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    medekuru

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    medekuru

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    ウェパルさんお誕生日おめでとうございます。
    お誕生日ですが……ちょっとお使いに行ってもらいました。
    この師匠、どんな決着になるのかな……
    2024/09/14

    そのお使いの意味は「無駄に休憩してるなら、ちょっとお使いに行ってきてくれません?」

     ここは数あるアスモデウスの拠点のひとつ。最寄りの街から程よく離れているところある小さな建物だ。
     少々騒がしくしても街に被害ない距離というのは大事だ。この師匠は加減という言葉を知らないのだから。
     いつものように死ぬかと思うほどの手ほどきを受けたあと、そんな言葉を投げかけられた。

    「……今度は何を企んでる」
    「企んでるなんて酷いじゃないですか。普通の買い出し、子供でもできるお使いですよ?」
    「貴方のお使いは普通の子供に買いに行かせるような品とは思えないのだが」
    「行き先は最近街にできたという新しいケーキ屋。既に注文と支払いも済ませたから受け取るだけ。正真正銘ただのお使いですよ」
     どう考えても怪しいお使い。いやお使いに限らずこの師匠からの普通は普通ではないのだ。
    「あ、もしかして迷子ですね、迷子になりたくないから駄々をこねているんですね。それなら仕方が――」
    「行ってこればいいのだろう」
    「わかればいいんですよ。あ、転移魔法は禁止です。お使いなんだからちゃんと自分の足で行ってこないと。タイムリミットはニ刻後で」
    「はっ!?」
    「ちょっと走れば間に合うはずですよ。あ、お使いなんだから品物を崩したりしたら駄目ですよ。私のお金無駄にしませんよね?」

     ちょっと走ればだって?
     無茶を言う。指定されている店は連日列になるほど有名なところだ。おそらく並んで買うだけで一刻使う。
     移動に使えるのは往復で一刻、ここからだと街まで全力で走ってようやくの距離、さらに帰りは同じ速度でケーキを崩さないようにしろと?

    「魔術師なんだからそれくらい当然ですよ? むしろ血反吐を吐くまで走らせないんだから優しいと思いませんか」
    「……普通は弟子に血反吐を吐くまで走らせるような事はしないと思うのだがね」

     そう返したらアスモデウスは笑みを深める。こいつの考えなんて分かりはしない。けど、その顔は何かを懐かしむような……

    「ほらほら、のんびりしてたら時間だけが過ぎちゃいますよ。ちゃんとおやつの時間に間に合わせてくれないと」
     これ以上言い合うのも時間と精神の無駄だ。
     舌打ちをひとつしてお使いという名の修行……もとい拷問へと駆け出した。



    「これでいいだろうっ」
     叩きつけてやりたい衝動を抑えて、ケーキをテーブルにそっと置く。せっかく間に合わせたのにここで崩したら水の泡だ。
    「ちゃんと崩さずにお使い出来たじゃないですか。ギリギリお茶が冷める前、まあ及第点ですかね」
     なら帰ってきてからお茶を入れたらいいだろうとか思いながら……よく見るとテーブルにあるお茶は2人分で。
    「ほらほら、ぼーっと立っていないで、弟子なんだからちゃんとケーキの毒味もしてくれないと。何のために2個あると思っているんですか?」
    「平気で人のものを取るくらいだから2つ食べると思ったのだが。そもそも貴方は毒なんかでは死なないだろう」
    「まったく、うちの弟子は捻くれ者なんですから。ほら冷める前にさっさと座って食べてください」
     相変わらず何を考えているのかわからない。毒なんて入ってないのは分かりきっているくせに。
     けど、その日アスモデウスと食べたケーキはなんだか優しい甘さで……まあ流石行列のできる店だなと思った。

     それはいつも通り鬼畜で、意味不明な師匠と一緒にケーキを食べた。
     ――ある年、乙女の月の14日の出来事。
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    シャスの行動と感情、原作小説で明記されてるのが、駆け寄り、抱きかかえる→生きていられるとは思えない→青ざめ→助かるかもしれない…で。その間の感情の動きは推察する事しかできないわけですが…ポイピクはキャンプションに書ける寝言の文字数が少ないので後日ピクシブにも上げます…
    【シュレディンガーの恋】
     


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     扉を開けば、無人の室内は墨を流したような闇に沈んでいた。
     
     深夜。
     
     灯した明かりに白々と浮かび上がる床には、一面の血痕も、ソファの残骸も既にない。
     すべて元どおり。
     襲撃の名残りを感じさせないその様子に、先刻の出来事は、悪い夢だったのではないかと、一瞬馬鹿な錯覚が湧くが、そんな筈もない。
     馴染んだ部屋は、今はどこかしらシャスティルによそよそしかった。
     
     理由はわかっている。
     まだヒヤリと腹の底にわだかまる、冷えた鉛のような感情の正体は恐怖だ。
     侵入者は跡形もなく姿を消し、その後の足取りはつかめていない。
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