escort(1)
いつもはおよそ女性らしい格好などしていない女子高生が、ドレス姿でエレガントに振る舞い、流暢に英語を操り、会場のゲストたちと談笑している。
立食パーティー会場の人混みの中を優雅にすり抜け、誰かに話しかけてはまた別のゲストへと、まるで蝶のように会場を飛び回っていた彼女が、アップルタイザーの入ったグラスを手に隣に舞い戻ってきた。
淡いコーラルに彩られた唇がグラスにつけられる様子を凝視していたら、彼女の眉が少しはね上がった。
「…なんだよ」
お嬢様然とした雰囲気はそのままに、ただ口調と視線だけいつもの調子で、不満気な呟きが投げつけられる。
「単純に…驚いてるだけですよ。」
人間、珍しいものを見ると無意識に目が離せなくなるものらしい。不本意ながら、さっきからこの小娘に目が釘づけだ。
1994