ナカマル
DONE #ナカマルのクアザバレンタイン当日の九莇。付き合ってないし、今後付き合うかどうかもわかりません。
ほんのりピンクのエゴイズム ◇◆──────────
チョコを、断った。
好きな人がいるから。理由は、正直に本当のことを言った。甘いものが苦手だから、と言い訳しようかとも考えたけれど、それではやっぱり不誠実だ。
オレのためにせっかく用意してくれたものを断るなんて初めてだった。二月だというのに背中と腋と額に汗をかいたし、心臓が異常なほどバクバクして、逃げ出したくなった。それでも、オレは一人ひとりに丁寧にお礼を言って、頭を下げて謝った。下駄箱に入れてくれた人のことも探して、直接返した。
泣きそうな顔をしている人もいたけれど、みんな「教えてくれてありがとう」と言って、綺麗にラッピングされたチョコを引き取ってくれた。
そんなわけで、今年は今朝カントクから貰ったチョコを除けば、ゼロ個。
3135チョコを、断った。
好きな人がいるから。理由は、正直に本当のことを言った。甘いものが苦手だから、と言い訳しようかとも考えたけれど、それではやっぱり不誠実だ。
オレのためにせっかく用意してくれたものを断るなんて初めてだった。二月だというのに背中と腋と額に汗をかいたし、心臓が異常なほどバクバクして、逃げ出したくなった。それでも、オレは一人ひとりに丁寧にお礼を言って、頭を下げて謝った。下駄箱に入れてくれた人のことも探して、直接返した。
泣きそうな顔をしている人もいたけれど、みんな「教えてくれてありがとう」と言って、綺麗にラッピングされたチョコを引き取ってくれた。
そんなわけで、今年は今朝カントクから貰ったチョコを除けば、ゼロ個。
ハルタカ
SPOILER謎解きパートヒント⑥【12/17 Dozen Rose FES】『恋もメイクもあざやかに』にて頒布したゲームブック「夏のあの日の七不思議〜魔法のサーカス編〜」謎解きに関するヒントです。謎解きにつまずいたら1つずつ確認してみて下さい。
⚠秘密の包みを開く指示があるまでは閲覧しないでください。⚠
ハルタカ
SPOILER謎解きパートヒント⑤【12/17 Dozen Rose FES】『恋もメイクもあざやかに』にて頒布したゲームブック「夏のあの日の七不思議〜魔法のサーカス編〜」謎解きに関するヒントです。謎解きにつまずいたら1つずつ確認してみて下さい。
⚠秘密の包みを開く指示があるまでは閲覧しないでください。⚠
ハルタカ
SPOILER謎解きパートヒント④【12/17 Dozen Rose FES】『恋もメイクもあざやかに』にて頒布したゲームブック「夏のあの日の七不思議〜魔法のサーカス編〜」謎解きに関するヒントです。謎解きにつまずいたら1つずつ確認してみて下さい。
⚠秘密の包みを開く指示があるまでは閲覧しないでください。⚠
ハルタカ
SPOILER謎解きパートヒント③【12/17 Dozen Rose FES】『恋もメイクもあざやかに』にて頒布したゲームブック「夏のあの日の七不思議〜魔法のサーカス編〜」謎解きに関するヒントです。謎解きにつまずいたら1つずつ確認してみて下さい。
⚠秘密の包みを開く指示があるまでは閲覧しないでください。⚠
ハルタカ
SPOILER謎解きパートヒント②【12/17 Dozen Rose FES】『恋もメイクもあざやかに』にて頒布したゲームブック「夏のあの日の七不思議〜魔法のサーカス編〜」謎解きに関するヒントです。謎解きにつまずいたら1つずつ確認してみて下さい。
⚠秘密の包みを開く指示があるまでは閲覧しないでください。⚠
ハルタカ
SPOILER謎解きパートヒント①【12/17 Dozen Rose FES】『恋もメイクもあざやかに』にて頒布したゲームブック「夏のあの日の七不思議〜魔法のサーカス編〜」謎解きに関するヒントです。謎解きにつまずいたら1つずつ確認してみて下さい。
⚠秘密の包みを開く指示があるまでは閲覧しないでください。⚠
Qチケットに描かれた動物は?
