Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 50

    いなばリチウム

    ☆quiet follow

    言紡弐で展示してました!
    デキてる司書秋の司書室イチャイチャR18(本番無し)

    ありがと、秋声くん!「はい、これも署名が必要だってさ」
    「ええ~!? まだあんの!? 無理~~~!」

     机に追加で置かれた書類、書類、書類の束。減ったと思ったら追加されて仕事のわんこそば状態。駄々っ子のように両手を上げて降参ポーズの俺に、秋声君はいつものやれやれ顔をする。

    「そんなこと、僕に言われても困るよ。大体、サボっていた司書さんが悪いんじゃないか」
    「そうだけどさ~」

     確かに、調査任務の報告書を3、4回分溜めていたり、金貨や道具の整理をうっかり数か月程怠ってネコの手と金のネコの手がごっちゃごちゃに混ざっちゃって整理に手間取ったりしたけど。いや本当に俺が悪いな。しかし、自業自得とは言え、朝からトイレ以外は座りっぱなし、食事も秋声くんが食堂から持ってきてくれたサンドイッチを片手間に食べただけで、体力的にも精神的にも疲れきっているのが分かる。窓の外はとっくのとうに真っ暗で、談話室の方から明かりが漏れているのが分かる。時折わっと笑い声があがったりして、今日もなんとなく集まった面子で酒盛りなり談義なりしているのだろう。いいなあ。俺も一杯やりたいなあと思いながら正面を向くと、処理が終わった書類を秋声くんが回収しているところだった。署名済みの書類を集めて、「え、これだけ?」と失礼なことを言っている。効率なんてとっくに落ちてるんだから仕方ない。これでもたまっていた仕事の八割くらいは数か月遅れで処理したり隠ぺいしたりして片付けたんだ。あと残ってるものも明日普通にサボらずやれば間に合うくらいの量だし。さて、残っているものといえば。

    「……秋声くん、溜まってるの、手伝って欲しいなあ」
    「僕が? いやだよ。大体、書類の類は司書さんの署名なしじゃ、」
    「あー、そうじゃなくてさあ」

     こっち来て、と手招くと、怪訝な表情を浮かべながらも書類を置いてくれる。なんてちょろくて優しい子だろう。これが太宰くんあたりだと「は? 嫌だけど」とか言ってくるので俺は普通に傷つく。しかし秋声くんは俺に手招かれるまま、机の横から回り込んで椅子の隣まで来てくれた。

    「溜まってるのはこっち」
    「っ、な」

     ずっと座っていたし、机越しに向き合ったままじゃ気付かなかっただろう。俺の股間事情には。秋声くんが目線を落としてすぐ赤くなるくらい分かりやすく、ズボンの布が持ち上がってパツパツになっている。

    「あ~あ、どうしようかな~ 仕事の続きしたいけど、めちゃくちゃ溜まってるんだよな~」
    「そ、そんな、こと、僕に言われてもっ」
    「困る?」
    「当たり前じゃないかっ」
    「秋声くんなら手伝えるのに?」

