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    betsuno_nanika

    @betsuno_nanika

    ロクセリという鳴き声のやつです

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    betsuno_nanika

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    カジノシリーズ第二弾④
    やったー!シェールさんが出てきたぞー!4回目でようやくヒロイン登場。どうしてこうなった。
    シリアスじゃなくてギャグなので軽ーい気持ちで読んでください。

    Bet on you④翌日。
    業務開始より幾分前に更衣室を出てスタッフルームに通り掛かると、案の定シェールさんが身支度を完璧に終え所在なさげに入り口で立ち尽くしていた。俺はいつもギリギリに部屋を出るが律儀な彼女は常に10分前行動を心掛けている事を以前より把握済みだ。よく見ているだけだ。むしろ視界に入ってくるだけだ。断じてストーカーではない。こちらに気が付くと小さな頭をぺこりと下げ、そっと近付いてくる。

    「コールさん・・・ごめんなさい。お世話になります。」
    「いやいいって。俺も近くにいてもらった方が何かあった時に対処出来るから。」

    申し訳なさそうに柳眉をハの字にして謝ってくる彼女に右手をひらひらと振って気にするなと伝え、スタッフルームに足を踏み入れた。
    ここは文字通りスタッフの休憩室となっており、食事や談話をするためのテーブルやソファが点在している。顔を俯けて後ろを付いてくる彼女の様子を訝しみながらも、少し打ち合わせをしようと適当なテーブルを見繕っていると部屋がざわめき彼女に視線が集まったのを感じ、内心舌打ちする。しまった。何故彼女はスタッフルームに入っておらず入り口にいたのか。答えはこれだった。
    渦中の人の登場に周囲の人間が向ける好奇心と恐怖と怒気がそれぞれ入り乱れ、さほど広くない部屋に充満したのを感じ、後悔した。こうなる事は容易に予想出来たはずなのに彼女をのこのこ大勢のいる場に連れてくるなんて、呑気な自分を殴ってやりたい。
    凍った空気を鋭敏に感じ取ったシェールさんの表情が固くなったのを俺は見逃さなかった。どうせすぐに場所を変えようと思っていたところだ。そいつらに一瞥くれて彼女を連れ出すように二の腕を引き、フロアへ続く廊下へと歩き出す。背後で「レジェマダに睨まれた終わった」という震えた声が聞こえたので声の主を頭の中で即座に割り出し、望み通りレテ川に流してやる事を胸中で決定した。

    廊下の角を曲がり、スタッフルームの死角に入ったところで一旦足を止める。隣に立つ人物の俯いた表情は月の光を持つ髪に遮られてうかがい知れない。彼女の心情に思いを巡らせ声を掛けあぐねていると、

    「あの・・・手・・・。」
    「ん?・・・おっと悪い!」

    おずおずとか細く指摘され視線をやれば、自分の手がずっと彼女の二の腕を掴んで歩いていた事に思い至り、慌てて白く柔らかなそれから手を離した。誰かが言っていた。二の腕の感触は某箇所と似ている、と。今それを考える時ではないぞ、ロック=コール。

    「いいえ、大丈夫です。」

    口元に手を当てそう言った彼女は俺の慌てっぷりが面白かったのか、硬かった表情が綻び少しだけ口角が上がっているようだった。

    「そうだあと敬語は無しな!これから7日間、俺たちはパートナーだからな。」

    重かった空気をここぞとばかりに払拭しようとニッ、と笑って片目を瞑って見せれば幾分緊張がほぐれたのか春の陽光のようなふわりとした微笑みが漏れ出た。

    「は・・・えーっと・・・ええ、よろしくね。」
    「そうそうその調子だ。」

    はい、と言おうとしたのを一生懸命言い直している姿も可愛らしい。・・・にしてもこのコスチューム。見慣れているとはいえ、目のやり場に困る。
    白いウサギの耳が生えたカチューシャを頭に付け、身体のラインがぴったりと浮き出るデザインの青いビスチェに黒の編みタイツ。そこに首元の付け襟やそこに付属しているリボン、手首にリストドレスが付くことによって肌を隠している面積が増えているのに艶めかしさもグッと増しているのはどうしてなのか。デザインした人間に感謝したい。
    これはあいつの可愛がるミシディアうさぎのミーちゃんがモチーフとなっていると言われているが、ミシディアうさぎってなんなんだろうな、そんな思考の逃避行が起きるほどにはシェールさんの至近距離でのバニー姿は威力があった。

