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    sigu_mhyk

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    1日1ネファネチャレンジ 25
    現パロ ネロファウ

    ##1日1ネファネチャレンジ

    慣れれば弟みたいなもの「あ」
    「え、何。どしたの」
    誰もいなくても赤信号では必ず止まる。進行方向には必ず従う。スマホを見る時は歩かず道の端に寄って止まる。そういったファウストの細やかな当たり前を目にするたび、ネロは初めてファウストに恋に落ちた時の気持ちを味わう。
    ピロン、と通知が来たスマホを、やはり立ち止まって端に寄りながら街路樹の日陰で見ていたファウストは、画面を読むなりハッとした表情を浮かべ、ネロに大変だと告げた。一体どうしたというのだろう。買い忘れでもあったとしたら、確かにこの暑さの中で来た道を戻るのは大変なことだが。
    「ネロが助けを求めている」
    なるほど助けを求められている、それは大変だ。急がねば。
    ……誰が助けを求めてるって?
    「……なんて?」
    「ネロが助けを求めている。早く帰って助けてあげないと」
    「いやいや待って待って!俺ここにいるし、別に助けなんか求めてないんですけど!」
    要領の得ないことを言って再び歩き出そうとしたファウストの手を掴んで待ったをかける。振り返ったファウストはクエスチョンマークまみれのネロに反し、悪しき魔王の軍勢に落城しかける白き都へいざ向かわんとする王さながらの使命感を宿した強い眼差しを煌めかせている。
    「先日買っただろう、ロボット掃除機」
    「うん?そうだね?」
    「アプリに登録すると、稼働結果や問題が生じた際に通知で知らせてくれるのだけど」
    「へぇ…便利な世の中になったもんだね」
    「その掃除機の名前をネロにした」
    「なんで!?」
    「どうやら段差に引っ掛かって自力で充電ポートに戻れないらしい」
    早く帰って助けてあげないと、とまた同じ言葉をより真剣な眼差しと共に向けられてはぐぅの字も出ない。ファウストの強い眼力にネロは弱い。名前がややこしいとはいえ、ロボット掃除機であることに変わりはない。ないのだが。
    「なんで俺の名前にしたわけ……?」
    「可愛いだろう」
    「いや可愛かねーだろ!」
    「『掃除が完了しました。ネロは自力でポートに戻り、休んでいます』とか通知が来ると、いい子だな、可愛いなって思う」
    「それは俺に対して?ロボットに対して?」
    「掃除の後にソファで居眠りしているネロは可愛いよ」
    「なんでよー……」
    両手にエコバッグを持って、焼けるような陽射しとアスファルトの照り付けにホットサンドにされている気分を味わいながら二人して速足で帰路につく。
    理由が理由なだけに可笑しくて笑ってしまうのだが、日常のなんてことないすみっこに楽しみを作るのは、暮らしを営むうえでは大事なことだ。ネロもファウストも、元々ユーモアに富んでいるわけではない。ちょっぴりズレた所や、それはないだろうといった所から少しずつ少しずつ、くすりと笑って彩りを添えられるようなスパイスを拾い上げては、自分達なりにアレンジして生活に取り入れていく。
    まぁ、今回はそのうちの一つということにしておこう。
    「ファウストー」
    「なに」
    「二台目買っていい?名前ファウストにして俺も登録したい」
    「それはダメ」
    「なんで!」
    「きみのファウストは僕だけだろう」
    そんなこと言わせないでよ、と宣う耳は暑さのせいだけではない赤みを帯びている。
    何それ俺めっちゃ好かれてるじゃん。
    ふにゃ、と炎天下のアイスクリームよろしく蕩けた心は、しかしとある事実に気付いてしまった。いやいやならばとネロは言い返した。
    「ファウストにとってのネロも俺だけだろ!」
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    sigu_mhyk

    DONE1日1ネファネチャレンジ 85
    魔法舎 ネロ+ファウスト(まだ付き合ってない)
    発火装置晩酌の場所が中庭からネロの部屋に。
    テーブルに向き合って座ることから、ベッドに並んで座るように。
    回数を重ねるごとに距離は近付き、互いの体温も匂いもじわりと肌に届く距離を許してもなお、隣に座る友人の男は決心がつかないらしくなかなか手を出してこない。
    手を僅かに浮かせてこちらに伸ばすかと思えば、ぱたりと諦めたように再びシーツの海に戻る。じりじりと近付きながら、数センチ進んだところでぎゅうとシーツを握り締め、まるでそこにしがみつくように留まる。
    ベッドについた二人の手の間、中途半端に開いた拳ひとつ分の距離。ネロの気後れが滲むこの空間をチラリと視線だけで伺って、密かに息をついた。
    よく分からないが魚らしき生き物も、毒々しい色をした野菜らしき植物にも。鋭く研がれた刃物にも、熱く煮えた鍋にも、炎をあげるフライパンにすら恐れることなく涼しい顔で手を伸ばすネロは、そのくせファウストの手を同じように掴むことができないでいる。刃物よりずっとやわらかく、コンロに灯るとろ火よりも冷たいファウストの手は、ネロの手の感触を知らないで今日まできた。
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