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    つーさん

    @minatose_t

    辺境で自分の好きな推しカプをマイペースに自給自足している民。
    カプは固定派だが、ジャンルは雑食。常に色んなジャンルが弱火で煮込まれてるタイプ。
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    つーさん

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    卒業前に盛大に拗れるガプアガ、その5。年齢操作です。
    無駄に文字数増えそうで完成できるか怪しいので、書けた分だけ供養に投げます。タグでシリーズ管理してます。
    無自覚ガープと自覚ありなので距離を取ろうとするアガレスという話です。

    #ガプアガ
    gapuaGa.
    #菫青石は砕けない
    cordieriteIsUnshatterable.

    菫青石は砕けない5 去って行くアガレスを、ガープは追わなかった。追うことが出来なかった。見たこともなかったアガレスの顔が、聞いたこともなかった声が、意識から離れてくれない。
     あんな風に、絶望の全てを詰め込んだような笑顔を見たことはなかった。あんな風に、号泣していると思しき声を聞いたことはなかった。今にも泣きそうに潤んだ瞳の、縋るようでありながら怯える輝きを見たことなど、なかった。
     何もかもが見知らぬもので、ただ一つガープの内側に残ったのは、アガレスが自分の元から去って行ったという事実だった。
     好きだと言われた。それが、いわゆる恋愛感情であろうことは察することが出来た。そうでなければ、アガレスはあんな風に血を吐くように叫ばなかっただろう。特別の意味が違うという言葉も、それを裏付けていた。
     だが、アガレスが告げた好きという言葉は、今まで聞いてきたそれとはまったく違った。幾人かの女子悪魔に告白されることはあったが、彼女達が口にした好きという言葉とは温度が違う。彼女達のそれはどこか温かく、欲に満ちてはいたが全体的に煌めいていた。
     しかし、アガレスが告げた言葉は違う。アレはまるで、罪状を吐露する咎人のような言葉だった。抱いた感情が罪なのだと言いたげな、己の愚かさを呪うような声だった。その美しい顔を絶望に染めて、アガレスは己の抱いた感情を許されぬものだと言うように告げた。
     ガープには、分からなかった。何故アガレスがあんな顔をして、あんな風に自分に好きだと告げたのか。何故、好きと言いながら自分から離れる道を選ぶのか。何一つ、分からなかった。
     彼にはそういうところがある。感情の機微に疎い。誰かと仲良くなりたいと思うが、加減が分からない。感情というものに対して、どこか欠陥を抱えているのだと自覚はあった。
     だから、今、ガープが何より重要視したのは、アガレスの告白ではない。恋情を吐露されたことは、何故だろうという疑問と共に頭の片隅に追いやられた。それぐらいには、重要度は低かった。
     彼にとって重要だったのは、アガレスが自分から距離を取る道を選んだことだ。あの様子では、もう二度と、自分の傍らに相棒として立つことすらないような雰囲気だった。お前と決別すると言われたように思えた。
     思えて、そして、ガープの顔から表情がごそりと抜け落ちた。身体の奥底から、何かがこみ上げてくる。暗く、重い何かがガープの心を塗り潰す。
     そして、心の奥底の、厳重に封じられていた蓋がこじ開けられる。その蓋を押しのけるようにこみ上げてきた何かを、思わず、口にした。

    「アガレス殿は、拙者のものでござるのに……?」

     何故?と不思議そうにガープは呟いた。その声に感情はのらない。その顔に感情は浮かばない。まるで悪周期の悪魔達のように、昏く淀んだオーラを発しながら、ガープは不思議そうに首を傾げていた。
     口にして、その通りだと理解した。彼は自分のものだ。生まれて初めて手に入れた、自分の傍らに居続けてくれた、大切な大切な、自分だけの相棒。他の誰かに渡すことも、自分から離れることも、決して許せるわけがない。
     今までずっと側にいたのに、今更どうして自分から離れようなどと思ったのか。彼は既に自分のもので、自分は彼のもので、自分達は共に在るべきで、それはこれからも変わらない筈なのに、と。
     己の思考を、ガープはおかしいとは思わなかった。ずっと側にいた。誰より大切にしてきた。アガレスもそれを受け入れてくれていた。今更、離れられると思う方が間違っている、と。
     そこまで考えて、ガープは我に返った。あぁなるほど、と理解する。自分はずっと、自分自身の気持ちにすら、気付いていなかったのだ、と。

