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    ラーヒュン ワンライ 「太陽」 2024.03.05.

    #ラーヒュン
    rahun

     二人して城の勤めともなれば、共に食事をする機会も増えるものだ。
     しかしながらヒュンケルは、休憩時間である食事の際ですら、ピクリとも表情を変えなかった。
     俯き加減で咀嚼だけを繰り返す。
     暗い。なんと暗いヤツだ。
    「おまえな、ちょっとくらいは笑うなりなんなりしたらどうなのだ。飯が不味くなる」
     ついにラーハルトが苦言を呈すると、ヒュンケルはいつもの無表情で答えた。
    「しかし別段楽しいことが起きたわけでもないのに笑うのもな」
     ラーハルトのこめかみに血管が浮いた。
     はぁ? このオレと食事をしていて楽しくないだと?
     その日から調査を開始した。菓子か、肉か、酒か。ヒュンケルが好きなものを突き止めるために聞き込みをし。
     そしてある夜、満を持して彼の部屋にやってきた。
    「晩酌に付き合え」
     まるっきり道場破りの様相である。手にしているものは武器では無くワインであったが。
    「構わないが……」
     と戸惑い気味だったヒュンケルも、部屋に招き入れて、コルクが抜かれ、注がれたワインを口にした途端に目を丸くした。
    「これは……!」
    「フッ」
     嬉しそうに二口目を飲むヒュンケルを見て、ラーハルトは勝ち誇った気分になった。
     クッソ甘いシロップみたいな白ワイン。自分の口には合わないが、買って良かった。
     その日の会話は弾みに弾んで、ラーハルトはヒュンケルの笑顔にうむうむと満足げにグラスを傾けていた。のだが、しかし。
    「割り勘? ワイン代を?」
     ボトルが空いてからの、突然のヒュンケルからの申し出にラーハルトは眉間に深ーいシワを刻んだ。
    「なぜだ」
    「オレが大半を飲んでしまったし」
     ヒュンケルのド好みを持ってきたのだからそうなるに決まってる。
    「こんなもの、普通オレからの贈り物に決まってるだろうが」
    「そういうのは、相応しい相手にするものだろう」
     はぁ? しているが?
     結局はこの最後のやりとりのお陰でムカムカきたままお開きとなった。
     メチャクチャ相手を選んでやってるだろうが。おまえでなきゃやってない。
     それを分からせてやるために、ラーハルトは事あるごとにヒュンケルを褒めるようになった。
    「今日も指使いが綺麗だな」
     とフォークを持つ手を賛したり。
     出勤して朝に顔を合わせるだけでも、
    「勤勉なところが好ましい」
     とか、ソースを取ってくれただけでも、
    「心優しいのがおまえの魅力だ」
     とか、小さなことでも賞賛しまくった。
     すると最初は居心地が悪そうにしていたヒュンケルも、段々と、そうか、と頷くようになってきた。その、ちょっと照れながらも当然のように受け止めてはにかんでいる様子が可愛くて更なるヤル気が湧いた。
     そうして日々贈り物をしながら持て囃す彼の姿に、当初は職場の仲間達からは恐い魔族だと思われていたラーハルトも、春が来たのだなあと温かく見守られることになっていた。
     されているヒュンケルはヒュンケルで、段々と口数が増えて表情が増えてゆくものだから、ラーハルトは堪らなかった。すればするほどヒュンケルが柔らかく綻んでいくもので、もう、ハニーとかエンジェルとか呼びまくった。
     ギラギラと直射日光が降り注ぐ修練の時間。カキンカキンと訓練中の兵士たちの剣戟が響く広場の脇に、監督役のヒュンケルの姿があった。
    「こうも暑いとオレも身が入らん……」
     最近では、ヒュンケルはこんな甘えたこともポロッと言ってくれるようになった。ラーハルトが猫かわいがりをした成果である。
    「そう思って持ってきた」
     ラーハルトは冷えたコップを差し出す。中身はヒュンケルの好み通りの、ハチ蜜の多すぎるハチ蜜レモン水だ。贈り物の日々は尚も継続中である。
    「ありがとう。……しかし暑いな。今ばかりは太陽を欲しがった大魔王の気持ちが知れん……。…… 美味い! 暑い中で飲むと美味いな!」
     ブツブツ文句を言ったり、ドリンクを飲んで目を輝かせたり。
     コイツは本来はこんなに明るいヤツだったのだなと、ラーハルトは頭をヨシヨシ撫でてやった。
    「オレは分かるぞ。太陽を我が物にするためならば地上の爆破くらいしてやろうというものだ」
    「そのために大勢を犠牲にするわけにはいくまい」
    「笑止。その他大勢など、たった一人の太陽に比べたら」
    「ああ、なんだ、オレのことを言ってたのか」
    「当たり前だろう」
     ヨシヨシ。
     この暑い中でゲロ甘な上司二人を見せつけられた兵士たちは、げんなりと、「お二人っていつから恋人なんですか」と質問をした。
     しかし当の二人が、「恋人なわけなかろう」「男同士だぞ」と答えたので、兵士たちからの「爆発しろ」という悲鳴が広場に吹き荒れた。





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