     ちらっ、ちらっ、と見上げると、ぐぬぬ、みたいな顔をしていて可愛い。

    「雑務を何でも処理してくれる秋声くんなら、手伝ってくれると思ったんだけどな~」

     他の子呼んじゃおうかな? なんてわざとらしく溜息を吐くと、秋声くんはやっと俺の目を真っすぐに見た。決心と、戸惑いと、ほんの少しの悲しみが見える。

    「なんて、冗談だよ。こんなこと言うの、秋声くんだけだって」
    「……本当かなあ」

     君だけだよ、と言うと秋声くんは分かりやすくほっとしている。横の髪を耳に掛ける動きはもう慣れたものだ。

    「口でしてくれるの? 珍しいじゃん」
    「……手だけだと、司書さん中々イかないから……」

     露わになった耳が真っ赤になってる。本当は秋声くんだって、手でするより喉の奥を突かれる方が好きなんだよな。俺は優しくしたいんだけど。

    「ありがと。秋声くんは本当にやさしいなあ」
    「っ、こんなの、僕だって、きみだけなのに」
    「ん?」
    「何でもない……」

     もそもそ言いながら、秋声くんは俺の足の間に座り込むと、たどたどしい手つきでスラックスに手を掛け、ゆっくりとチャックを下ろしていく。下着に指がかかり、ずらされると勃起しきった性器が顔を出す。限界だったそれは勢い良く反り返って秋声くんの鼻先をぺちんと叩いた。眉を顰めて俺を睨み上げてくる顔にはじわりと涙が滲んでいて全くこわくない。

    「変態……」
    「そうだね。変態だから、秋声くんが慰めてくれて助かるよ」

     こんなやりとりも別に初めてじゃないので、秋声くんはそれ以上文句を言わず、勃ちあがったペニスに顔を寄せる。片手で根本を支えながら、先端をぱくりとくわえた。生暖かい粘膜に包まれると、それだけで腰が跳ねそうになる。気持ちいい。

    「ん、んむ……」

     秋声くんが唾液を絡ませながら頭を上下させる度、じゅぶ、じゅぶ、と水音が響いて、それが段々派手になっていく。 小さな唇から自分のものが出入りしているのを見ると、なんとも言えない気分になった。ああ、一生懸命でかわいいなあって思うし、優しくて真面目な子に卑猥なことをさせているっていう背徳感もある。

    「ふっ……ぅ、んう……」
    「っ、あ、あー…いい、いいよ……秋声くん……ッ」

     たまに歯が当たるけど、それも刺激になるくらいだ。下手ではないけどうまいわけでもなく、それを秋声くんがしているという事実に堪らなくなる。唾液でてらてらと光る性器と唇。濡れそぼった先端から秋声くんの唇が竿に滑り、裏筋のところまで丁寧に舐め始める。

    「んぁ、はふ、ん、ンぅ」

     頬を上気させながら一生懸命な秋声くんの柔らかい髪に手を伸ばす。撫でてみると、ちょっかいかけるなとばかりに眉根を寄せられた。べたべたになった唇が開いて、赤い舌が覗く。また先端が口に含まれ、今度は口をすぼめてじゅる、と吸われて、竿の部分は手で扱かれた。

    「うぁ、それ、やばい……っ」

     じゅる、じゅるる、と下品な音が鳴って、窓ちゃんと締めてたかな? と少し不安になる。でも性器が喉で扱かれる快感で、そんな些細なことはどうでもよくなった。腰の奥がぞくぞくして、性器に熱が集まるのが分かる。

    「秋声く、ごめ…っ、ちょっと、我慢できない…かも」
    「ん、ぐッ!?」

     撫でていた秋声くんの後頭部を押さえつけ、ペニスを喉奥に押し込んだ。苦しそうな悲鳴が上がるが、そのまま腰を揺らして何度も突き上げる。椅子の軋む音と俺の荒い息、それから秋声くんの苦悶の声が部屋に響く。

    「っは、すご、秋声くんの喉、きもちい……っ」

     喉奥で扱くように腰を動かす。ぬるくてきつくて心地良い。でも秋声くんの目からはぼろぼろ涙が零れていて、手は俺のスラックスをきつく掴んでる。可哀想だけど止められなかった。

    「んぐ、ぇ、うぶ」
    「あー……イキそう、出すよ、秋声くん…っ」
    「っぐ、ん、ン~~っ!!」

     ペニスを収めたまま、腰がびくびくと震える。震える度、精液が秋声くんの喉に流れ込んでいく。全部出し切ってずるりと引き抜くと、秋声くんはげほげほと派手に咽せ返った。

    「うえっ、 げほっ、っう、おぇ……!」
    「はあっ……はは、いっぱい出しちゃったな。ごめんね」

     咳き込みながら白濁をぼたぼたと吐く秋声くんの頬を軽く撫でる。涙目で睨まれた。

    「ひどい……窒息するかと、思った……」
    「ごめんってば。でも、秋声くんだって気持ち良かったでしょ?」
    「…………」

     まだ睨んではくるけれど、素直に無言になってしまうところがやっぱり可愛い。俺はティッシュを何枚かとって、俺の出したものでべたついた秋声くんの口元を拭いてやると、大人しくされるがままだ。

