matching fits 「まだ長袖買ってないから、買いに行こう!」と連れてこられたルカのお気に入りの服屋。
平日なのも手伝って客もまばら。二人でゆっくりと品定めできる空間が嬉しい。
「ルカ、どっちの色が好き?」
「んー、こっちのピンクトープのほうがシュウに似合うかな?」
「僕もこれいいと思ってたんだよね。こういう色持ってないし、買ってみよう」
レジへ向かおうとするシュウからひょいと服を取り上げ、「昨日もらったプレゼントのお礼させて。外のベンチで休んでてよ」とルカが勧めた。
すでにモール内を歩き回って久しいので、少し脚が疲れていた僕は素直に従うことにした。
僕が昨日あげたのは、ほんの気持ちばかりの生活雑貨だったんだけど。ルカはとても喜んでくれた。お言葉に甘えて、服は買ってもらおう。
お店のエントランスからたった数歩離れたベンチで、秋ののどかな光の中、日向ぼっこしている猫のような気分でルカの帰りを待った。
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「あ、おかえり。買ってくれてありがとう」
ルカの影に気づいて顔を上げた。そこには、なにやら楽しそうな顔をした人が立っている。
「Ta-dah Look at this」
ルカが、店員がさぞ丁寧に詰めたであろうブランドロゴ入りのショッパーバッグをごそごそと漁る。僕の選んだピンク系の服の他に、もう一枚入っているようだ。
――落ち着いたブラウン系の色。目の前で広げられて驚いた。
「僕のと…同じ形じゃない?」
「そう!今度のデートで一緒に着ようよ!」
ルカにふさふさの尻尾が生えていたらどれだけ風を切っているか、という考えで頑張って上書きしようとしたけど、おそろいの服を着て出かけるという衝撃のほうがわずかに上回った。
「あ、うん、嬉しい…な?へへ」
でも、屈託のない笑顔で楽しみにしているルカが愛おしくて、ついついつられて微笑んでしまった。
「お腹すいちゃったから、フードコートいこ!」
またも大雑把にシャツを紙袋へ入れたのを見届け、そのルカらしい提案を飲み込みながら手を繋いだ。