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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    2月月刊主へし
    「地獄で〇〇を」やや「主命以上」要素
    過去に出した本「本丸炎上」内の本丸のその後話なのですが一応これだけで読めるようになっています。
    興味あれば「本丸炎上」もweb再録済なので読んで頂けると嬉しいです!
    該当ページはhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7728995の4P目ですがクズ審神者が色んな刀に夜伽を命じてる話なのでご注意下さい。

    地獄で〇〇を ほとんどの刀に嫌われていたと思う。
     
     最低で最悪の主だった自覚があった。そもそもなりたくて審神者になったわけではない。本丸は、俺にとっては刑務所の役割を果たしていた。審神者として政府に尽くせば、最低限の生活は保障される、そういう仕組みだ。死刑か労働かを強いられ、若かった俺は死ぬのが恐ろしくて、後者を選んだ。永遠に続くものとも知らずに。気付いた時にはもう遅く、俺の身体は人の理から外れ、ただただ同じような毎日を閉じられた空間で過ごすしか道はなかった。あんなに死にたくなかったのに、死にたい死にたいと日々願い、けれど自分で自分の命を断つことは出来ないよう縛られていた。だから、最悪の主になることを選んだ。暴力は疲れるし、人間の力で屈強な刀剣男士を傷つけられるとは思わなかったので、彼らを別の方法で辱め、傷つけることを選んだ。そちらの方が慣れていたし、楽だった。可哀想だと思う心は残っていなかった。そんなものがあったら俺は最初からここにはいない。

     刀剣男士は長く耐えたが、或る日、ついに謀反を起こした。やっとか、と思った。ほとんどの刀に嫌われている、と述べたが、一振りを除いてすべての刀に良く思われていなかった、という方が正しい。本丸は焼かれ、寝室から裸足で庭へ下りた。刀剣男士達は既に俺の支配下になく、主でなくなった俺の終わりを望んでいた。やはり、ただ一振りを除いて。

     お前はあっち側だろう、と俺を睨む刀達の方を指差した時、へし切長谷部はきょとんとして俺を見上げるのみだった。主命があって、従っていたわけではないのだとその時初めて知った。だってお前、口を開けば主命とあらばって言うから、俺はてっきり、命令には逆らわず汚れ仕事だろうが閨の供だろうが何でも言うことを聞く、使いやすい刀なんだなと思っていたのに。ああでも、思い出してみれば従順すぎる臣下にしては、眼差しがいやに熱いことが、あったかもしれない。どうだろう。今となっては、思い出したところで何が変わるわけでもないが。

     ひどい人だと、長谷部は笑い、俺もまた、想像していたのと違う結末になんだかおかしくなってしまった。刀剣男士達は、戸惑ったように動かないままだった。長谷部が、抜いた刀を俺に向けても。

    「待っていてくださいね」

     そういえば、閨でもそんな眼差しを向けられていた気がする。蕩けるようなじっとりと濡れた瞳を、初めて真正面から見つめた。

    「……はは、いつもと逆だな」

     そう答えた次の瞬間には、軽い衝撃と共に、じわりと胸のあたりが熱くなる感覚があった。国宝で貫かれた感想を、声に出せたかどうかは分からない。ただ、長谷部は満足そうに笑っていて、俺も、やっと終われる、と安堵していた。



    ---



    「……あいつ、待ってろ、って言ってたか?」


     ふと、後ろを振り返ってみる。
     やっと終われる、と最期の瞬間に思ったものの、気付いたら俺は先の見えない道を歩いている。途中で川っぽいものを渡った気がするが、あれって三途の川だったんだろうか。無意識にここまで来てしまったが、唐突に最後のやり取りを思い出してしまった。しかし、すぐに、まあいいか、と思い直す。死後の世界というものを想像したことがないわけではない。生前、褒められるようなことは何ひとつしていない俺と、付喪神のへし切長谷部。審神者である俺が死ねば、長谷部も当然人の身を保ってはいられなかったはずだが、その魂が同じ場所に行きつくとは到底思えなかった。死んで終わり、ではなかったのは少々面倒だが、俺はただ向かうしかない。この先の―――

