Bet on you①「そうだお前、明日から7連勤な。」
「っ?!!」
紫煙を燻らせながら「今日もミシディアうさぎは可愛いな」くらいの軽いテンションでクソオーナーに相変わらず労働基準法完全無視の勤務日程を提示され、既に5日間の連勤を終えて帰ろうとしていた俺は凶悪なティラノサウルスの咆哮よろしくブチ切れた。うさぎ燃やして食うぞ。
そう、ここはこの国屈指の高級ホテルリゾート『ブラックジャック』に存在するカジノのオーナー室。目の前にいる優男の風貌に見合わない厳めしい傷が顔中に走る男に呼び出され足を運べば冒頭の言葉を浴びせ掛けられた。
「ふざけんな、今日までと足して12連勤じゃねえか!」
「この間より楽で良かったな。」
「そういう問題じゃねえぇぇ!!」
しれっと真顔で放たれた言葉に俺の堪忍袋の尾が切れた。この間、というのは国外から来た富裕層の年配女性客方に気に入られた俺が15連勤、うち10日間徹夜(5日目でトラブルにより意識強制シャットダウン)させられた時の事を指す。あれ以来伝説扱いされ、奥様方にもてはやされていた事も混ざって裏でレジェンドマダムキラーと呼ばれているのをこの間ロッカールームに入ろうとした時に聞いてしまい回れ右してフロアに戻った。後でそいつらのロッカーの鍵に仕込みをして開けられなくしておいた。
「まあそう怒るな。お前にも関係あんだよ、今回の件は。」
「・・・んだよ。」
出勤に関し諦め半分に会話の続きを促すように視線をやれば、目の前の男はシガーをアッシュトレイに置くとすい、と紫水晶を思わせる眼差しを鋭く細め、机の上に手を組み言った。
「セリス=シェールが狙われた。」