ヒュンケルとラーハルトは、光り輝く小山を見上げた。
空は暗い灰色で、周囲の景色は植物も生えぬ岩ばかりだ。なのにこの丘は、そこだけが色彩の付いた楽園かのように草原となっており、頂上からの光に照らされていた。
「村のご神体みたいに扱われてます。これのおかげで気候がいいんで。皮肉なモンですよねえ、ご先祖の敵だった奴等の置き土産が……」
ここまで案内をしてくれたのは、年の頃は400代か500代くらいかに見える中年の魔族だった。
「あれは?」
ヒュンケルが指さしたのは、頂上にある水晶の塊、さらにその尖端に頂かれている青い石だ。光はあれから発されている。
「賢者の石です。うちのじいさんが子供の頃……だから900年くらい前かな。竜の騎士が地上から討伐に来て、そのパーティの誰かが戦死したときに落とした装備品から水晶が湧いたんだとか。けどあれ、魔界にはそぐわない聖なるアイテムでしょう? 『清く聡明な者』しか手にできないと言われてて。光で癒やしを与え続けるんだそうですけど、誰にも取れません。なぜかあそこに辿り着けなくて」
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