ハルニードが夜行性であるのは森の呪のものが活発化する時間にあわせてのこと、というのがおおよその理由である。
オーラレン領を守る呪のもの避けの術式は呪のものの活動域を森の奥に制限する効果を持つもので、ハルニードの現在の役割はその術式に綻びがないかを念の為確認してまわるという程度のものだと本人は自嘲する。覚えがある話である。つまり森の番人と呼称される者はだいたい同じような仕事をしている。
日中、少し傾きかけた陽射しが大きな窓を貫く。ハルニードはその眩しさで目を覚ました。カーテンを閉め忘れていたのだ。
広々とした寝台の上、つまり部屋の端にはユエが浅い眠りを喫している。丸まった姿勢でこちらを向いている厚い背中が無防備だとハルニードは思う。
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