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    つーさん

    @minatose_t

    辺境で自分の好きな推しカプをマイペースに自給自足している民。
    カプは固定派だが、ジャンルは雑食。常に色んなジャンルが弱火で煮込まれてるタイプ。
    SS名刺のまとめとか、小咄とか、思いついたものをぽいぽいします。
    エアスケブもやってます。お気軽にどうぞ。

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    つーさん

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    エンディング後の謎時空、ハドラーも親衛騎団もゴメちゃんも復活してて、ダイも普通にいるというご都合主義設定です。
    謎の遺跡を探索してくれと頼まれたアバンの使徒と親衛騎団が、入り口のトラップで別々の場所に飛ばされて即席バディを組むという話。今回はポップとシグマのターン。
    基本的に書きたいところだけ書いてます。同じシリーズは「即席バディ」タグで。

    #即席バディ
    instantBuddy
    #ポップ
    pop
    #シグマ
    sigma
    ##ダイ大

    謎の遺跡 SIDE:次兄&騎士 突然現れた謎の遺跡を調査して欲しい。そう請われた大勇者アバンは、自らの弟子である使徒(と何故か当たり前のように混ざってきたパプニカの王女レオナ)と共にその地へ向かった。また、向かったのは彼らだけではない。彼らと共闘する形で、ハドラーとその配下である親衛騎団もその地へ足を踏み入れている。
     どう考えても過剰戦力であろう、というのが皆の共通認識だった。「このメンツで行くとか、無駄に豪華すぎません?」と正直に口にしたのはポップ。その言葉を否定することは誰にも出来なかった。
     それでも、人知及ばぬ謎の遺跡の出現とあっては、念には念を入れてということなのだろう。とはいえ、誰も何も心配してなどいなかった。戦力としても、知識としても、何一つ不安要素などない12人なのだから。
     ……そう、彼らにとって唯一の誤算は、遺跡に足を踏み入れた瞬間に強制転移の罠によって全員がバラバラの場所へと飛ばされたことである。防ぐことが不可能なそれは目映い光で彼らの視界を埋め尽くし、そして、この遺跡の各所へと彼らを転移させたのだった。

    「いやいやいや、何でこうなるんだよ……!魔法力の気配なんて何にもなかったぞ……!?」
    「恐らくは、遺跡に入った者は確実に転移させられる性質なのだろう」
    「どんな性質だっつーの。そんな面倒なのがあったら、外に出られるかも怪しいじゃねぇか」
    「存外、出るときは無反応なのではないかな」
    「……それはそれで腹立つなぁ……」

     ふてくされた顔でぼやくポップの傍らで、シグマは口元にゆったりと笑みを浮かべている。この辺りは性格の違いだろう。しかし彼らにはある共通点があった。
     それは、冷静に周囲を観察して判断する思考だ。シグマは元来持ち合わせ、ポップは死線を潜り抜ける中で身につけた。知ること、油断せぬことは、何よりの武器になる。
     周囲を見渡してみても、気配や魔法力を探ってみても、自分達以外の存在を確認することは出来なかった。とはいえ、仲間達が容易く破れるとは思っていない。彼らが無傷で転移させられただけならば、仲間達も同じ状況だろうと判じるのは早かった。

    「現在地の確認が出来りゃ一番だが、多分無理だな。ここを起点に周囲を探索して皆を探しつつ、最奥もしくは入り口を探すか」
    「それが一番無難だろうな。さて、何が出るか」
    「何で楽しそうなんだよ、アンタ……」

     がっくりと肩を落とすポップに、シグマはふふふと軽やかに笑った。常に冷静沈着を心がける騎士だが、今のシグマはこの状況を楽しんでいた。主がどうこうなるとは思っていないし、兄弟達についても同じこと。
     そんな彼の心を弾ませているのは、ポップの存在だ。初対面のときから我が好敵手と認めた相手である。己の命を奪った相手でもあるポップのことを、彼は誰より認めている。だからこそ楽しげなのだ。

