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    けがわ

    @kawaii_hkmr

    文字書いたり、あまりないと思いますが絵を描いたりします

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    けがわ

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    このバルサーは、墓守と付き合えて相当浮かれています

    毒を食らわば皿までの話彼の口が柔らかく上下に動き、小さく切られた野菜を租借する。
    頬の形を僅かに歪めながら行われる、その生理的な行為が好きだった。

    私は頬杖を付きながら、じっとりと熱を孕むようにして、その光景を堪能している。すると普段なら決まって静止の声や文句が入るのだが、もう諦めたせいもあるのだろうか。私をちらりと視界の端に捉えると、はあと溜息をついてそのまま視界を皿へと落とした。ポテトを潰しバジルで味付けされた料理をまた一口、その赤い舌の覗く口内に運ぶ。噛み砕き、喉奥を通り抜ける。ごくりと喉が鳴った。
    かつては「見てばかりいないで、お前も食べろよ。また部屋で倒れて医務室まで担ぐのはごめんだ。」と、睨まれたこともあるが、それでも私はこの男が租借し飲み下し嚥下し消化していく過程が好きで仕方が無いのだ。不器用すぎるナイフとフォークのマナーに、「僕が知らないから、珍しいもの見たさか?」と鼻で笑われ皮肉られたところもあったが、そのがむしゃらな様子にさえ心が躍ったものだ。

    私は自らの、香辛料で赤く染まった料理をそこそこに食べ終える頃には、既に彼は口を拭いて私をちらりと見つめているようだった。食卓を同じとした者を置いていくことは忍びない為、私の終了を待とうとでも言うのだろうか。
    その中でも比較的辛くない物を選ぶと突き刺し、私はひな鳥に向けるようにしてフォークを差し出した。彼はもう隠しようが無い程のしかめっ面を見せたが、食べ物と私を数度往復して睨みつけたかと思うと、恐る恐るそれを口に入れるために口を開いた。あ、と口の中を見せると、覗いてくる歯列や歯茎や舌、ああ、どれをとっても君の、君の肉は皮膚は血管は心臓は心は全て。

    「美味しそうだなぁ!」

    頬杖をついて、うっとりとそう零すと彼は私をじっと見つめ、フォークの先にある赤色のチキンを租借し飲み込んでみせた。辛さのためか目には薄っすらと涙の膜が張っていたが、虚勢を張るようにして、きっと私を睨みつけた。

    「・・・毒があるかもしれないぞ。」

    彼の言う毒とは、自分の性格のことか、病気のことだろうか。そんなことは何も関係ない。なんたって私は、君の食事という行為にすら興奮を覚える程に君に毒され、君を気に入っているのだから。
    言ってやったとばかりの勝ち誇った表情にキスを落とすと、口元からは僅かに私が振りかけた香辛料の味がした。彼の口元に付着した味ごとべろりと犬のように下品に舐めとると、「皿ごと食べてあげるぜ、ダーリン。」と薄ら笑いし、大きなテーブルごしに抱きしめ返したことによって、机は思わぬ方向にひっくりかえり、どしんと大きな地響きを鳴らしてチープな口説き文句の終焉を迎えるのであった。
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