Masima2022
PAST①九莇のキスのはなし。九門くんバージョン→莇くんバージョン【https://poipiku.com/5568522/8989986.html】と続いてますので、こちらからお先にどぞ! 1025
Masima2022
DONEリクエスト頂いた「莇のヘアアレンジについて」のお話です❣️(解釈が甘く求めていたものと違っていたらすみません…っ😭)リクエストありがとうございました…!
「莇ってさ、色んな人のヘアアレンジもやってんじゃん?あれって何か参考にしてんの?」
恒例になっている屋上での昼休み、臣さんお手製の弁当に入っていたエビフライを大きな口でぱくりと頬張る九門から唐突な質問が飛んできた。なんで急に、と尋ねると前々から気になっていた事を今し方思い出したのだと言う。突拍子もないことを口にされるのは慣れたので驚くこともないけど、可笑しくなるのはどうしたって慣れないみたいで俺の口角は自然と緩んでしまう。
「まあ一応参考っていうか、トレンドとかそういったのはチェックしてる」
「トレンド…!なんかかっけー!」
「定番化して根付いてるもんもあるけど、流行り廃りが激しいしな」
「うわぁ…やっぱり莇ってすげー…!」
1328恒例になっている屋上での昼休み、臣さんお手製の弁当に入っていたエビフライを大きな口でぱくりと頬張る九門から唐突な質問が飛んできた。なんで急に、と尋ねると前々から気になっていた事を今し方思い出したのだと言う。突拍子もないことを口にされるのは慣れたので驚くこともないけど、可笑しくなるのはどうしたって慣れないみたいで俺の口角は自然と緩んでしまう。
「まあ一応参考っていうか、トレンドとかそういったのはチェックしてる」
「トレンド…!なんかかっけー!」
「定番化して根付いてるもんもあるけど、流行り廃りが激しいしな」
「うわぁ…やっぱり莇ってすげー…!」
Masima2022
DONEリクエストで頂いた「もちもちほっぺでご機嫌な莇くん」です❣️リクエストありがとうございました…!
直接本人から聞いたわけじゃないけど、これが莇のストレス解消のひとつなんだと分かったのは出会ってから初めての冬を越した頃。ちょっと前までは年がら年中太陽を浴びて焼けていたオレの肌だけど、その時から特にケアをしなくてもそこまで状態が酷くなる事は無かったんだ。そんな意外とタフな肌を莇という美肌番長に鍛えられたもんだから、今ではこうして触られても文句も言われない状態へとレベルアップしていた。
最初の頃は化粧水とかパックとかついつい忘れちゃってたけど、番長のしごきっぷりにいつしかそれが身に付いてからは忘れることなんて一度も無かった。
「やっぱお前の肌にはあのオイル合ってたみたいだな。柔らかさが増してる」
「ちょっと柑橘系の匂いがするやつ?」
566最初の頃は化粧水とかパックとかついつい忘れちゃってたけど、番長のしごきっぷりにいつしかそれが身に付いてからは忘れることなんて一度も無かった。
「やっぱお前の肌にはあのオイル合ってたみたいだな。柔らかさが増してる」
「ちょっと柑橘系の匂いがするやつ?」
Masima2022
DONEとある暑い夏の日。初めて知った、味。
「……あっちぃ……」
「莇ぃ…アイス」
「自分で取ってこい」
「動きたくなーいー…」
「なら諦めろ」
「えー…」
我ながら間の抜けた声だなあ、なんて思いながら床に大の字に転がったまま窓の外に目を向けた。このクソ暑い中、大活躍する筈だったエアコン様は只今絶讚故障中なので窓は全開、網戸越しの真っ青な空には真ん丸い太陽が陣取っていて雲なんか一つもない、絵に描いたような青空だった。耳を澄まさなくても少し先にある公園から蝉の大合唱が風に乗って届いてくる。
正に、夏。言い切ってもいい、これが夏だ。
「ねえ、あれなんて言うんだっけ?」
