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    カリフラワー

    @4ntm_hns

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    カリフラワー

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    マ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「電子機器」
    モブ視点。もだもだ。

    #TGM
    #ルスマヴェ
    rousmavet
    #roosmav
    #M右ワンドロワンライ
    mRightWandolowanRai

    応答すべき彼からの着信「あ〜クソ」
     やっちまった、スマホがない。どこかに置いてきてしまった。たぶんロッカーの中だろう。まあでも、心配する必要はない。昼時の食堂には、タイミングよくあいつが現れるから。
    「なあ、ルースター」
     鼻歌の主を見ることもなく声をかけた。
    「なんだよ」
     その返事は呼びかけた名前と同じ人間の声だった。振り返ると、ルースターは退屈そうにあくびをしているところだった。俺の後ろに並び、同じく俺の方を見ることもなくただ配膳される昼飯を目で追っている。
    「ちょっとスマホ貸してくれ」
    「自分のは?」
    「ロッカーに入れてそのまま忘れてた」
     あっそ、とルースターは短く呟き、トレーを片手で持ち直してポケットを探った。そして「ん」とスマホで俺の肩を叩いてそれを寄越した。やはり海軍で持つべきものは、深入りしてこない友人だ。
    「助かる」
     受け取ったスマホをトレーの隅に置き、空いたテーブルを見つけて席に着いた。ルースターは視線の先にある壁掛け時計にちらりと目を向け、吸い込むように昼飯を食べ始めた。
    「スマホで何すんの」
     ルースターの声は無感情だ。自分のスマホをいじられることへの警戒心はあるが、俺の目的には興味がないらしい。
    「店の営業時間を調べたいんだよ、三カ所くらい」
     そう言いながらルースターのスマホの電源をつけると、ロック画面が浮かび上がった。それは、テーブルの向かいからカメラではなく撮影者を優しく見つめる、伝説のアビエイターのポートレート。
    「わお、やっぱりロック画面はこの人だったか」
    「うるせえ、あんま見んな」
     自動でスリープする画面を何度かタップしてマーヴェリックの姿を見ていると、案の定ルースターは不満そうに口を挟んだ。
    「見んなってお前、ロック画面なんだから見ざるを得ないだろ」
    「俺が見るために設定してんだよ」
     ルースターは「俺が」と強調して繰り返した。
    「デート中の写真か」
    「そう、マーヴがこっちに来たがってたから呼んだ時のやつ」
    「嬉しそうだな」
    「この人、ずっとそんな感じだよ」
     俺が聞く限りの噂では、マーヴェリックのイメージは"近寄り難い人"だった──ルースターがトップガンに召集されて戻ってくるまでは。それからはこいつに惚気だとか自慢だとか、色々な話を聞かされて、ずいぶん穏やかなイメージへと変わった。まさにこの画面に映る彼の笑顔が、ブラッドリー・ブラッドショーに見せる顔なのだろう。
     しかし俺がロック画面を見てうだうだしている理由は、密かにマーヴェリックに見惚れているからだけではない。
    「パスコードは? お前の誕生日? ロック開けねえんだけど」
     暗証番号を教えてもらえなければ、スマホを借りた意味がない。
    「違う、マーヴの生年月日」
    「ああ、そりゃそうか……」
     これほどマーヴェリックに入れ込んでいる奴が、彼にまつわる番号以外を設定しているはずがなかった。その事実は少し考えればわかることだが、肝心のマーヴェリックの誕生日を俺は知らない。そのため生年月日を教わろうとパスコードの入力画面を起動させ待ち構えると、ルースターはスマホを俺の手からひったくった。
    「マーヴの誕生日は教えない」
     そう言ってルースターはスマホを自身の身体に近づけ、誰にも見えないようにパスコードを入力した。なんだこいつ……。
    「誕生日くらいいいだろ? 知ったところで祝うわけじゃねえし、今後お前のスマホを盗んで開く予定もない」
    「他のラップトップとかウェブサイトのパスワードも全部マーヴの生年月日だから、バレると俺のセキュリティーがヤバいんだよ」
     ヤバいのはお前の危機管理に対する意識だろ。
    「別にお前のデータなんて興味ねえけど……」
     ルースターは俺の言葉を無視して、ようやくロックが開いたスマホをこちらに向けた。様々かアプリが並ぶ奥には、男二人のツーショットセルフィー。驚きはしない。俺のスマホだってホーム画面は実家の犬とのセルフィーだ。だけどこの格好って……。
    「これいつの写真?」
    「興味ねえくせに聞くなよ」
    「あるわ、お前この人が誰だか知ってるか? 泣く子も黙るマーヴェリックだぞ? こんな凄い人がこんなマイペースな奴の隣で笑ってんだぞ、しかも二人とも上半身脱いだ状態で」
    「ビーチに行ったんだよ、デートで!」
     言わなかったか?とルースターは眉を寄せて答えた。そんな話聞いたっけな。
    「一瞬もっと際どい状況の写真だと思ったんだよ」
    「もしそうならお前に見せる前に替えてるし、まだマーヴとはそんな関係じゃない」
     相変わらずマーヴェリックのことはたいそう大事にしているみたいだ。こいつがマーヴェリック以外の人間にご執心な姿など見たことがない。だが待てよ、"まだマーヴとは"……なんだって?
    「まさかお前、マーヴェリックと付き合ってねえの?」
     ルースターはあからさまに目を逸らした。
    「明らかに恋人だろ、この表情は」
     ホーム画面に映るマーヴェリックを指すと、ルースターは短くため息をついた。
    「そう思いたいけど、マーヴに会うたびよくわからなくなるんだよ。時々ただの友達みたいにも思えるし、"どう考えても恋人だよな?"って瞬間もある」
