再会した日「いつだ?」
「えっ?」
ハードカバーの本を閉じる小気味良い音と共に、飛んできた唐突な質問にヒュンケルは戸惑いの声を上げた
「誕生日だ。ヒュンケル、おまえの」
「さあ?わからない。気にしたことも無かったからな」
「習慣が無かったのか?」
本棚に本を片付けながら、ラーハルトはさらに尋ねた
「ああ。それに、オレはバルトスに拾われた身だから。具体的な日付がわからないんだ」
「そうか」
「どうしたんだ急に?」
これまで尋ねられたことの無い問いに、少々戸惑いながらヒュンケルはラーハルトに聞き返した。どうも、この半魔には決断が早いというか、唐突なところがある
「いや、おまえの誕生日を祝ったことが無かったのを思い出してな」
「別に、オレは気にしてないが……」
「そうだろうな。お陰で、オレもこの瞬間までおまえの誕生日を祝った事が無いのを失念していた。いつが良い?」
「急に聞かれても困る。……まさか?」
「そのまさかだ。パプニカの戸籍をしらみ潰しに調べれば、おまえの真の誕生日がわかるかもしれんが。時間がかかりすぎる、わかった時には既に……というのはごめんだ」
「せっかくおまえに祝って貰えるんだ。慎重に決めないとな」
ヒュンケルが口にした日付に、ラーハルトは嬉しそうな笑みを浮かべる。ラーハルトの満たされた様子に、ヒュンケルは想い人と再会した日を自身の誕生日にして本当に良かったと思った。