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    Masima2022

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    Masima2022

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    ワンドロより〜犬〜

    #九莇
    jiuBiao
    #くあざなう

    公園のベンチに九門と莇は並んで座っていた。高校からの帰り道にあるコンビニで何か食べ物を買った時はこうして寄り道をするのが常となっていて、今回はお供に選ばれた角煮まんと肉まんを頬張る事となった。ガサガサと音を立てながらビニール袋の中から二つの包みを取り出した九門は、肉まんは透明のセロファンテープで封をされている方だと言っていた店員の言葉通りに透明の方を莇へと手渡す。サンキュ、と短い礼と共に二人の手にそれぞれ目的のものが行き渡った所で漸くいただきますとなった。

    「ね、莇…!見て…!」

    暫くして莇の耳元でこっそりと声色を落とした九門の息遣いがした。
    内緒話でもするように顔を近付けて話されると破廉恥だの近いだの条件反射に出てくる感情は勿論芽生えた莇だったが、余りにも九門が嬉しそうに話しかけるものだから毒気を抜かれて擽ったく思う心地へと落ち着いてしまったらしい。仕方ないなと言いたげに小さく息を漏らすが、その口元が緩んでいるのが良い証拠だ。

    「あ?どれ」
    「ほら見て、あの犬。ずーっと飼い主さんの事見ながら散歩してるんだよ」

    九門の指差す方向へと視線を向けると、そこには飼い犬の散歩をしている初老の男性が居た。あれは柴犬だろうか、飼い主の歩調に合わせてトコトコと進むその犬は九門の言うように顔を飼い主の方へと向けている。時折進行方向を確かめるように前の方に向くけれど、数秒後には再びその顔は持ち上がって飼い主へと固定される。

    「…ほんとだ」
    「きっと飼い主さんの事、大好きなんだろうなあ」

    可愛いね、と耳元に落とされると莇はその犬と九門とを見比べるように何度か視線を行き来させた。それからにやり、と口角を持ち上げると食べ掛けの肉まんへと齧り付く。

    「可愛いけど、もっと可愛い犬知ってっからな俺」
    「え、そうなの?どんな犬?」
    「毛並みはサラサラっつーよりふわふわで、いっつもうるせーけど俺の事が好きなのを隠そうともしないで纏わり付いてくる犬」
    「え、そんな犬居たっけ?オレ見たことある?」

    莇の言う可愛い犬に九門は心当たりがないらしく、うーんと首を傾げている。吹き出しそうになるのを堪えて最後の一口を食べ終えた莇は空になった包み紙を小さく折り畳むと、九門の持っているビニール袋の中へとそれを押し込んだ。

    「九門は知らないかも」
    「えー!なにそれ!」

    ずるいずるい!と口をへの字にして腕をぐいぐい引っ張る九門に堪え切れずに莇は吹き出してしまった。
    ほらな、可愛い。
    その言葉を何とか飲み込んだのは単なる莇の意地だ。本人にすら自分だけが知っている姿を知られたくないという、なんとも可愛くない独占欲と言ってもいいかもしれない。

