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    ゆうづつ

    二次創作倉庫的な 色々整理したりしなかったりするかもしれない

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    ゆうづつ

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    (とりあえず一時的置き場)
    ねこの日のやつの続き。大学生のマンドくんとぐだくんと黒猫のリカくんのほのぼのルームシェア。大家さん襲来編

    藤丸くん家の同居人さんたち5 ふたりとも予定のない祝日をいいことに、遅めに起きてブランチを済ませて、つけっぱなしのテレビを観るともなしに眺めていた。
     ラグに座った立香の膝に、ちょこんと黒い前足を乗っけたまま寝ているリカが可愛くて、かれこれ三十分ほど動くに動けないままでいる。そろそろ足が痺れちゃうなあ、と思いながらも、ゆっくり上下するあたたかな黒い毛皮を撫でるのをやめられない。
     不意にリカの薄い耳がぴくりと揺れる。遅れてピンポーン、とチャイムが鳴った。
    「俺が出るっす」
     身動ぎする前にマンドリカルドがさっと立ち上がってくれる。ありがとうと任せた直後、
    「……ん?」
     ドアスコープから外を確認したマンドリカルドが訝しげな声を上げた。
    「立香、白髪の外人っぽい成人男性って、知り合いにいたりします?」
    「えっ!?」
     思わず叫んで体ごと振り返る。大声に驚かせたか、それとも予期せぬ来訪者のせいか、びくっと跳ねたリカはそのままキャットタワーの天辺まで駆けていってしまった。鍵尻尾がばふばふに膨らんでいる。たぶん両方だろう、悪いことをしてしまった。
    (リカには後で謝るとして、)
    「知り合いっていうか、一応ここの大家さんです……」
    「ええっ!?」
     とてもとても知っている相手の正体を説明すれば、マンドリカルドも驚きに肩を跳ねさせる。痺れ始めた足に苦労しながら立ち上がってドアを開けると、「白髪の外人っぽい成人男性」が白いシャツに深緑のスラックスという軽装で本当に立っていた。
    「えっと、どうしたの、エドモン」
    「近くまで来たからな、ついでだ」
    「来るなら来るって……」
     同居人さんたちの心臓にもよろしくないと不服を申し立てるも、「連絡ならしたが?」とすげなく返される。
    「えっ」
    「……立香、スマホ部屋に置きっ放しじゃないっすか?」
    「あ、」
     部屋で充電したまますっかり忘れていた。ステレオで溜息をつかれてしまう。仕切り直すべく、マンドリカルドの腕を引っ張って前に出てもらう。
    「ええっとこちら、シェアメイトのマンドリカルド! です!」
    「うわ、はい、はじめまして。立香に世話になってます。間借りさせてもらって感謝してます」
     急に話を振ってしまったけれど、隣に並んだマンドリカルドはきちりと頭を下げた。
    「で、こっちがエドモンで、このアパートの大家さん」
    「……世話をかけているな」
     エドモンはこちらを流し見た後、マンドリカルドの方を見てそう言った。その通りではあるが、意地が悪い。
    「イエ……。……その、上がってもらった方が」
     苦笑したマンドリカルドが後半はこっちに向けて声を潜める。
    「あ、そっか。お茶飲んでく時間ある?」
    「いや、顔を見に寄っただけだからいい」
     土産だ、とぽいと紙袋を寄越された。中に入っていたやたら立派な菓子箱には、「かしわ餅」の文字が躍る。
    「うん……? あ、今日子供の日か、ってそれ……!」
    「また来る。息災にな」
     最後はこちらの足元に視線を落として、黒い革手袋に包まれた手をひらりと振ってあっさり去っていった。足の間にはいつの間に来たのかリカがいて、そわりそわりと足の周りをまわる。キャットタワーやキャットドア等、リカの住環境も調えてくれた相手へ一応顔見せをしたらしい。

