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    barechun

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    barechun

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    メイドアタイアを手に入れた🌟とそれを目撃した🍎の話(この後R-18書く予定)

    未定87ID後カイロス阻止して古代の終末を止めた後、原初世界にヘルメスとメーティオンを連れてきたif
    光と🐦と🍎で同居してる。



    「お願い!!ちょっとだけでいいから!!」

     目の前で頭を下げる友人にぐぬぬと返す言葉を探す。そんなのやだ、似合わない、変だよと否定の言葉を出したいのだが、数少ない仲の良い友達と呼べる人からのお願いにはっきりと断りきれないでいる。
     以前は自分のリテイナーをしてくれて、そこから冒険者に転向した友人が念願の家を手に入れたと連絡があった。とても喜ばしい事で笑顔でおめでとうと言ったのだが、どうやらその家は居住と言うよりも店舗を作っていきたいそうで。店のプレオープンに可愛らしい服を着て一緒に店頭に立って欲しい、というお願いだった。

    「だって…こんなの、似合わないよ。私、似合う顔してないし」
    「そんな事ない!! コレーが可愛いのは私がよく知ってる!!」

     見せられた服にたじろぎ、言葉を濁すコレーの手を握り彼女は叫ぶように言った。この友人はとてもまっすぐで、表裏もなくて、でも、そんな所が大好きだ。

    「自分で言うのもあれだけど最近顔が割れて見た人には巷の英雄ってわかっちゃうし、万が一に何かあって大切なお家が悲惨な事になったら申し訳ない…な」

     そう答えると、友人もあぁ、と納得したようだった。
     彼女にとっては友人であったとしても、コレーは星の英雄になってしまったのだから。その実態はなるべく表に出さず、顔も広まらないようにしているのだが流石に最近はそうもいかなくなってきた。

    「そうだね、ごめん。じゃあこのまま服は貰って? コレーに合わせて買ったのだから」
    「うぇ?! 貰えないよ、高いでしょ?!」
    「これを着た君が見てみたかったんだ。私の自己満足。いつか暇な時、私の目の前で着て見せてよ」

    なんともかっこいい事を言うものだ。コレーは嬉しさに頬を染めて、愛らしい服が収まった箱を抱きしめた。

    「ありがとう」






     帰宅をして早速自室で箱を開けてみる。柔らかなピンクのラッピングペーパーを開くと沢山のフリルとレースがあしらわれたワンピースドレスが美しく畳まれて収まっていた。
     思わず、息を呑む。

    「かわいい…」

     とても愛らしかった。初めて手にする服に少し緊張した。
     子供の頃は本を読み漁り母にくっつき錬金術を学び、霊災の後は生きるために必死でどうにか人攫いにあわないように生きてきた。生活をするためのお金を稼ぐだけの日々で、冒険者になってからは旅装や戦闘するための服を身につける事が殆どで、こんなものは初めてだった。
     ドキドキと胸を高鳴らせてそっと持ち上げて金具を外す。パフスリーブに手を通し、尻尾穴から尻尾を出す。ボタンを一つずつ閉めて、最後、編み上げを少し絞る。セットになっていた柔らかなパニエとドロワーズも着て、リボンのついたリストバンドを手首につける。最後はフリルのカチューシャを頭に乗せた。

    「わ…メイドさん…!」

     部屋の全身鏡の前に立つと、服の全体がよく見えた。
     とてもかわいい、メイド服としても着られるドレスだ。箱の中を見ると、リボンの頭飾りも入っていた。友人からの贈り物に胸が温かくなる。似合わないと思っていたけれど、着てみればなんとも可愛いものだ。嬉しい。

    「ふふ、」

     鏡の前でくるりと回ってみる。パニエがたっぷりのスカートは柔らかくふわりと揺れた。
     その時、

    「コレー、林檎の砂糖漬けができたんだが食べるかい」

    ノックの後に返事をする間もなく部屋のドアが開いた。鏡の前で服を見ていたコレーは驚き固まる。そして、ドアを開けた恋人であり同居人のヘルメスも固まった。そして驚き力が抜けたのか、手に持っていた砂糖漬けの林檎の瓶を自分の足の上に落下させた。

