🔗🔮♀嫉妬「ただいま~」
ほろ酔いで気分よく開けた扉。まだサニーは起きているであろう時間なのに返事がなくて、首を傾げた。ヘッドフォンでもしてゲームしてんのかな、なんて考えながら、手を洗って、薄手のコートを脱いだ。
電気はついているリビングに入りながら、もう一度「ただいま」と声をかけた。するとダイニングテーブルに、彼の姿はあった。
「いたの。ただいまってば」
「ん」
「………?」
おかえりの言葉すらない不機嫌そうな彼に、違和感を覚える。まず考えるのは、私、なんかしたっけ。いや、でも最近は浮気っぽい浮気はしてない。サニー以外の男と寝てないし。
じゃあ、何。仕事で嫌なことでもあったかな。まあ、そんな優しく「どうちたの~ベイビーちゃん」ってハグしてやるつもりはないけど。
帰り道に買ったミネラルウォーターを飲んで、今日買いまくった服やらアクセサリーやらカバンやらを床に置いた。いい買い物をしたと我ながら思う。お金を出してくれる人と行くのもいいけど、趣味のわかってる子と行くのはやっぱり最高。
「………何してきたの」
「え?」
「今日、何してきたの」
「ああ、えっと」
突然喋り出すからびっくりした。空になったペットボトルを置いて、サニーの隣に腰掛ける。
「買い物行って、そう、めちゃくちゃ買ったの。あの子が勧めてくるもの全部可愛くて、ひひ。サニーの好きそうなミニスカートも…」
「それはいいから、行動」
なに? 束縛彼氏みたいな。
わりと愛は重い方かなと思ってたけど、なんかいつもと違う感じ。
「んん、えっと、カフェも行ったし、晩御飯は…イタリアンを食べて、そのあとバーに行ったの。まだ帰りたくないねって。で、ちょっとだけ飲んで解散。男はいないよ、バーで話しかけられたけど断ったし。ずっとアルバーンと二人」
「………」
サニーの冷めた目が私を見る。一体なんなの。何かあるならさっさと言えばいいのに。ちょっと飽きてきて、このあいだ新しくしたばっかりのネイルをちりちり引っ掛けて遊ぶ。
今日のアルバーンのファッションよかったな。スポーティな感じで可愛かった。私はどうだろ、似合わないかな。
「浮気したよね」
「は?」
「浮気したよね」
「………いや、してないよ。いつの話?」
「今日」
「してないよ。変な言いがかりはやめて。今日はずっとアルバーンといたの。アルバーンとセックスしたとでも言いたいの?」
今日の私は完全に無実。ホテルに行ってセックスしたわけでも、バーで酔ってキスしたわけでも、男にしなだれかかって歩いたわけでもない。
ふん、と自信満々に胸を張れば、サニーは大きくため息をついて、スマホを取り出した。写っていたのは今日のバー。私とアルバーンがキスをしているところだった。
「………」
「これ何」
「………」
「これ何」
「………ちょっ…と、盛り上がっちゃって。でもキスしただけだよ。ちょっと軽いやつ」
サニーが黙って画面をスワイプする。写真が切り替わって、ただのキスから、私がアルバーンのスカートの中に手を入れて、アルバーンは服の中で明らかに私のおっぱいを揉んでいる写真が映し出された。もちろん、深いキスをしながらのやつ。
「………」
「随分お楽しみだったみたいだね? 周りの男たちに、君たちの気持ちいい顔を見せてやってさ?」
「そんっ…な、二人で楽しんでただけだし」
「こうやって隠し撮りされてるのも気づいてないし、見て、後ろの男もじっと見てる」
「………」
本当にちょっと、おふざけでやっただけ。マスターと話してて、「付き合ってるの?」なんて聞かれて、二人してケラケラ笑いながら否定して。でもなんか流れでキスして、女の子の唇って気持ちいいから、そのままちょっと触りあって…。
でも本当に一瞬だけ。バーでセックスなんてもちろんしないし、ちょっとブラの上から乳首摘まれて、舌を絡ませあって、ちょっと気持ちよくなっちゃっただけ。
「………他の男と寝るより全然マシじゃない?」
「マシじゃねえよ」
あ、やば。マジで怒ってるやつ。サニーの嫉妬スイッチってわかんないな。他の男と寝てもここまでじゃなかったのに、今日はマジギレしてんだもん。
今謝ってもどうにもならないことは経験上よく知っているので、ちょっと、反省はしてますよって顔で黙って座っている。
「来て」
腕を引っ張って、無理やり立たされる。あー、今日は何されんのかな。一日遊んだ身体でベッド行くのヤダな。
って思ってたら、ソファに投げられた。まあいっか。明日の朝までには終わるでしょ。