    「あんまグダグダ言ってると先に帰るぞ」
    「やだ!」
    「じゃあさっさと食えよ」
    「うう…今度教えてよ?」
    「あー、はいはい」

    適当に流しながら変わらずに飼い主を見上げて歩く犬の後ろ姿へと目を向ける。
    その尻尾は、ぱたぱたと左右に揺れていた。

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    Masima2022

    DONEリクエストで頂いた「初めてふたりで一緒に寝るはなし」です❣️(少し長くなってしまいました…)
    リクエストありがとうございました…!
    その日は前々から計画していたお泊り会だった。片割れが留守となる106号室にて決行、勿論左京の承諾もちゃんと得ている。備え付けのロフトベッドではなく、テーブルも全部端へと寄せて作った広々としたスペースが本日の会場だ。
    並べて敷いた布団に二つの枕をぽんぽんと置くとそれだけで日常とは少し違う雰囲気になって心が弾んでしまう。だけど、そこに寝転がって学校やバイト先での出来事を話しているとあっという間に時間は過ぎ去ってしまい、莇のスマホのアラームがシンデレラタイムを引き連れてきてしまった。
    「えー…もうおしまい?」
    「時間だしな」
    「…明日は学校も休みだよ?」
    「それはそれ、これはこれ」
    布団から抜け出した莇が壁にある室内を照らす灯りの源をオフへと切り替えた。暗くなった室内に踵を返して枕元に置いてきたスマホの明かりを頼りに布団へと戻ると、あからさまにしょんぼりとなっている九門がそれでも大人しく自分の布団へと潜り込む所だった。可愛いかよ、と思わず出てきそうな声を飲み込むと同時に莇は拳を胸元に強く押し付けた。そうしないとその健気な姿に胸の奥はぎゅっと鷲掴まれたまま破裂してしまいそうなのだ。もう少し強めに嫌だとアピールでもしてくれたら、なんて脳裏に浮かんで顔が熱くなるのを感じた莇は自分の布団に潜り込む事すら忘れて立ち尽くしていた。
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    Masima2022

    DONEワンドロより〜電話〜
    電話「あざ、」

    まだまだ夜風は冷たく感じる二十時。莇を探して向かったバルコニーでその後ろ姿をやっと発見したオレは嬉々として声を掛けようとした。
    …した、んだけど、オレの気配に振り返った莇の耳元にはスマホが押し宛てられていて、電話中だと直ぐに気付いたオレは慌てて自分の口を両手で塞いだ。そんなオレを見ながら人差し指を唇に当てる莇の黒髪が冷たい夜風に撫でられてさらりと流れる。静かにしろ、と声が無くてもその仕草が何を示しているかなんて一目瞭然、オレはうんうんと口を塞いだまま頷いた。

    「……、」

    そんなオレを見て莇は綺麗な瞳の端っこをほんのり細めて、艶々の唇をちょこっとだけ笑った形に変えて指を離した。あ、悪い何だっけ。なんて直ぐにその視線はオレとは反対方向に向かっちゃったけど、オレの心臓はどきどき煩くなっちゃって聞こえてないか心配になるくらいだった。オレにだけ向けられた秘密を共有してるみたいな笑い顔が凄く綺麗で可愛くって、何だか電話口の先のオレの知らない人に勝ったみたいな気持ちになっちゃうとか意味の分からない充足感を噛み締めていると唐突に莇からおっきな笑い声が上がった。
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    Masima2022

    DONEリクエストで頂いた「初めてふたりで一緒に寝るはなし」です❣️(少し長くなってしまいました…)
    リクエストありがとうございました…!
    その日は前々から計画していたお泊り会だった。片割れが留守となる106号室にて決行、勿論左京の承諾もちゃんと得ている。備え付けのロフトベッドではなく、テーブルも全部端へと寄せて作った広々としたスペースが本日の会場だ。
    並べて敷いた布団に二つの枕をぽんぽんと置くとそれだけで日常とは少し違う雰囲気になって心が弾んでしまう。だけど、そこに寝転がって学校やバイト先での出来事を話しているとあっという間に時間は過ぎ去ってしまい、莇のスマホのアラームがシンデレラタイムを引き連れてきてしまった。
    「えー…もうおしまい?」
    「時間だしな」
    「…明日は学校も休みだよ?」
    「それはそれ、これはこれ」
    布団から抜け出した莇が壁にある室内を照らす灯りの源をオフへと切り替えた。暗くなった室内に踵を返して枕元に置いてきたスマホの明かりを頼りに布団へと戻ると、あからさまにしょんぼりとなっている九門がそれでも大人しく自分の布団へと潜り込む所だった。可愛いかよ、と思わず出てきそうな声を飲み込むと同時に莇は拳を胸元に強く押し付けた。そうしないとその健気な姿に胸の奥はぎゅっと鷲掴まれたまま破裂してしまいそうなのだ。もう少し強めに嫌だとアピールでもしてくれたら、なんて脳裏に浮かんで顔が熱くなるのを感じた莇は自分の布団に潜り込む事すら忘れて立ち尽くしていた。
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