     相手を大事に想いすぎて、ルースターにしては珍しいほど真剣に悩んでいる姿も、トップガンから帰ってくるまでは見たことがなかった。
    「付き合いたくねえの? マーヴェリックと」
    「めちゃくちゃ付き合いたい、けどマーヴの気持ちがわからない」
    「ならはっきりさせたら? はっきりさせたいだろ?」
    「……させたい」
     ルースターの小さな返事は、人で賑わう食堂ではかき消されそうだ。
    「よし決まりだな、こうなったらすぐにでもマーヴェリックと話せ」
    「は? 無理無理、ほら、時差とかあるし」
    「向こうももうとっくに起きてるだろ」
    「確信が持てるようになったら話すから」
     それっていつになるんだよ? トップガンでマーヴェリックと会ってからどれだけ時間が経った?
    「こっちに戻ってきてから、お前のその慎重すぎる性格も変わったと思ってたんだけどな」
    「ああもううるさい、デザート貰い忘れたから貰ってくる」
     ルースターは振り払うように席を立った。俺の手にスマホを残したまま。調べ物を再開するため手元を見ると、その画面はスリープ状態に戻り真っ暗になっていた。
    「クソ、パスコード……」
     だから教えてくれりゃよかったのに。そう呟きながら食堂の人混みに紛れたルースターを遠目に探していると、手の中でスマホが突然震え始めた。
    「うおっ」
     驚いた拍子に誤って画面に触れてしまい、着信に応答してしまったようだ。着信音が途切れ、発信者の声が聞こえた。その発信者とはなんと──
    「ま、マーヴェリック……!?」
    『ん? ブラッドリー?』
    「あ、いや」
     まさかこんなタイミングでマーヴェリックと話す羽目になるとは。……いや、これはチャンスか? さりげなくルースターとの関係が深まるようにアシストできれば……。いやいや待て、どうして俺がそこまで世話を焼かなきゃいけないんだよ、部外者だろ俺は。
    『もしかして君、ブラッドリーじゃないな?』
     スマホの向こうの景色を知らないマーヴェリックは、明るく笑って問いかけた。
    「違います、ルースターと同じ部隊の者で……」
    『やっぱり、声が違うと思ったんだ』
     ルースター以外の男の声を聞いても、マーヴェリックはあまり動揺していないようだ。
    『ルースターはそっちにいるのかな?』
    「あ、はい、今は近くにはいませんけど……すぐ戻ってくると思います」
    『そうか』
    「はい」
     数秒間の気まずい沈黙。ルースターを探してスマホを返すか、電話をかけ直してもらうようマーヴェリックに言うべきだろうか。
    『あの……』
     俺が口を開きかけたのを悟ったように、マーヴェリックはさっきよりもぎこちない声を出した。
    『君は僕のことを知ってるんだね?』
    「もちろんです、サー。伝説のアビエイターですから」
    『ああ、そっちの方か』
     マーヴェリックは小さく笑った。
    「そっちの方、ですか?」
    『ああいや、その……ブラッ、ルースターが僕のことを紹介したのかと思ったんだ……恋人として』
     恋人? 今、恋人って言ったよな?
    「すみませんマーヴェリック、あいつはあなたと付き合ってるんですか?」
    『え? まあ、そのつもりだけど……すまない、もしかして君はルースターのこと……』
    「好きじゃないので安心してください」
     あぶね、ややこしい状況になるところだった。スマホのスピーカーはマーヴェリックの安心したような吐息を拾った。
    『そうか……付き合ってると思ってるのは僕だけなのか……』
     ああ違う! それも違う! なんだよ、やっぱり付き合ってるんじゃねえかよ。あいつは一体何がわからないんだよ、"確信が持てるようになったら"って、もうすでにマーヴェリックはあいつの恋人じゃねえか。
    『ごめんね、今のは独り言だから』
     独り言にしては音量がデカすぎる。聞かなかったことにはできない。マーヴェリックの悲しげで寂しそうな声が胸に突き刺さり、無意識のうちに口を開かせる。
    「あの、俺があまり口を挟むのも良くないとは思うんですが」
    『あ、ああ』
    「マーヴェリックとルースターは、一度しっかりお話しされた方が良いのではないでしょうか……?」
     失礼も承知で、俺は伝説のアビエイターにアドバイスをしてしまった。ああクソ、本当にどうして俺がこんなお節介を……。
    「俺の気のせいかもしれないんですけど、二人で話し合えばその疑念は晴れると思うんです」
     会ったこともない上官を相手にこんなことを言うなんておこがましいかもしれない。だが二人にとって必要な分の意思疎通がとれていないのは大問題だ。
    「つまりその、ルースターもあなたのことを──あっ、待ってください、あいつが戻ってきました」
     ルースターは俺がスマホを耳にあてている姿を確認した途端、歩くスピードを早めた。
    「ルースターに代わりますね」
    『え? あ、うん、ありがとう』
     スマホを差し出すと、ルースターは先ほどより更に強い力でひったくった。
    「誰から?」
    「マーヴェリック。俺からかけたんじゃない」
     当たり前だろ、とルースターが毒づく。
    「用は聞いてないけど、今がすべてをはっきりさせるチャンスだぞ。今なら正式にマーヴェリックの恋人になれる」
    「は? まさかお前っ……!」
    「俺は何も言ってねえよ」本当に何も言っていない。「ただお節介なだけだ」
     そう、俺はお節介なだけ。核心を突くようなことは言っていない。それはルースターかマーヴェリック、どちらかが話すべきだ。二人ではっきりさせるべきことだ。ルースターは胸にあてていたスマホを耳にあて直し、聞いたこともないような甘く優しい声でマーヴェリックに呼びかけた。
     昼休みが終わる時間。それがタイムリミットだ。果たしてルースターは、午後からの訓練を笑顔で過ごせるのか。やはり持つべきものは、お節介に深入りしてくれる友人だ。そうだろ、ブラッドリー?
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    Replies from the creator