    ゴッ

    「っ!?」
    「えっ?!?」

     鈍い音を立ててスリッパの上から彼の足を直撃した瓶は頑丈だったのか割れずにゴロリと床に転がる。ヘルメスは痛そうに跪き、苦悶の声を上げ、コレーはヘルメスの側に駆け寄った。

    「え、大丈夫…? フィジクいる?」

    コレーが声をかけると無言で頭を横に振る。そして顔を上げてコレーの全身をは、と見つめていた。

    「その、服は、」

     見せるつもりはなかったのにと顔を赤く染めてコレーは服の端を握って目線を外す。

    「友達から、貰ったの。似合わないのは、わかってる、けど、」

     恥ずかしい。きっと、変だと思っているのだろう。驚いて持ってた瓶を落とすくらいなのだ。

    「いや、そんな事はない! 似合っているし自分は、とても…かわいいと、思う」

     ヘルメスは立ち上がりコレーの手を握った。勢いに任せて叫ぶように手放しで褒めるとみるみるうちにコレーの顔はコロモダコのごとく赤く染まっていく。

    「すまない、君のこんな姿は初めて見たから驚いただけで…」
    「あ、ぅ、っ〜〜〜〜〜!!!!」

     大好きな人に真っ直ぐに褒められた事に、嬉しさとむず痒さと気恥ずかしさと、様々な感情が入り混じり耐えられなくなったコレーはヘルメスの手を離し、部屋の窓に直行した。

    「コレー!?!」

    ガチャガチャと窓を開けてそのまま外へと脱走しようと窓枠に足をかけたところでヘルメスがコレーの尻尾をぎゅむり、と掴んだのだった。

    「へぎゃ!!」

    普段ならば尾に何かあったとしてもそこまで気にはならないのだが焦りや恥ずかしさでいっぱいいっぱいになっていた彼女は尻尾と耳の毛をぶわっっっと逆立てて背後のヘルメスの胸元に倒れ込んだ。

    「流石にそれはやめてくれ…着たばかりの服なのだろう?」
    「う、……はい…」

    捕まった犬猫の如く、ぶらんと持ち上げられて項垂れる。全くもって、恥ずかしくて居た堪れない。

    「あ!! ヘルメス、なにしてる?」

     騒ぎを聞きつけたのか、メーティオンが部屋のドアから顔を出した。そして、コレーを持ち上げるヘルメスを見て険しい顔をしている。

    「ち、ちが!」

    慌てて持ち上げていた彼女を下ろして首を振るがメーティオンはむむむと眉間に皺を寄せた。しかし、降ろされたコレーを見ると顔が明るくなり部屋の中へと入ってきた。

    「わぁ!! コレー、かわいい!!! なんの、ふく?」

    コレーの周りをぐるぐると見てまわりながらキラキラとした笑顔で尋ねてくれる。無邪気な感情に再びコレーは恥ずかしそうに頬を染めた。

    「これはね、メイド服っていうの。まぁ、メイドとしてじゃなくて普通に頭飾り変えれば可愛いワンピースとして着られると思うんだけども」
    「めいど? それは、なに?」

     そういえば古代にはメイドなんて概念などないものなと気が付く。

    「えーと、この時代の人達って創造魔法が使えないでしょ? だから、身の回りの事を自分以外の生き物に頼む時はお金を払って人を雇うんだ。魔力がある人や魔法に長けた人なら使い魔を作り出せるけれども普通は出来ないからね。それで雇われてお家の家事とかをお手伝いする女性のことをメイドって呼ぶの。男性はバトラーとか執事って呼ぶよ」

     言葉を選んでメイドの説明をする。上手く伝わっただろうか。遺された親の本を読むのは好きだったが教育と呼べる教育は受けていないのでなかなかに自信がない。最近はヘルメスから古代の話を聞いてエーテル等についても改めて学んではいるものの、自分に教養があるとは言い難い。冒険者になってからも各地で書籍を読んでみるがやはりどうにも、基礎的な教養が足りていないと感じる事が多い。