    「――るじ、主!」

     突然、背後から腕を取られ、一人きりで歩いていたとばかり思っていた俺はさすがに驚いてつんのめった。振り向けば、そこには息を切らしたへし切長谷部が、死ぬ前と変わらず人の姿で立っていた。

    「よかった……間に合って……待っていてくださいと言ったのに、どうして先に行ってしまうんですか」
    「ああ、悪い……んん? なんでこっちにいるんだ、お前」

     ほっとしたような表情から一転して拗ねた顔になる長谷部に、俺は首を傾げる。長谷部は、今度は呆れたように首を振って、やはり笑って言った。

    「この先も、お供します。当たり前でしょう?」
    「……お前、どこまで従順な……、あ、いや、違うのか」

     ついてこいと、命じた覚えはない。けれどもう、命じることはないし、命じなくても、この刀は。

    「ずっと一緒ですよ、主」

     そうか、と俺は笑った。拒む理由が見つからない程度には、俺もこの刀を好いているのだろう。



    --地獄で待ち合わせを 完--

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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

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    「なんだこれは」
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    「ううん、この年で買うにはいささか可愛すぎるが……」
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    「いつまでもうだうだしてても仕方ない」
    意を決してうさぎに向かって好きだよという傍から見れば恥ずかしい練習をしていると、がたんと背後で音がした。振り返ると目を見開いた肥前くんがいた。
    「……邪魔したな」
    「ま、待っておくれ!」
    肥前くんに見られてしまった。くるっと回れ右して去って行こうとする赤いパーカーの腕をとっさに掴んで引き寄せようとした。けれども彼の脚はその場に根が張ったようにピクリとも動かない。
    「なんだよ。人斬りの刀には飽きたんだろ。その畜生とよろしくやってれば良い」
    「うっ……いや、でもこれはちがうんだよ」
    「何が違うってん 1061

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    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

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    MOURNING主くり

    共寝した次の日の寒い朝のおじさま審神者と大倶利伽羅
    寒椿と紅の花
     
     ひゅるり、首元に吹き込んだ冷気にぶるりと肩が震えた。腕を伸ばすと隣にあるはずの高すぎない体温が近くにない。一気に覚醒し布団を跳ね上げると、主がすでに起き上がって障子を開けていた。
    「あぁ、起こしてしまったかな」
    「……寒い」
    「冬の景趣にしてみたのですよ」
     寝間着代わりの袖に手を隠しながら、庭を眺め始めた主の背に羽織をかける。ありがとうと言うその隣に並ぶといつの間にやら椿が庭を賑わせ、それに雪が積もっていた。
     ひやりとする空気になんとなしに息を吐くと白くなって消えていく。寒さが目に見えるようで、背中が丸くなる。
    「なぜ冬の景趣にしたんだ」
    「せっかく皆が頑張ってくれた成果ですし、やはり季節は大事にしないとと思いまして」
     でもやっぱりさむいですね、と笑いながらも腕を組んだままなのが気にくわない。遠征や内番の成果を尊重するのもいいが、それよりも気にかけるべきところはあるだろうに。
    「寒いなら変えればいいだろう」
    「寒椿、お気に召しませんでしたか?」
     なにもわかっていない主が首をかしげる。鼻も赤くなり始めているくせに自発的に変える気はないようだ。
     ひとつ大きく息 1374

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    重陽の節句に菊酒を作る大倶利伽羅と、それがうれしくて酔い潰れる主
    前半は主視点、後半は大倶利伽羅視点です
    『あなたの健康を願います』