    「あと掃除しとくからさ、今日はもう部屋に戻っていいよ。仕事も後は俺が署名しないとだし」
    「え、」

     スラックスを履き直しながら言うと、秋声くんは分かりやすく狼狽えた。膝に置いた手がぎゅうと袴の布を握っている。僅かに衣擦れの音がしたのは、袴の中で内腿を擦り合わせたからじゃないだろうか。本当に可愛い。可愛いけど、苛めすぎるのは可哀想かな、と思い直して、一向に立ち上がらない秋声くんの、少し乱れてしまった髪をくしゃりと撫でつける。

    「待っててくれるでしょ? 続き、したいもんな」
    「っ! 僕は、別に……」
    「したくない?」
    「……司書さんって、ほんと、意地悪だよね」

     おっと、やっぱり苛めるのはやめられなかった。だって俺の一挙一動に振り回される秋声くんはやっぱり可愛い。

    「秋声くんにだけだよ」
    「もう……調子いいんだから」

     拗ねた顔は満更でもなさそうだ。もう一押し、と髪を撫でていた手を下ろして、柔らかい耳朶を軽く撫でる。びく、と秋声くんの肩が揺れた。

    「待っててよ、ね? 秋声くんが待っててくれるって思うと、残りの仕事すぐ片付けられそうだし」
    「……本当に?」
    「ほんとほんと」

     にっこりと笑いかければ、秋声くんは少しよろめきながらも漸く立ち上がった。

    「……遅かったら、寝ちゃうからね」
    「はーい」

     ひらりと軽く手を振って見送ると、窓を開けて籠った空気を外に追い出す。部屋に備え付けの用具で軽く床を掃除して、手元の書類に手を付けることにした。本当は、今すぐに向かったっていいくらいの量の書類ではあるけれど、やっぱり俺は秋声くんに意地悪するのをやめられない。可愛い恋人を一人寝させるつもりはもちろんないが、一方で、心細くなる手前くらいまで待たせたら、秋声くんは怒るかな、また拗ねるかな、ああ、待ちくたびれて寝てしまったところに悪戯するのもいいかもなあ、と考えてしまう。

    「……早く終わらせるか」

     考えているとせっかく落ち着いたところがまた昂ってしまいそうだ。
     俺は気を取り直し、部屋で待っている秋声くんに程々に思いを馳せながら、書類に集中することにしたのだった。



    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏🙏🙏🙏🙏🙏❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤👏😭😍❤❤🇱🇴🇻🇪❤🙏💖😍😍😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

    recommended works

    Norskskogkatta

    PAST主くり編/近侍のおしごと
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀
    主の部屋に茶色いうさぎが居座るようになった。
    「なんだこれは」
    「うさぎのぬいぐるみだって」
    「なんでここにある」
    「いや、大倶利伽羅のもあるっていうからつい買っちゃった」
    照れくさそうに頬をかく主はまたうさぎに視線を落とした。その視線が、表情が、それに向けられるのが腹立たしい。
    「やっぱ変かな」
    変とかそういう問題ではない。ここは審神者の部屋ではなく主の私室。俺以外はほとんど入ることのない部屋で、俺がいない時にもこいつは主のそばにいることになる。
    そして、俺の以内間に愛おしげな顔をただの綿がはいった動きもしない、しゃべれもしない相手に向けているのかと考えると腹の奥がごうごうと燃えさかる気分だった。
    奥歯からぎり、と音がなって気づけばうさぎをひっ掴んで投げようとしていた。
    「こら! ものは大事に扱いなさい」
    「あんたは俺を蔑ろにするのにか!」
    あんたがそれを言うのかとそのまま問い詰めたかった。けれどこれ以上なにか不興をかって遠ざけられるのは嫌で唇を噛む。
    ぽかんと間抜けな表情をする主にやり場のない衝動が綿を握りしめさせた。
    俺が必要以上な会話を好まないのは主も知っているし無理に話そうと 1308