    「君と共闘するというのが楽しくてね」
    「そんなことで楽しそうにしないでほしいんだけどなぁ……」

     今はそれどころじゃねぇだろ、とポップはため息をつく。けれどそれ以上は特に文句も言わず、腹をくくったのかゆっくりと歩き出した。立ち止まっていても仲間たちとは合流出来ないので、シグマもその後に続く。
     壁面は、入り口と特に材質に違いは見られなかった。硬質な石造りで、足下も石だ。大理石ではないが、カツンカツンと足音が響く。二人分の足音だけが響く廊下を彼らはゆっくりと歩いた。
     石の材質が特殊なのか仄かに光を放っていて、歩くのに苦労はしない。なので人間のポップでも気にせず歩けている。

    「とりあえずこの辺は何の変哲もない廊下ってところかな」
    「ふむ、確かに目立った仕掛けも特にはなさそうだ」

     床、壁、天井へと視線を向けながら二人は言葉を交わす。その会話の通りに、目立った何かは見あたらなかった。また、別の場所に繋がる分岐も見あたらない。一直線の廊下だ。
     周囲への警戒は怠らないままに、ポップが一歩足を踏み出した。瞬間、シグマの腕がポップの身体をつかんで引き寄せる。

    「ポップ!」
    「うぇ……!?」

     驚愕の声を上げるポップの耳に、何かがぶつかる甲高い音が聞こえた。カン、と音を立てて地面に落ちたのは、矢だった。その矢を弾いたのは、ポップの身体を抱き寄せたのとは逆のシグマの腕だった。オリハルコンに弾かれた矢は、鏃がへしゃげていた。
     それはつまり、それだけの速さで飛んできたということだ。ごくり、とポップは息を飲む。シグマに引き戻されなければその矢は、ポップの身体に突き刺さっていたに違いない。
     さぁっと青ざめながら、ポップは自分を腕に抱くシグマを見上げた。前方を鋭く見据えていたシグマは、追撃がないことを確認した上でポップに視線を向ける。怪我がないのを確認したのか、その口元が笑みの形に変わる。

    「怪我はないかね?」
    「おう……。助かった」
    「罠があったようだが、何か気づいたことは?」
    「いや、ねぇよ。魔法力は感じなかったし、スイッチを触った感じもしない」
    「ふむ……。通れば発動するタイプだろうか」

     試してみよう、とシグマが一歩踏み出す。警戒しながらであるし、後方に控えるポップも周囲を見渡している。しかし、特にこれといったことはない。首を傾げながらポップの傍らに戻るシグマだ。
     今度は俺が、とポップが足を踏み出した。いつでも庇えるようにシグマも少し後ろを歩く。しばらく進んで、先ほどと同じようにシグマがポップの身体を引き寄せ、飛んできた矢を弾いた。

    「サンキュ」
    「構わない。しかし、何故私のときは反応せず、君にだけ反応したのか」
    「アンタと俺の違い、ねぇ……?」

     そこでポップはしばし考え込む。シグマは元々、オリハルコン製のチェスの駒から生み出された魔法生物だ。一度滅び、復活してからは、他の親衛騎団の者達共々メタルスライムなどと同じ金属生命体へとなっている。そういう意味では、命を持つ者としては同じだ。
     だが、決定的に違うところがある。オリハルコンの金属生命体であるシグマには、体温はない。今も、触れて分かるのはひやりとした金属の感触だけだ。
     そこまで考えて、ポップはハッとしたように顔を上げた。俯いてぶつぶつ考え込んでいたところからの突然の動きだが、シグマは特に何も言わなかった。彼はこの、普段はお調子者の魔法使いの少年が、大魔導士を継承するに値する優れた使い手だと知っているのだ。

    「ちょっと試してみる」

     そう告げて、ポップは指先に小さな火を生み出した。火炎呪文だ。その小さな炎を、ぽいっと前方に向けて投げる。無造作な動きだった。
     そして、彼らの視界でその炎はすぐさま消えた。……どこからか飛んできた矢を受けて。

    「どういうことかね?」
    「おそらく、温度だ。一定の熱を持った何かが通ると矢が降ってくるんだろう」
    「……なるほど。私に反応しなかったのは、そういうことか」
    「おう」