    隣で動く気配がして意識が浮上する。布団の中で体温を探すも見つからない。眠い目蓋を持ち上げると腕の中にいたはずの大倶利伽羅がいなくなっていた。
    「……起こしたか」
    「どうした、厠か……」
    「違う、あんたは寝てろ。まだ夜半を過ぎたばかりだ」
    目を擦りながら起き上がると大倶利伽羅は立ち上がって部屋を出て行こうとする。
    なんだか置いていかれるようで咄嗟に追いかけてしまった。大倶利伽羅からは胡乱な目で見られてしまったが水が飲みたいと誤魔化しておいた。
    ひたひたと廊下を進むと着いた先は厨だった。
    「なんだ、水飲みに来たのか」
    「それも違う」
    なら腹でも空いたのだろうか。他と比べると細く見えても戦うための身体をしているのでわりと食べるしなとぼんやりしているとどこから取り出したのかざるの上に黄色い花が山をなしていた。
    「どうしたんだそれ」
    「菊の花だ」
    それはわかる。こんな夜更けに厨で菊の花を用意することに疑問符を浮かべていると透明なガラス瓶を取り出してそこに洗った菊の花を詰めはじめた。さらに首を捻っていると日本酒を取り出し注いでいく。透明な瓶の中に黄色い花が浮かんで綺麗 3117

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    菊酒をのんで酔い潰れた後日、大倶利伽羅が好きだなぁと自覚しなおした審神者と日を改めて飲み直し、仲良し()するまで。
    月色、金色、蜂蜜色


    急に熱さが和らいで、秋らしい涼やかな風が吹く。
    空には満月が浮かんで明るい夜だ。
    今は大倶利伽羅とふたり、自室の縁側で並んで酒をちびちびとなめている。徳利は一本しか用意しなかった。
    「あまり飲みすぎるなよ」
    「わかってるよ、昨日は運ばせて悪かったって」
    「あんたひとりを運ぶのは何でもないし、謝られるいわれもない」
    「じゃあなんだよ……」
    「昨日は生殺しだったんでね」
    言葉終わりに煽った酒を吹き出すかと思った。大倶利伽羅は気を付けろなんて言いながら徳利の酒を注いでくる。それを奪い取って大倶利伽羅の空いた杯にも酒を満たす。
    「……だから今日誘ったんだ」
    「しってる」
    静かな返答に頭をかいた。顔が熱い。
    以前に忙しいからと大倶利伽羅が望むのを遮って喧嘩紛いのことをした。それから時間が取れるようになったらと約束もしたがなかなか忙しが緩まずに秋になってしまった。
    だいぶ待たせてしまったとは思う。俺だってその間なにも感じなかったわけじゃないが、無理くり休暇を捻じ込むのも身体目的みたいで躊躇われた。
    そして昨日の、重陽の節句にと大倶利伽羅が作ってくれた酒が嬉しくて酔い潰れてし 1657

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    寒くなってきたのにわざわざ主の部屋まできて布団に潜り込んできた大倶利伽羅
    秋から冬へ、熱を求めて


    ひとりで布団にくるまっていると誰かが部屋へと入ってくる。こんな時間に来るのなんて決まってる。寝たふりをしているとすぐ近くまで来た気配が止まってしまう。ここまできたんなら入ってくれば良いのに、仕方なく布団を持ちあげると潜り込んできて冷えた足をすり寄せてくる。いつも熱いくらいの足を挟んでて温めてやると、ゆっくりと身体の力が抜けていくのがわかる。じわりと同じ温度になっていく足をすり合わせながら抱きしめた。
    「……おやすみ、大倶利伽羅」
    返事は腰に回った腕だった。

    ふ、と意識が浮上する。まだ暗い。しかしからりとした喉が水を欲していた。乾燥してきたからかなと起き上がると大倶利伽羅がうっすらと目蓋を持ち上げる。戦場に身を置くからか隣で動き出すとどうしても起こしてしまう。
    「まだ暗いから寝とけ」
    「……ん、だが」
    頭を撫でれば寝ぼけ半分だったのがあっさりと夢に落ちていった。寝付きの良さにちょっと笑ってから隣の部屋へと移動して簡易的な流しの蛇口を捻る。水を適当なコップに溜めて飲むとするりと落ちていくのがわかった。
    「つめた」
    乾きはなくなったが水の冷たさに目がさえてしまっ 1160