「あ?なに」
「あれだよ。あの窓に吊るすやつ」
「てるてる坊主?」
「違いますぅ〜」
即座に返った言葉に突っ込みを入れると莇がけたけたと楽しそうに笑った。この暑さで少しテンションが上がってるらしい。莇のテンションもぶっ壊れ始めるくらい暑いって逆にレアじゃん。
936「莇ぃ…アイス」
「自分で取ってこい」
「動きたくなーいー…」
「なら諦めろ」
「えー…」
我ながら間の抜けた声だなあ、なんて思いながら床に大の字に転がったまま窓の外に目を向けた。このクソ暑い中、大活躍する筈だったエアコン様は只今絶讚故障中なので窓は全開、網戸越しの真っ青な空には真ん丸い太陽が陣取っていて雲なんか一つもない、絵に描いたような青空だった。耳を澄まさなくても少し先にある公園から蝉の大合唱が風に乗って届いてくる。
正に、夏。言い切ってもいい、これが夏だ。
「ねえ、あれなんて言うんだっけ?」
「あ?なに」
「あれだよ。あの窓に吊るすやつ」
「てるてる坊主?」
「違いますぅ〜」
即座に返った言葉に突っ込みを入れると莇がけたけたと楽しそうに笑った。この暑さで少しテンションが上がってるらしい。莇のテンションもぶっ壊れ始めるくらい暑いって逆にレアじゃん。
Masima2022
DONEリクエストで頂いた「初ちゅーするくあざちゃん」です❣️たまにはこんなお約束もいいのでは…!?リクエストありがとうございました…!
「わあっ!」
「…っ!」
角を曲がって出合い頭に正面衝突、そのまま尻餅をついた二人がそれから恋に落ちる。そんな使い古された少女漫画のような事を今まさに引き起こしてしまった九門と莇だったが、既に二人は恋仲である。故に恋に落ちる展開はとうに済ませてある筈なのに、お互い口元を手のひらで覆わせて真っ赤になって固まっていた。
ぶつかった瞬間、何か柔らかいものが触れて、それから固いものが当たって、今はジンジンと響く痛みのみが残る唇がこれは現実だと教えてくれている。上唇、もっと言えば前歯の辺りが鈍く痺れているような気もする。
「………」
「………」
お互いが同じような体勢で固まっているのを目の当たりにして、まさかとの思いが二人の顔を更に火照らせていく。
570「…っ!」
角を曲がって出合い頭に正面衝突、そのまま尻餅をついた二人がそれから恋に落ちる。そんな使い古された少女漫画のような事を今まさに引き起こしてしまった九門と莇だったが、既に二人は恋仲である。故に恋に落ちる展開はとうに済ませてある筈なのに、お互い口元を手のひらで覆わせて真っ赤になって固まっていた。
ぶつかった瞬間、何か柔らかいものが触れて、それから固いものが当たって、今はジンジンと響く痛みのみが残る唇がこれは現実だと教えてくれている。上唇、もっと言えば前歯の辺りが鈍く痺れているような気もする。
「………」
「………」
お互いが同じような体勢で固まっているのを目の当たりにして、まさかとの思いが二人の顔を更に火照らせていく。
Masima2022
DONEリクスエストで頂いた「九門くんの匂いが好きな莇くん」です❣️リクエストありがとうございました…!(同じリクエストをお二人から頂いたので、その分少し長めになっております)
夕刻の通り雨が心配になるのはこの季節の特徴の一つでもある。それは分かっているのだが、来るかどうかも分からない通り雨の為に雨具を持ち歩くだなんてそうそう出来たものではないのが現状だった。
「すっごい雨だねー…」
「雷鳴ってね?」
「うわ、ほんとだ。…止むかなあ」
「通り雨だとは思うけどな」
九門と莇も例に漏れず雨具を持ち歩いておらず、見ての通りの濡鼠状態だ。下校の途中にこのバケツをひっくり返したような酷い通り雨に襲われてしまい、何とか屋根のある所まで走ってきたが制服はぐっしょりと濡れて肌に貼り付く始末である。昼間はあんなに晴れ晴れとして陽射しも痛かったのに、と今は黒に近いグレーの雨雲達を苦々しく見上げてみてもその勢いは激しいままだった。