    「なるほど、人を雇用するのか…」
    「使い魔、いない?」

    「マトーヤなんかはカエルの使い魔達がいたけども一般的な家庭なら自分のことは自分でやるからね…よほどお家が大きいとか金銭的に裕福な家じゃない限りそもそも他者を雇ったりはしないかな?」

     おそらく二人とも理解をしてくれたらしい。よかった。

    「コレー、その服着て、雇われ行く?」
    「え?! いやっ、ちがうの、これは可愛いから友達がプレゼントしてくれただけ。本当は友達のお店の手伝いを頼まれたんだけど、立場が立場だからあんまり人前には出ない方がいいかと思って断ったんだ。そうしたら服だけ貰っちゃって…」
    「じゃ、コレーここにいる?」

     スカートを摘んで笑えばメーティオンは安心したようにコレーの袖のフリルを掴んだ。

    「どこにも、いかないよ。二人がここに居るから」
    「…よかった」

     思わず、コレーがメーティオンを抱き締めるとメーティオンも嬉しそうに笑った。雇われてメイドやらなんやらするのも初めての経験で少し面白そうだ、なんて思うものの大好きな人達が居るここから離れたい気持ちはない。

    「メーティオンにも新しい服買ってこようね」
    「わたしも?」
    「うん、お揃いでも良いし、違うのでもいいし。メーティオンがお嬢様で私がお付きのメイドみたいなのでもいいかも」
    「それは、メーティオンが使い魔なのに、立場が逆じゃないか…」

     思わずヘルメスが可笑そうに笑い出す。確かにその通り。全く逆転している。けれどもメーティオンはコレーの使い魔というわけではないし。寧ろ使い魔としてお使いをしていたのでまぁ、誰かを手伝う立場の方が性に合っていると言えなくもない。

    「まぁ、元うっすら使い魔もどきですので…そうするとこの家でのご主人様はヘルメスかな? ね、ご主人様」

     冗談のつもりで言ってみたのだ。けれども、ヘルメスからの返事はなくて。言葉に詰まったヘルメスからは暫しの沈黙が流れた。

    「ヘルメス、嬉しい?」
    「……メーティオン……」

     横にいたメーティオンが首を傾げて感じ取った想いを口に出してしまう。居た堪れなさそうに片手で顔の半分を隠して絞り出すような声でメーティオンの名を少し咎めるように呼んだ。
     意外にもそういうのが好きなのか。性癖らしいものは知らなかったけれどははあ、なるほど。

    「ほぅ…」
    「待ってくれ、納得しないでくれ!」
    「まぁ、ほら、誰しも性癖とかあるから気にせず…」
    「いや、違う、そうではなくて、君が言ってくれたから嬉しいのであって、」

     おそらく本人も一生懸命に説明しようとしているのだが明後日の方向の弁解な上に無自覚に誉めてくるものだからタチが悪い。いや、わざとやっているのか?と再び恥ずかしさで赤らむ顔でむくれた。でも、真っ直ぐに向けられる想いに胸が疼いてしまう。ずるい人だ。

    「着てみたら見せてって言われたからプレゼントしてくれた友達に見せに行ってくるよ」
    「はーい、いってらっしゃい!」

     メーティオンとヘルメスに手を振りコレーはフレンドテレポで家を後にした。手を振り返したものの、ヘルメスは少し苦い顔をする。

    「ヘルメス、どうしたの? いやなかんじ?」
    「…あぁ、少しだけ。いや、勝手に自分がそう思っているだけなのだが、」
    「ちゃんとコレーと話して、ね?」

     心配そうに自分を見つめる大切な使い魔にヘルメスは苦笑する。自分は言葉が足りない事が多くていつも想いは出せずにメーティオンを介して知られてしまう。秘めておくべき想いも、伝えるべき想いも。今の気持ちが秘めておくべきなのか、伝えるべきものなのかすらわからないでいて、小さく溜息を吐いてメーティオンの頭を撫でた。
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