     そこで罠の仕組みは理解できたが、解除方法などは分からない。そもそも、矢が飛んでくる方向もバラバラだ。先ほどまでとも違う方向から飛んでくる。これでは発動前に罠を潰すのも難しい。
     考え込むポップの傍らで、シグマが静かに口を開いた。

    「ポップ、連続で魔法を放ってみてくれないかね」
    「連続で?」
    「あぁ。罠の再充填にかかる時間を確認したい」
    「……了解」

     真っ直ぐと前を見据えるシグマの視線を追い、ポップはにたりと口元に笑みを浮かべた。器用に人差し指と中指に炎を灯し、連続してそれを投げる。素早く動かした炎の一つ目は矢を受けて消え、すぐ後ろを追尾した炎はその先で矢を受けて消えた。
     見上げてくるポップに頷いて、シグマはもう一度というように前方へ視線を向ける。ポップは心得たと言わんばかりに、同じように二発の炎を放つ。……ただし今度は、先ほどよりも感覚を空けて。
     それを何度か繰り返し、一つの罠が再充填されるまでの時間を割り出した。体感にしておよそ、五秒。……なかなかに回転の速い罠である。
     
    「マジかー……。良い案だとは思ったけど、流石に短すぎるだろ……」
    「君が魔法を放ってから走り抜けるのは無理そうだな」
    「無理だなぁ」

     ポップは己の身体能力を知っている。決して貧弱ではないが、この状況で無傷で罠を突破できるほどの速度が己にないのは分かっている。

    「それでは、私が君を抱えよう」
    「は?」
    「身体の前で抱えていれば矢が飛んできても庇いやすい。君は前方に向けて炎を放って罠を発動させてくれれば良い」
    「いやいやいや、まてまてまて!冷静になんちゅーことを言うんだ、アンタは!」
    「……何か、いけなかったか?」

     最良だと思うのだが、と大真面目に問いかけてくるシグマに、ポップは脱力した。何が悲しくて好敵手と呼んでくれる相手に抱えられなければならないのか。ポップが感じた葛藤を、シグマは微塵も理解していなかった。生まれが魔法生物なのでその辺は若干ポンコツなのが親衛騎団のお約束である。
     思春期の男のプライドを語っても通じないのだろう。「うー」とか「あー」とか言いながら、ポップはしばらく唸る。唸って、そして、大きく息を吐き出した。
     次の瞬間シグマを見上げた眼差しは、覚悟を決めた男のものだった。己のプライドと、仲間と合流するという目的を天秤にかけた結果だ。

    「今はこの場を切り抜けるのが先だもんな。頼む」
    「頼まれよう。安心したまえ。君には傷一つ負わせるつもりはない」
    「……アンタ本当に、何なんだ……」

     騎士の駒だからってそんな風にならんでも良いだろ……、と疲れたようにぼやいた後、ポップはシグマの前に立つ。軽やかに片手で抱き抱えられて、「……俺、もうちょっと鍛えようかな」と呟いてしまうのは、年頃の少年としては当然の感想だったのかも知れない。
     ポップを片手に抱えたシグマは、逆の手をいつでも動かせるようにしている。矢が飛んでくればそれで弾くつもりなのだろう。シグマの腕を理解しているポップは、守られている安心感を感じながら指先に炎を灯した。
     一刻も早くこの場を切り抜けて、仲間達を探すのだと決意して。

    「そんじゃ、頼むぜ、シグマさんよぉ!」
    「任せたまえ!」

     ポップが前方に炎を放ったのを見た瞬間、シグマの足が地面を蹴る。凄まじい速度で移動されても、シグマの腕でしっかりと固定されているポップの身体はさして揺れなかった。その安定した状態で、ポップは次から次へと炎を放つ。
     放つ先から、炎は矢を浴びて消える。消えた地点をポップもシグマも認識している。そして、次の矢が準備される前にシグマがそこを走り抜ける。前を見据えて駆け抜ける彼らの顔には、余裕すら浮かんでいる。

     奇妙な遺跡の探索は、まだ、始まったばかりである。

    FIN
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