A1これは、きっと、NOじゃない。
その判断が、最初は難しかった。
「なァ、火よこせや」
おもむろに、火のついていない煙草を咥えたメレヴィアがこちらを向いた。誰に向かって言っているんだろうかと一瞬考えて、考えるまでもなかったことに気付いた。この部屋には自分と彼しかいない。
「…私、煙草は吸わないのでライターなんて持ってませんよ」
「じゃあお前も吸えよ、俺よく火ィ忘れるんだわ」
「それ私に何のメリットもありませんよね……」
「この俺専属の火付け係ってワケだ、ありがたく思えよ」
「はぁ……遠慮しておきます」
なんて言ったのはいつだったか。結局あの時は安っぽいライターをそこらで適当に買って済ませたなとふと思い出す。今となっては自分も彼に負けず劣らずのヘビースモーカーだ。それにかこつけてあの男も遠慮なしに火をねだってくるようになった。もうひとりのチームメイトに申し訳がない。
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