     五分にも満たないながらも嵐のような訪れだった、主に自分のうっかりのせいで。
    「……良かったんすか?」
     気遣わしげにするマンドリカルドへ慌てて首を振る。あの愛想のなさは通常運転だけれど、初対面では戸惑うのも当然だ。
    「だいじょぶだいじょぶ。いつもふらっと来て、食べ物だけ置いて行っちゃう感じだから。……とりあえずこれでお茶にしよっか」
     もらった柏餅を早速開けて、水出しの緑茶と一緒にいただく。柏の葉の香りがふわりと漂って、膝に乗せたリカがひくりとひげを揺らした。
    「子ども扱いされたと思うと悔しいけど、これめっちゃ美味しいやつ……餡子が絶妙な甘さ……」
     彼が選ぶものに外れはない。ないのだが、本人が食べつけないはずのものまできっちり美味しいのは、さすがというかずるいというか。
    「っすね。……あの、差し支えなければ、どういうひとか訊いても?」
    「あ、うん。エドモンはこのアパートの持ち主で、一応、オレの後見人……みたいなひと」
     べつに隠していたつもりもないけれど、タイミングを掴めずに話そびれていたことだった。ちらりと窺った横顔が、とくになんの感情も浮かべていなかったので、安心して続ける。
    「詳しくは知らないんだけど、文筆業で、あと翻訳の手伝いなんかもしてるって。そうそう、このアパートの他の部屋って、エドモンの知り合いの作家さん達の仕事部屋なんだよ」
    「ああ、道理で」
     マンドリカルドが相槌を打ちつつ「たまに出入りはあるようだが人気が薄いのがちょっと気になってた」と溢す。
    「まあ、変人揃いだけど、皆いいひと達だよ。前に雑用のバイトしてたんだけど、授業に慣れてきたら、またさせてもらおうかなって思ってる」
    「なるほど」

     ほう、と気が抜けたようにひとつ息を吐くマンドリカルドに、罪悪感を思い出した。
    「……マンドリカルドも、リカも、驚かせちゃってごめんね」
     膝の上のリカも、しっぽまで撫で下ろしてもされるがままにてろんと伸びているので、やはり気疲れさせてしまったようだった。
    「いや、挨拶できて良かったっすけど。……まあでも、スマホはほったらかしにしない方が、とは思う……かな」
     度々携帯せずに出かけてしまって、更に帰りが遅くなったりして心配をかけている前科が一度ならずあり、耳が痛い。
    「はい、気をつけます……」
     そのままソファにずるずると倒れ込みそうになったところで、
    「に、」
     ちいさな頭をお腹に擦り付けてくるリカに止められた。ソファから降りて立香の部屋の前へ行き、大きく伸び上がってドアノブに前足を引っ掛ける。
    「あ、ケータイ」
    「言ったそばから忘れてたんすね……」
    「ごめんなさい……」
     またも苦笑いされつつ、部屋に行く。スマホを確認すると一時間前に確かにメールが来ていた。
     ついでに思い立って、もらった柏餅について調べてみる。あまりに美味しかったのでどんなお店かと思えば、やはりいいところのものだった。
    「……ん?」
     つらつらとスクロールした商品説明で「子孫繁栄を祝うもの」という一文が目に入る。
    「んんん……」
     唸りつつ、ついてきてくれたリカを抱え上げる。
    「たぶんねえ。他意とか含みはない、と、思うんだけど」
     きっとおそらく、いつものように季節の美味しいものを持ってきてくれただけとか、子ども扱いをしないようにお願いしつつも心配と面倒をかけ続けていることへの皮肉だとかだと、思う。
    (……父の日にやり返そうかな)
     悪だくみをしていると、何かを察したらしいリカが呆れたように欠伸をした。


    巌窟王くんはあしながおじさん的ポジションです
    決めてたんだけどオリュンポスでのキリシュさん台頭により変更するか結構迷った
    別の形で出したいと思います
    飼い主に前足をくっつけて寝る猫ちゃんのネタ等はマシュマロでいただきました、ご協力ありがとうございますー!
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