    「アガレス殿は、拙者のたった一人だけの、特別であったのか」
     
     特別、と呟いた声音に含まれるのは、それまでとは違う温度だった。お仲間として、相棒としての特別ではない。唯一の、そう、それこそ伴侶を示すような意味での特別だ。
     あまりにも自然に、ずっと、アガレスはガープの側にいてくれた。どんなガープでも受け入れてくれた。だから、その感情はガープが気付くより前に芽吹いて、けれどガープが鈍感なこともあって心の奥底にずっと眠っていたのだ。
     そんな感情は、別に必要なかったからだ。アガレスと共に過ごす時間には、何の影響もなかった。むしろ、アレコレ無駄に考えてしまっては楽しい時間が過ごせなかっただろう。そういう意味では、ガープがその感情の発露に気付かなかったのも当然だった。
     他の誰かならば大事に掬い上げて育て上げただろう感情を、ガープは今は別にいらない何かだと心の奥底にしまいこんでいた。その感情を育てなくても、アガレスの側にはいられた。そんな余計なものがなくても、ガープはアガレスの一番だった。だから、面倒なことは後回しになっていたのだ。
     だが今、ガープは自覚した。認めた。自分にとってアガレスがどういう存在か、自分が彼にどういう感情を、欲を抱いているのかを。認めてしまったらもう、かつてのようには戻れない。
     
    「アガレス殿が拙者を好きで、拙者がアガレス殿を好きならば、離れる必要などござらぬ」

     満面の笑みを浮かべてガープは呟いた。何だ、自分達は両思いであったのか、と。今の今まで気付かなかったが、それでも抱えた感情も、その重さも同じであるに違いない。やはり自分達は相棒であるのだ、と。
     アガレスの抱えた悲哀も、決意も、傷ついてきた心も、何一つ分かっていないガープ。分かるわけがない。彼にはそんな風に他人の感情を理解することが出来ないのだ。だからこそ今日まで、アガレスの気持ちに気付かず、自分自身の感情にも気付いていなかった。
     まるで何か悪いことであるように告白して、苦しげな顔をして去って行ったアガレスを思い出す。明日、迎えに行ってきちんと自分の気持ちを伝えよう。誰より大切で、大好きで、必要で、愛おしいのだと。
     伝えれば全てが終わるとガープは思った。それだけで良いのだと。
     心はそんなに単純なものではなく、長年ガープの自覚の無さを間近で見てきたアガレスがどう思うかなど、考えてもいない。自分が言えば伝わると思い込んでいる。それは一種の驕りで、……それほどにアガレスがガープの側で彼を優先してきた証なのだと、ガープはまだ、気付いていなかった。
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    つーさん

    MOURNING卒業前に盛大に拗れるガプアガ、その3。年齢操作です。
    無駄に文字数増えそうで完成できるか怪しいので、書けた分だけ供養に投げます。タグでシリーズ管理してます。
    無自覚ガープと自覚ありなので距離を取ろうとするアガレスという話です。
    菫青石は砕けない3「……何で」
    「ん?何がでござるか?」
    「何でここにいるんだよ、お前」

     眉間に指を押し当てて皺を伸ばしながら、アガレスは面倒くさそうに問いかけた。ここはアガレスの実家で、当たり前みたいな顔をして玄関前にいるのは、ガープだ。アガレスの問いかけに、きょとんとしている。
     見慣れた、見慣れすぎた、どこまでも他人との間合いが分かっていない剣士の、ポンコツな姿である。

    「アガレス殿に会いたくなったでござる!」
    「……明日学校で会うだろうが」
    「そうでござるが、明日は学校に行っても別行動でござるし、今日は家にいると聞いたので」
    「俺は、休みの日は家でのんびりしたいの。知ってるだろう」
    「そうでござるが……」
    「何だよ」

     別に何も間違っていない主張をするアガレスに、ガープはしょんぼりと肩を落とした。少しずつ、少しずつガープとの距離を取ろうと努めているアガレスにとって、休みの日に押しかけられるのは困る案件だった。気持ちが揺らぐ。
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