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    808koshiya

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    承③(おじさんと妹または姉妹のお茶会)

    「ユエ様は運命数の法則はご存知ですか?」
    メイジュナムがティーカップの持ち手に触れながらのんびりと訊ねてくるので、ユエは小さく顎を引いた。
    「愛し合う者同士の間に生まれた子供には創造主の祝福がある、とかいうやつか」
    子供のおまじないのようなものだろう、と吐き捨てると、女は軽やかな笑い声を立てた。会話の相手を好意的に思っていることを示す温かさをしていて、それはひどくむず痒い温度である。
    「そうとも言い切れないのですよ」
    白くかよわい指先が陶器の縁を撫でている。整えられた爪。その手が見た目どおりに柔らかいことを思い出す。
    「ある領国の統計では自由恋愛の結果生まれた子供の魔呪的素質は双方の親よりも優れる確率が高いとか」
    「眉唾だな。比較対象があんのか」
    「そうですね、貴族同士の政略結婚においてはほぼ双方の親の平均であった、といいますね」
    「……」
    信憑性に欠ける話である。魔呪的素質、なるものが明確に数値化できるものでない以上、信頼できない統計なのである。そのユエの険しい視線をものともせずに、メイジュナムはこう続けた。
    「だから、私はお従兄さまを愛しているのです」
    「……?」
    それはひどく奇妙な順接である。うすら寒いほどの美しい微笑みはハルニードとよく似た造形だが、まるで離れてもいた。
    「だから……?」
    「ええ。私たちに求められていることが何か、ユエ様もご存知でしょう」
    ハルニードがこの女を恐れている理由が知れる気がした。
    「……次世代の子供を産むこと?」
    「はい。より強い素質を持った子供です。私には星産みの格がないので、それしかできることがありませんから」
    笑顔は明るい。声音もだ。
    「お姉様の代わりに、お姉様のできないことを成さねば」
    ユエはなんらかの言葉の代わりに紅茶を口に含んだ。彼女らの一族にまつわる数々を、ハルニードは品種改良の歴史だと吐き捨てる。その歴史に加わろうというこの従妹の求愛を苦々しく思っていることは確かである気がした。
    「お嬢さんだけがそう思っててもしょうがないだろうよ」
    「あら、お従兄さまは私を愛してくださっていましてよ」
    ユエがなんとか選び出した嗜めを、メイジュナムはやはり軽く笑い飛ばすのである。
    「私の役を憐んで、お役目を憎んで、本分を否定して。……可愛らしいひと」
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