迷い鯉探し 思いがけない、一泊二日の旅行となった。
「お昼もおいしかったね」
「ああいうのが一番うまいんだよなぁ」
東京へ戻る新幹線の中で、暁人とKKはすっかり満足していた。アジトに戻って報告したら、きっと麻里や絵梨佳は羨ましがるだろう。凛子は少し呆れるかもしれない。
いくつも駅を通り過ぎるたび、車窓の景色はだんだんと街へ変わっていく。
きっかけは今回受けた依頼だった。東京を出て県境をふたつ跨ぎ、とある山間の町へ出向くことになった。暁人にとっては初めての、他県での仕事となる。
目的は既に達成している。マレビトとの交戦もあったが、なんとか無事に片付けられた。暁人は足元に置いたバッグを開き、中を確認した。
「見張らなくても、もう逃げやしねぇよ」
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