出会いは喜び 失うは地獄 人気のない森の小屋、そこでオリアスは長い人生の中でも重要な瞬間を迎えている。
出産――それは医学や魔術の発展はあれど絶対安全なんてない。本来なら周りの人間の力を借りておこなうものだ。
けれど、助けてくれる仲間いない。愛する人もいなくなってしまった今、自分はひとりっきりだ。
それでも……どんなに大変だろうとも今お腹にいる子は絶対に産むと決めている。
段々陣痛の感覚は短くなる。魔術を使えば痛みは軽減出来るだろうし、それもひとつの手段だとは思う。
けどあの人のたったひとつの忘れ形見が産まれようとしているのだ。ならその痛みも誤魔化さずに受け入れたい。
ひとりで何刻も耐え抜き、そして――
「ふえ、ふええ……」
1534