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    ワンタン

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    ワンタン

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    お題「拘束」

    相変わらずの時間オーバー、20分ぐらいかな

    #ラーヒュン
    rahun

    横殴りの雨が宿の窓硝子を勢いよく叩いている。
    その雨を物思いにふけながら見つめるヒュンケルの耳に、恋人が扉を勢いよく開けた音が入ってきた。

    「どうだった?」

    「駄目だ。川を渡る船も、迂回路を行く馬車も、どちらも当分の間出そうにも無い。」

    雨で濡れた髪をタオルで乱暴に拭きながらラーハルトが応える。

    「……連日のこの雨では当然か。ということは、まだしばらくの間宿に拘束されるわけか。」

    ヒュンケルはといえば、彼を休ませたいラーハルトと雨の利害が一致したのかしないのか。それはわからないが、もう昼を過ぎたというのにベッドの上でブランケットにくるまっている。

    「そういうことになるな。ま、もうしばらくの辛抱だ。」

    そう言ってラーハルトは、小さなテーブルに置いてあった本を手に取る。パラパラとページをめくっては、数行読むを2、3度繰り返す。そうして自分が読み進めた箇所を見つけたラーハルトは、背もたれの無い椅子に座るとその続きを読み始めた。

    「栞は使わないのか?」

    「大まかにどこまで読了済みかは覚えている。細かい部分は読み返せば、思い出すので必要ない。」

    「そうか。ところで、それは昨日まで読んでいた本ではないな。ラーハルト、いったい何を読んでいるんだ?」

    退屈と好奇心に満ちた顔をしたヒュンケルに、ラーハルトは無言で本の表紙を掲げて見せる。ラーハルトの菫色の指が本の途中に挟まっていた。おそらく、読み進めたページを忘れないようにするためだろう。

    「珍しいな、おまえが恋愛小説を読むなんて。」

    「他に読むものが無くなってしまったからな。おかげで、お前に囁く睦言のレパートリーが増えそうだ。」

    「そうか……是非ききたいな、こっちにきて聴かせてくれないか?」

    「お前から誘うとは、明日は雨が降りそうだなヒュンケル。」

    そう言うと、ラーハルトは本を閉じて立ち上がる。勢いよく閉じたせいか、パンッという小さな音がした。本には相変わらず栞も、それに代わるものも、何も挟まれていなかった。

    「……それはこまるな」

    そうヒュンケルは照れた様子で応える。そして同時に、ラーハルトがヒュンケルの意図を察してくれた事実に満たされていた。
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