バレンタインディの前に「まずそもそもの問題なのだが」
「うん?バレンタインデー?」
「そう、マスターの国ではバレンタインには女性から好きな男性に、ホワイトディに男性からのお返しをするらしいじゃないか」
「職場でのばら撒きや友達同士で贈りあう習慣も一般的になっていたようだネ」
「いや、その話は今はしなくていいから!」
微妙に話を逸らそうとしたのを感じ取られたようだ。
恋人関係になって少し経つものの。生前含め色恋沙汰には関わりが無かったせいか、この手の話題をストレートにぶつけてこられるのは多少こそばゆい。
それを乗り越えて話題を突っ込んでくる彼が、自分にはちょうどいいのかもしれない。
「つまり、肉体的には男同士の我々の場合の話だヨ!」
さも重要なことだと言わんばかりに一臨の姿のヤングなモリアーティは両手をこぶしにして握り締め、ぶんぶんと上下に振って見せた。
「当日にお互いに贈りあうのか、どちらかが贈ってホワイトディに贈られた側がお返しをするのか!ダヨ!」
「なるほど」
自身の事に関しては計画通りが好きな2人である。決めておいて損はないだろう。
「流石に何を贈るのかまでは自分で考えてほしい所だが…」
「え…? 折角なら<僕>が欲しい物を贈りたい所だが…」
「これは課題だヨ。まずは君からだ。当日までに私が何を受け取ったら喜ぶのか、考えてくれたまえ」
我々の個を祝う誕生日は分からないが、ニホンは良い国だネ。毎月のように恋人たちを盛り上げるイベントに溢れている。
さて当面はバレンタインデーだ。当日まで、私の事ばかりを考えてもらおうじゃないか。
Raishi 20230108,