1302「すっごい雨だねー…」
「雷鳴ってね?」
「うわ、ほんとだ。…止むかなあ」
「通り雨だとは思うけどな」
九門と莇も例に漏れず雨具を持ち歩いておらず、見ての通りの濡鼠状態だ。下校の途中にこのバケツをひっくり返したような酷い通り雨に襲われてしまい、何とか屋根のある所まで走ってきたが制服はぐっしょりと濡れて肌に貼り付く始末である。昼間はあんなに晴れ晴れとして陽射しも痛かったのに、と今は黒に近いグレーの雨雲達を苦々しく見上げてみてもその勢いは激しいままだった。
Masima2022
DONEワンドロより〜電話〜電話「あざ、」
まだまだ夜風は冷たく感じる二十時。莇を探して向かったバルコニーでその後ろ姿をやっと発見したオレは嬉々として声を掛けようとした。
…した、んだけど、オレの気配に振り返った莇の耳元にはスマホが押し宛てられていて、電話中だと直ぐに気付いたオレは慌てて自分の口を両手で塞いだ。そんなオレを見ながら人差し指を唇に当てる莇の黒髪が冷たい夜風に撫でられてさらりと流れる。静かにしろ、と声が無くてもその仕草が何を示しているかなんて一目瞭然、オレはうんうんと口を塞いだまま頷いた。
「……、」
そんなオレを見て莇は綺麗な瞳の端っこをほんのり細めて、艶々の唇をちょこっとだけ笑った形に変えて指を離した。あ、悪い何だっけ。なんて直ぐにその視線はオレとは反対方向に向かっちゃったけど、オレの心臓はどきどき煩くなっちゃって聞こえてないか心配になるくらいだった。オレにだけ向けられた秘密を共有してるみたいな笑い顔が凄く綺麗で可愛くって、何だか電話口の先のオレの知らない人に勝ったみたいな気持ちになっちゃうとか意味の分からない充足感を噛み締めていると唐突に莇からおっきな笑い声が上がった。
1777まだまだ夜風は冷たく感じる二十時。莇を探して向かったバルコニーでその後ろ姿をやっと発見したオレは嬉々として声を掛けようとした。
…した、んだけど、オレの気配に振り返った莇の耳元にはスマホが押し宛てられていて、電話中だと直ぐに気付いたオレは慌てて自分の口を両手で塞いだ。そんなオレを見ながら人差し指を唇に当てる莇の黒髪が冷たい夜風に撫でられてさらりと流れる。静かにしろ、と声が無くてもその仕草が何を示しているかなんて一目瞭然、オレはうんうんと口を塞いだまま頷いた。
「……、」
そんなオレを見て莇は綺麗な瞳の端っこをほんのり細めて、艶々の唇をちょこっとだけ笑った形に変えて指を離した。あ、悪い何だっけ。なんて直ぐにその視線はオレとは反対方向に向かっちゃったけど、オレの心臓はどきどき煩くなっちゃって聞こえてないか心配になるくらいだった。オレにだけ向けられた秘密を共有してるみたいな笑い顔が凄く綺麗で可愛くって、何だか電話口の先のオレの知らない人に勝ったみたいな気持ちになっちゃうとか意味の分からない充足感を噛み締めていると唐突に莇からおっきな笑い声が上がった。
Masima2022
DONEとある日の、放課後の話ミルクティー真っ昼間だと言うのに吐く息が白い。
太陽だって鬱陶しいくらい輝いているのに少しも気温が上がらないのは今日が特別寒いからであって、冬だからだと言う事くらい分かっている。でも寒いものは寒い。
「…ん、これ、」
テイクアウトしてきたミルクティーを一口含んで思わず声が漏れた。きっと莇の好きな味だから、と嬉しそうに教えてくれた九門の顔が瞬時に浮かぶ。
ちょっと甘めでミルクの香りがアッサムの中にも感じられて凄く美味しい。二口、三口と立て続けに口にして、広がる味と仄かな喜びに息を吐いた。甘いのはそこまで得意な方ではないけれど紅茶は甘めの方が好きだった。その美味しさもだけどここまで自分の味覚を九門が分かってくれていた事が何故か酷く嬉しい。九門は甘めの紅茶は好まないだろうに自分のために色々吟味してくれたのだろうかとか、たまたま見付けて自分の事を思い出して教えてくれたのだろうかとか、そんな事がぐるぐると頭の中を巡っていた。