    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
    Sing for me 幸せだと感じる時、聞こえてくるのはいつも彼の歌声だった。
     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ企画のルスマヴェです🐓🐺
    お題は「バレンタイン」
    イメージは平日のバレンタインです。イベント事の話が苦手な自分なりに、自分らしく書けたかなと思います。
    サンスベリアの和名に由来する花言葉「永久」「不滅」をタイトルらしくなるようにもじってつけました🪴
    永遠に続けば 今日は何の日か知ってるか?
    目が合った途端、二言目にはこの質問をされた。ただし、質問をしたのは恋人ではなくただの同僚。答え甲斐など何もない。
    「…知ってる。けど言いたくない」
    力の無い答えになんだよそれ、と同僚が笑う。もし目の前にいるのがマーヴだったなら、これ以上ないほどの甘い声できちんと一言答えられるのに。今日はバレンタインだね、と。
    どれだけ瞬きしようが目を擦ろうが目の前の同僚がマーヴに変わることはないし、残業のためPCや書類と向き合った時間を後から取り戻せたりもしない。

    俺はバレンタインに、残業に勤しみ恋人を一人で待たせているのだ。そうか、こんなバレンタインの過ごし方もあったわけか。…当然これは嫌味だが、勤務態度の良い俺は決して口には出さなかった。その分一刻も早く仕事を終わらせ、残業仲間の同僚と別れ駐車場へと向かった。
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