    「しかし災難だな。やっぱり家にいた方がいいんじゃないのか?」

    デザインだけでも男を惑わすとんでもない代物なのに、彼女が着る事によって双方の魅力が倍では効かない程増しているのだ。
    豊かな質量のある胸元、美しい曲線を描くくびれたウエスト。そこから続く張りのある臀部はまろみを帯びて内から仄かに光っているように白いのは以前ばっちり目撃して記憶に新しい。まるで女神の様な造形が凶悪な引力でもって俺の視線を引き寄せるのを、男の矜持と鋼鉄の意志で引き剥がし、そんな不埒な事を考えているなんておくびにも出さずフロアに続く扉を見つめながら問うた。すると視界の端で月の煌めきを持つ髪がさらさらと左右に揺れ、否定の意を示した事を知る。

    「いいえ。そんな事してたらいつまで経っても犯人は捕まらないでしょう?卑劣な犯人の脅しに屈したくないの。」

    凛とした声が響き、引かれるようにそちらを向けば意志の強そうな美しい青の瞳に出会う。晴れ渡った三月の空を思わせる色に鼓動が少し早くなる。そうだ。俺は彼女の不器用と言っても過言ではないほどの真っ直ぐな心根に惹かれている。命を脅かされて怖くない人間などいない。それを押し殺してでも早く解決したい、カジノの皆に迷惑を掛けたくない、と考えているのだろう。理不尽に狙われ、仲間から冷たい視線を向けられる事になった彼女こそ被害者なのに。けれど彼女はそう言ったところで頷かないだろう。ならば俺はその手助けを全力でするまでだ。

    「不躾な質問で悪いけど心当たりはあるのか?」
    「無いわ。」

    俺の失礼な問いに気を悪くするでもなく即座に返ってきた答えに内心頷く。だろうな。品行方正で誰にでも平等な彼女が他から恨みを買うとは考えづらい。となると変態野郎の企みかと胸中で当たりを付ける。そういった輩の思考は全く分からないが、大方世間から注目されたい、彼女を自分のものにしたい、といった歪んだ欲望の末路なのだろう。想像は出来ても1ミリも共感しない。よりにもよって彼女を狙った時点で俺の中では一発アウトだ。ただで済むと思わないでほしい。犯人へのどす黒い怒りが胸中で渦巻き、険しい顔をしている俺に対し彼女が芯の強さを感じさせる声色で言った。


    「どんな相手でも一緒よ。捕まえましょう、私たちの手で。」


    涼やかに響き、犯人への恐れなど欠片も覗かせない声に心が震えた。その姿は眩しい程に気高く美しく、俺に信仰にも似た陶酔を抱かせる。
    廊下と俺達の戦場であるフロアを隔てる豪奢な扉の前まで到着したところで彼女を見遣ると、彼女の方が先に強い意志を宿した視線をこちらへ寄越していた。その事実に不意を打たれ、春色の瞳とかち合ってしまえば途端に抑えきれなくなった想いが口を緩ませた。



    「俺が守る。」


    ぽろりと心中から零れ落ちた思いはどうやら言葉となって彼女の耳に届いてしまったらしい。動揺した俺が慌てて口元を押さえれば、彼女はきょとんとした表情を浮かべ瞳を数度瞬かせたかと思うと、珊瑚の色をした艶やかな唇を引き上げた。不敵に口元へ弧を描く姿は老若男女を虜にするこのカジノの高嶺の花と謳われるだけある堂々たる姿だった。



    「守られてばかりのか弱い女じゃないわ。」


    そう鮮やかに彼女は告げて別世界へと続く扉に手を掛け、ピンヒールを高く鳴らして颯爽と歩き出した。
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    webb11030989

    MOURNINGオペオムイベント『ロックのトレジャーハント』冒頭ムービーにセリスが出てこなかったってだけで書き散らかした、ロックにヤキモチ妬かせたいだけの妄想文。
    ストーリーでは今回のお相手まだ合流してなかったり、いろいろ雑なので即・供養。

    私の中ではオペオム世界は相変わらず頑張ってエドセリなんですが、それはそれとしてロクセリは別腹ということで😉
    トレジャーハントイベント裏 世の中には、いとも容易く他者のパーソナルスペースに入り込むのが赦されてしまう人がいるもので。

     たったいま、断りもなく右隣に腰を降ろした大柄な男もその一人。ちなみにその恋人(悲恋であったと聞いている)もまた同様だ。
    「よっ、隣いいか?」
    座ってから聞く……と思いながらも、先客であったセリスは、どうぞ、とにこやかに応じた。

     セリスはかれこれ一時間半ばかり、ぼんやりとこの見晴らしの良い丘で草むらに腰を降ろして、現実世界を限りなく精巧に模した非現実的世界を眺めていた。同じ世界の仲間たちは今日は出払っているが、新しい仲間たちにも目端の効く人が多い。そろそろ心配した誰かが様子を見にきてもおかしくはない頃だとは思っていた。ただ、その役割がこの人だったのはちょっと珍しいな、と興味深く感じたのだ。
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