1156太陽だって鬱陶しいくらい輝いているのに少しも気温が上がらないのは今日が特別寒いからであって、冬だからだと言う事くらい分かっている。でも寒いものは寒い。
「…ん、これ、」
テイクアウトしてきたミルクティーを一口含んで思わず声が漏れた。きっと莇の好きな味だから、と嬉しそうに教えてくれた九門の顔が瞬時に浮かぶ。
ちょっと甘めでミルクの香りがアッサムの中にも感じられて凄く美味しい。二口、三口と立て続けに口にして、広がる味と仄かな喜びに息を吐いた。甘いのはそこまで得意な方ではないけれど紅茶は甘めの方が好きだった。その美味しさもだけどここまで自分の味覚を九門が分かってくれていた事が何故か酷く嬉しい。九門は甘めの紅茶は好まないだろうに自分のために色々吟味してくれたのだろうかとか、たまたま見付けて自分の事を思い出して教えてくれたのだろうかとか、そんな事がぐるぐると頭の中を巡っていた。
Masima2022
DONEワンドロより〜犬〜公園のベンチに九門と莇は並んで座っていた。高校からの帰り道にあるコンビニで何か食べ物を買った時はこうして寄り道をするのが常となっていて、今回はお供に選ばれた角煮まんと肉まんを頬張る事となった。ガサガサと音を立てながらビニール袋の中から二つの包みを取り出した九門は、肉まんは透明のセロファンテープで封をされている方だと言っていた店員の言葉通りに透明の方を莇へと手渡す。サンキュ、と短い礼と共に二人の手にそれぞれ目的のものが行き渡った所で漸くいただきますとなった。
「ね、莇…!見て…!」
暫くして莇の耳元でこっそりと声色を落とした九門の息遣いがした。
内緒話でもするように顔を近付けて話されると破廉恥だの近いだの条件反射に出てくる感情は勿論芽生えた莇だったが、余りにも九門が嬉しそうに話しかけるものだから毒気を抜かれて擽ったく思う心地へと落ち着いてしまったらしい。仕方ないなと言いたげに小さく息を漏らすが、その口元が緩んでいるのが良い証拠だ。
1244「ね、莇…!見て…!」
暫くして莇の耳元でこっそりと声色を落とした九門の息遣いがした。
内緒話でもするように顔を近付けて話されると破廉恥だの近いだの条件反射に出てくる感情は勿論芽生えた莇だったが、余りにも九門が嬉しそうに話しかけるものだから毒気を抜かれて擽ったく思う心地へと落ち着いてしまったらしい。仕方ないなと言いたげに小さく息を漏らすが、その口元が緩んでいるのが良い証拠だ。
Masima2022
DONEワンドロより〜桜〜早咲きの桜が咲き誇る帰り道。
めでたい卒業の日の帰り道も桜たちは何時ものように風に揺れ、薄桃色の花びらを散らし、二人の目の前を悪戯に過ぎる。
「……わ、」
ごう、と音を立てたつむじ風が地上から空に向かって抜けていくと副産物の花びらが一斉に宙を舞う。はらはらと、はらはらと、地面に、九門に、莇に降り注ぐそれは視界を優しい桜色へと一瞬で染めていく。
「すごい」
「…ああ、」
見事なまでの桜吹雪に目を細めて感嘆する九門を横目で一瞥した莇はそれだけ返すと唇を結んだ。今日で見納めになる制服の裾が風でふわりと舞う。しっかりとネクタイを締めてる姿なんて初めて見てしまったのは今朝の事、僅かな驚きがまた胸の中に戻ってきてちくちくと刺していく。
553めでたい卒業の日の帰り道も桜たちは何時ものように風に揺れ、薄桃色の花びらを散らし、二人の目の前を悪戯に過ぎる。
「……わ、」
ごう、と音を立てたつむじ風が地上から空に向かって抜けていくと副産物の花びらが一斉に宙を舞う。はらはらと、はらはらと、地面に、九門に、莇に降り注ぐそれは視界を優しい桜色へと一瞬で染めていく。