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    リクエスト企画で書いたもの
    ちいさい主に気に入られてなんだかんだいいながら面倒を見てたら、成長後押せ押せでくる主にたじたじになる大倶利伽羅
    とたとたとた、と軽い足音に微睡んでいた意識が浮上する。これから来るであろう小さな嵐を思って知らずため息が出た。
    枕がわりにしていた座布団から頭を持ち上げたのと勢いよく部屋の障子が開け放たれたのはほぼ同時で逃げ遅れたと悟ったときには腹部に衝撃が加わっていた。
    「から! りゅうみせて!」
    腹に乗り上げながらまあるい瞳を輝かせる男の子どもがこの本丸の審神者だ。
    「まず降りろ」
    「はーい」
    咎めるように低い声を出しても軽く調子で返事が返ってきた。
    狛犬のように行儀よく座った審神者に耳と尻尾の幻覚を見ながら身体を起こす。
    「勉強は終わったのか」
    「おわった! くにがからのところ行っていいっていった!」
    くにと言うのは初期刀の山姥切で、主の教育もしている。午前中は勉強の時間で午後からが審神者の仕事をするというのがこの本丸のあり方だった。
    この本丸に顕現してから何故だか懐かれ、暇があれば雛のように後を追われ、馴れ合うつもりはないと突き離してもうん!と元気よく返事をするだけでどこまでもついて来る。
    最初は隠れたりもしてみたが短刀かと言いたくなるほどの偵察であっさり見つかるのでただの徒労だった。
    大人し 1811

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    小腹が空いて厨に行ったらひとり夏蜜柑を剥いていた大倶利伽羅に出くわす話
    夏蜜柑を齧る

     まだ日が傾いて西日にもならない頃、午後の休憩にと厨に行ったら大倶利伽羅がいた。
     手のひらに美味しそうな黄色を乗せて包丁を握っている。
    「お、美味そうだな」
    「買った」
     そういえば先程唐突に万屋へ行ってくると言い出して出かけて行ったのだったか。
     スラックスにシャツ、腰布だけの格好で手袋を外している。学ランによく似た上着は作業台の側の椅子に引っ掛けられていた。
     内番着の時はそもそもしていないから物珍しいというわけでもないのだが、褐色の肌に溌剌とした柑橘の黄色が、なんだか夏の到来を知らせているような気がした。
     大倶利伽羅は皮に切り込みを入れて厚みのある外皮をばりばりとはいでいく。真っ白なワタのような塊になったそれを一房むしって薄皮を剥き始めた。
     黙々と作業するのを横目で見ながら麦茶を注いだグラスからひと口飲む。冷たい液体が喉から腹へ落ちていく感覚に、小腹が空いたなと考える。
     その間も手に汁が滴っているのに嫌な顔ひとつせずばりばりと剥いていく。何かつまめるものでも探せばいいのになんとなく眺めてしまう。
     涼やかな硝子の器につやりとした剥き身がひとつふたつと増えて 1669

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    伊達組にほのぼのと見守られながらのおやつタイム
    伊達組とおやつ


