどカラスの雛だ。
しかし頭には一丁前に頭巾をつけ、橙色の括袴に短い腕を通し、真っ白な梵天房がついた新品の結袈裟をつけている。そうして黄色い目をぱちくりとさせて、女子高生二人を交互に見つめていた。
ぎゃあぎゃあと鳴く天狗曰く、この春に群れに加わった幼天狗だという。いつか世話になるかもしれないので、どうぞよしなに、と。
ひとしきり挨拶を交わすと、大小の天狗はばさりと飛び立ち春風に消えた。
「やっぱ天狗ってのは、義理堅い連中みたいだな」
KKが煙草を吹かしながら言った。
アジトのリビングでは、エドが妖怪のこどもだと興奮してレコーダーをめちゃくちゃに再生し、凛子に窘められている。絵梨佳と麻里は、はしゃぎながらカメラロールを確認し、レンズが妖怪を捉えられなかったことに落胆していた。
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