「すごい」
「…ああ、」
見事なまでの桜吹雪に目を細めて感嘆する九門を横目で一瞥した莇はそれだけ返すと唇を結んだ。今日で見納めになる制服の裾が風でふわりと舞う。しっかりとネクタイを締めてる姿なんて初めて見てしまったのは今朝の事、僅かな驚きがまた胸の中に戻ってきてちくちくと刺していく。
Masima2022
DONEワンドロより〜ジャージ〜「あ」
洗濯当番中のある晴れた五月某日。
次々と干されていく洗濯物の中に見つけた黒いパーカー。一目で分かってしまう、莇のパーカーだ。洗濯籠の前にしゃがみ込んでジャージの下にいつもあるそれを洗濯物の中から引っ張り出して広げてみたら意外に大きかった。細いのを気にして少し大きめのものを着ている、と小耳に挟んではいたから、あーなるほど、と微笑ましく思い空に掲げるようにして広げたそれをゆっくりと下げながらオレはきょろきょろと辺りを見回した。一緒に当番してる紬さんと綴さんがシーツの山と格闘しているのを確認してからオレは莇のパーカーに顔を埋めて匂いを吸い込んだ。最初にやってきたのは柔軟剤の香り。東さんが定期的に貰ってるって言うその柔軟剤は全然匂いがきつくなくて、仄かに石鹸みたいなさっぱりした香りがして万人受けするってこういうのなんだろうなあ、なんて思う。
2193洗濯当番中のある晴れた五月某日。
次々と干されていく洗濯物の中に見つけた黒いパーカー。一目で分かってしまう、莇のパーカーだ。洗濯籠の前にしゃがみ込んでジャージの下にいつもあるそれを洗濯物の中から引っ張り出して広げてみたら意外に大きかった。細いのを気にして少し大きめのものを着ている、と小耳に挟んではいたから、あーなるほど、と微笑ましく思い空に掲げるようにして広げたそれをゆっくりと下げながらオレはきょろきょろと辺りを見回した。一緒に当番してる紬さんと綴さんがシーツの山と格闘しているのを確認してからオレは莇のパーカーに顔を埋めて匂いを吸い込んだ。最初にやってきたのは柔軟剤の香り。東さんが定期的に貰ってるって言うその柔軟剤は全然匂いがきつくなくて、仄かに石鹸みたいなさっぱりした香りがして万人受けするってこういうのなんだろうなあ、なんて思う。
Masima2022
DONE一緒に見上げる星空の話流星群『本日22時、中庭に集合!』
そんな文字が受信を告げる小さな音と共に莇のスマホに届けられた。22時と言えばシンデレラタイムの始まりで、他の団員に口煩く言っている身としてもそれまでには就寝の準備を済ませていたいし普段ならば却下の一言で済ませていたのだが今回ばかりはそうもいかない。莇は人差し指を動かし、分かったとの言葉を文字を送りつけてきた九門へと返した。
ーーー
「ちゃんと冷えないようにしてきた?」
「当たり前」
「だよね!」
22時になる10分前に中庭に向かうとそこには九門が既に居て、あの優しい笑顔で莇を出迎えてくれた。隣に立つと覗き込むようにして尋ねられるものだから小さく肩を竦めて返してやると何が楽しいのか声を上げて笑った。
2312そんな文字が受信を告げる小さな音と共に莇のスマホに届けられた。22時と言えばシンデレラタイムの始まりで、他の団員に口煩く言っている身としてもそれまでには就寝の準備を済ませていたいし普段ならば却下の一言で済ませていたのだが今回ばかりはそうもいかない。莇は人差し指を動かし、分かったとの言葉を文字を送りつけてきた九門へと返した。
ーーー
「ちゃんと冷えないようにしてきた?」
「当たり前」
「だよね!」
22時になる10分前に中庭に向かうとそこには九門が既に居て、あの優しい笑顔で莇を出迎えてくれた。隣に立つと覗き込むようにして尋ねられるものだから小さく肩を竦めて返してやると何が楽しいのか声を上げて笑った。