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    betsuno_nanika

    @betsuno_nanika

    ロクセリという鳴き声のやつです

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    betsuno_nanika

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    カジノシリーズ第二弾②そろそろ名前を付けたい。

    Bet on you②「なっ…!」
    「落ち着け。まだ直接的な被害は出てねえ。」

    奴は一目で上質と分かる光沢のある布地で仕立てた派手なスーツの内ポケットからスマホを取り出しながら続ける。

    「SNSで変な騒ぎになってて見に行ったらこれだ。」

    血管の浮き出た神経質そうな青白い手がスマホを操作し、その画面を俺に突き付けてくる。見覚えのある青いチョコボのシルエットが特徴的なSNSは俺もアカウントは所持しているくらい一般に広く利用されているものだった。白い画面にはとあるユーザーの呟きが表示されている。






    『7日後にブラックジャックのセリス=シェールを殺す』



    「殺害予告だ。」

    瞬間、目の前の男のスマホをひったくるように奪い、そいつのアカウントをタップする。デフォルトの灰色をした人型のアイコンにその呟きのみという言わば完全に捨てアカウントだ。おい人様のスマホ勝手に触ってんじゃねえ!と近くからがなり声が聞こえ我に返る。

    「人殺しそうな目で俺を睨むんじゃねえよ。やるならそいつだろ。」

    やれやれ、と声がしそうな表情を浮かべながら殺気立った視線を物ともせず俺の手元からスマホを取り返し、胸元のチーフを引き出しこれ見よがしに拭いている。その嫌味な姿を目にしていたら頭に上がった血がすっと下がってきて非礼を詫びた。

    「わりい。」
    「ったくあいつが絡むとすぐキレやがる。念のためてめぇのスマホにも共有してやるからこれ以上見たかったらそっちを見るんだな。」

    ちらりとこちらを見上げ、再度目を手元にある端末に落とし操作しながら告げる傷の男に問う。

    「警察には…」
    「話してある。当たり前だろ。開示請求もしてる。本来ならあんな野暮ったい奴ら、俺の船には似合わねえが事が事だ。今日からウチに配備されるが、まあ後者の方は時間が掛かるだろうよ。」

    発信者情報開示請求。web上で他者を誹謗中傷するような表現を行った発信者の情報についてプロバイダに情報の開示を求める制度だ。但し弁護士や裁判所を通じてサイト管理者やプロバイダに請求する事になるので数ヶ月は掛かると言われている。さっさと張本人を炙り出して抹殺してやりたいが短期間では不可能だ。それに比べれば警察がうちのカジノを張ってくれている方がよっぽど効果があるだろう。元々警備会社に委託してフロアには少なくない数の警備員が配置されているが、シェールさんに危機が及んでいる今、人手は幾らあっても足りないくらいだ。だとしても。

    「警察がいるとしても危ねえだろ。シェールさんには家にいてもらった方がいいんじゃねえか?家の周りも見回りしてもらって。」

    そうだ犯人が捕まるまで家から一歩も出ずに安全な所に居て欲しい。彼女が命を狙われるなんてあってはならない。恐ろしい思いなんぞ一つもしなくていい。そんな自分勝手な願いを目の前の男は一蹴するようにハッと鼻で笑って飴色をしたアンティークチェアの肘掛けに手を置き細長い足を組み替えた。

    「あいつがそんなタマかよ。自分を囮にして捕まえろとか言ってたぜ?今日は急遽休ませたがあいつは明日から出勤だ。」
    「でも危険すぎるだろ!」
    「でももだってもねえ!だから言っただろ?お前も『明日から7連勤』だって。」

    察しがわりぃな!と苛立たしげに舌打ちをされ、きょとんとする。その様が更に相手の怒りを煽ったようで、常に入っている眉間のしわが数本増えた上に、ただのスタッフならすくみ上がるであろう鋭い紫の眼光で俺を睨みながら眼前に人差し指を突き付けてきた。

    「て・め・え・が!近くで!身体張って守るんだよ!ヘラヘラしてるように見えて喧嘩が強いのは知ってる!従業員でセリスの近くにいても怪しまれねえ!うってつけじゃねえか。それに!」


    「…それに?」

    相手の剣幕に押されてぐう、と喉の奥から絞り出すようにしておうむ返しで答える。
    すると「てめえの事も分からねえのか」と心底呆れ果てた様に目の前の傷男が天を仰ぎ見、眼前にあった人差し指が下がりそのままトン、と心臓の上を指した。


    「お前セリスに惚れてんだろうが。」
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    webb11030989

    MOURNINGオペオムイベント『ロックのトレジャーハント』冒頭ムービーにセリスが出てこなかったってだけで書き散らかした、ロックにヤキモチ妬かせたいだけの妄想文。
    ストーリーでは今回のお相手まだ合流してなかったり、いろいろ雑なので即・供養。

    私の中ではオペオム世界は相変わらず頑張ってエドセリなんですが、それはそれとしてロクセリは別腹ということで😉
    トレジャーハントイベント裏 世の中には、いとも容易く他者のパーソナルスペースに入り込むのが赦されてしまう人がいるもので。

     たったいま、断りもなく右隣に腰を降ろした大柄な男もその一人。ちなみにその恋人(悲恋であったと聞いている)もまた同様だ。
    「よっ、隣いいか?」
    座ってから聞く……と思いながらも、先客であったセリスは、どうぞ、とにこやかに応じた。

     セリスはかれこれ一時間半ばかり、ぼんやりとこの見晴らしの良い丘で草むらに腰を降ろして、現実世界を限りなく精巧に模した非現実的世界を眺めていた。同じ世界の仲間たちは今日は出払っているが、新しい仲間たちにも目端の効く人が多い。そろそろ心配した誰かが様子を見にきてもおかしくはない頃だとは思っていた。ただ、その役割がこの人だったのはちょっと珍しいな、と興味深く感じたのだ。
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