     ずんだにおはぎに色とりどりのフルーツがのったタルト、そして一等涼しげな夏蜜柑の寒天がちゃぶ台を賑わせる。
     今日は伊達の四振りにおよばれしてのおやつタイムとなった。
     燭台切特製のずんだに意外とグルメな鶴丸の選んできた人気店のおはぎ、太鼓鐘の飾りのようにきらきらと光を反射するフルーツののったタルトはどれも疲れた身体に染みるほどおいしいものだった。
     もっと言えば刀剣男士達とこうしてゆっくり話ができるのが何よりの休息に思う。
     本丸内での面白エピソードや新しく育て始めた野菜のこと、馬で遠乗りに出かけたこと、新入りが誰それと仲良くなったことなど部屋にこもることが多い分、彼らが話してくれる話題はどれも新鮮で興味が尽きない。
     うん、うんと相槌を打ちながら、時折質問をして会話を楽しんでいると、燭台切がそういえばと脈絡無くきりだした。
    「主くんって伽羅ちゃんに甘いよね」
     それぞれもってきてくれたものに舌鼓をうって、寒天に手を着ける前にお茶を口に含んだ瞬間、唐突に投げられた豪速球にあやうく吹きかけた。さっきまで次の出陣先ではなんて少し真面目な話になりかけていただけに衝撃がす 2548

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    花火景趣出たときにハイになってかいた。
    花火見ながら軽装姿の嫁といちゃつくだけ
    いつもの執務室とは違う、高い場所から夜空を見上げる。
    遠くでひゅるる、と音がしたあと心臓を叩かれたような衝撃とともに豪快な花が咲く。
    真っ暗だった部屋が花の明かりで色とりどりに輝く。それはとても一瞬でまた暗闇に戻るがまたひゅるる、と花の芽が音をなし、どんと花開く。
    「おお、綺麗だな」
    「悪くない」
    隣で一緒に胡座をかく大倶利伽羅は軽装だ。特に指定はしていなかったのだが、今夜一緒にどうだと言ったら渡したとき以来見ていなかったそれを着て来てくれた。
    普段の穏やかな表情がことさら緩んでいるようにも見える。
    横顔を眺めているとまたひゅる、どんと花の咲く音ときらきらと色があたりを染めては消える。
    大倶利伽羅の金色がそれを反射して瞳の中にも咲いたように見える。ああ。
    「綺麗だな」
    「そうだな、見事だ」
    夜空に視線を向けたままの大倶利伽羅がゆるりと口角を上げた。それもあるんだが、俺の心の中を占めたのは花火ではないんだけどな。
    「大倶利伽羅」
    「なんだ」
    呼び掛ければすっとこちらを見てくれる。
    ぶっきらぼうに聞こえる言葉よりも瞳のほうが雄弁だと気づいたのは付き合い始めてからだったかなと懐かしみながら、 843

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    重陽の節句に菊酒を作る大倶利伽羅と、それがうれしくて酔い潰れる主
    前半は主視点、後半は大倶利伽羅視点です
    『あなたの健康を願います』

    隣で動く気配がして意識が浮上する。布団の中で体温を探すも見つからない。眠い目蓋を持ち上げると腕の中にいたはずの大倶利伽羅がいなくなっていた。
    「……起こしたか」
    「どうした、厠か……」
    「違う、あんたは寝てろ。まだ夜半を過ぎたばかりだ」
    目を擦りながら起き上がると大倶利伽羅は立ち上がって部屋を出て行こうとする。
    なんだか置いていかれるようで咄嗟に追いかけてしまった。大倶利伽羅からは胡乱な目で見られてしまったが水が飲みたいと誤魔化しておいた。
    ひたひたと廊下を進むと着いた先は厨だった。
    「なんだ、水飲みに来たのか」
    「それも違う」
    なら腹でも空いたのだろうか。他と比べると細く見えても戦うための身体をしているのでわりと食べるしなとぼんやりしているとどこから取り出したのかざるの上に黄色い花が山をなしていた。
    「どうしたんだそれ」
    「菊の花だ」
    それはわかる。こんな夜更けに厨で菊の花を用意することに疑問符を浮かべていると透明なガラス瓶を取り出してそこに洗った菊の花を詰めはじめた。さらに首を捻っていると日本酒を取り出し注いでいく。透明な瓶の中に黄色い花が浮かんで綺麗 3117