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    Orr_Ebi

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    Orr_Ebi

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    初めて書いた三リョ。高校時代付き合ってた2人が再会するだけ。

    #SD腐
    #三リョ

    再会 三井寿には忘れられない男がいる。
    高校時代に少し付き合っただけの、ほんのお遊びのような恋人だった。けれど、三井の中でその男は、宮城リョータは、いつまでも心の所々を蝕んだまま消えてくれない存在だった。どうしてなのか、三井自身も分からない。
    特別顔が好みのタイプだったわけではないし、一段と気が合うわけではなかった。気が合う友人なら、この歳になってもまだ付き合いのある徳男の方がよっぽどだ。
    ではなぜこんなにも、三井の心に宮城が巣くっているのか。
     付き合ったきっかけといえば些細なことだった。
    高校3年の秋、インターハイも終わった頃。
    「男と付き合える?」みたいな話から、なぜか三井は「宮城とならいける」と答えてしまって、宮城は、「ふーん」と何食わぬ顔をしながら耳元をほんのり赤く染めていた。なんだか可愛いなと思って、赤い耳に手を伸ばして触れてみたら、宮城は蛇を見た猫のようにギャっと飛び上がって、眉毛を曲げながら三井を睨んだ。
    おや、と思った。なんだ、本当に可愛いな。
    「付き合ってみるか?」
    その時、三井は自分でも驚くほど冷静にそう言ってしまった。するっと自然に出てしまった、に近い。すると宮城は、睨みつけた目を逸らして、
    「別にいーけど」と答えた。素直じゃないな、といつもなら思うところだが、さっき触れた耳たぶがさらに赤くなっていて、三井の心はギュンと痺れた。その日から、三井は宮城の彼氏になった。
    悪くない。と付き合って2週間で、宮城との帰り道で思った。男同士で付き合うと、てっきり兄弟みたいな関係になるかもなと思っていたが、きちんと手を繋いで、キスもした。
     段階を踏んで、2人は着実に恋人になった。
     初めてのキスは、体育館の居残り練習で。三井から、ほぼ襲うようにしてした。小さい方だとは思っていたが、キスして腕の中に閉じ込めてしまえば宮城が本当に自分ものになった気がして嬉しかった。宮城も、照れながらも満更でもない顔をしていたから、この小さな恋人を一生大事にしようと思っていた。
    そう、思っていたのだ。
     宮城の方はそうでもなかったらしい。三井が卒業してからしばらくは、それなりに連絡を取っていたのに、宮城の方は勝手にアメリカ留学を決め、卒業してすぐに旅立ってしまった。
    彼氏であるはずの三井には何も告げずに。
    ほぼ自然消滅したと思っている。三井の方から何度か宮城の携帯に電話をかけたりもしたが、一度も出なかった。それは宮城の拒絶に思えた。だから5回目あたりでやめた。
     それなのに、三井はその後1年は宮城と別れてしまった事実を受け入れられず、いつか連絡があるかも、街角で出会うかもと女々しくも引きずっていた。
     もうやめよう、と思ったのは宮城と連絡が取れなくなって1年半後、大学の同級生に告白されてから。好きじゃなかった。でも、嫌いでもなかったからOKした。久しぶりの彼女は、可愛くて、きっと宮城との苦い思い出も洗い流してくれると思った。それでいい、と思っていた。
     では、なぜ突然宮城との事を思い出したのか。

     街中で、偶然宮城と出くわした。
    「三井さん?」
    それまでの街の喧騒が全て消えた気がして、三井を呼ぶ声に反応し振り向いた先には、3年ぶりの宮城の姿があった。
    「うわ、すご、偶然っすね」
    やばい、と思った。なぜならその時、三井は隣に彼女を連れていたからだ。
    「お、おぅ、宮城…」
    彼女は無言で三井の腕に絡みついたまま、三井を見上げる。誰?と聞きたげだ。
    「お久しぶりです。…彼女さん?」
    3年ぶりの宮城は、刈り上げた後頭部はそのままに上半分の髪を伸ばして後ろでくくっていた。少し日焼けして、シャープになった顔つき。体は少し筋肉がついてたくましい。オシャレなデザインのTシャツを着て、エッジの効いたジーンズボトムスと派手なスニーカーの出立だった。
    男の三井から見ても、かっこよくてオシャレな今時の若者という感じだった。
    「三井さん?」
    宮城に見惚れて、返事が遅れた。
    「あっ、うん、まぁ…」
    「まぁってなに?ひどーい」
    隣の彼女が不貞腐れて甘えた声を出した。彼女は普段は可愛いが、自分が雑に扱われるのには敏感で、そういうところだけ少し厄介だった。
    今だけは静かにしてほしい、と体を硬くしたが彼女は気づかなかったみたいだ。
    「おともだち?」
    友達?そんなんじゃない。お前よりずっと前に付き合ってた元彼だ。大事だったし好きだった。
    そんな気持ちが湧き上がったのに、三井はすぐに言葉にできず詰まる。
    「そうだよ、高校の後輩です。ね、三井さん」
    宮城の言葉にハッとして顔を上げる。
    そんな事言うな、と言いたかったのに、言った方の宮城が少し寂しそうな顔をしていて、なんでお前がそんな顔をするんだともどかしくなった。
    自分との仲を無かったことにしている事に苛立っているのに、そのくせ宮城が未練のあるような顔を見せると、じゃあなんで連絡よこさなかったんだと宮城に詰め寄りたくなる。
    「……そうだよ、高校の後輩」
    自分でも訳がわからない。ヤケクソになって言ったら、宮城が笑った。全然嬉しそうな顔じゃない。
    「ごめんねデート中に。オレいまこっち戻ってきてるからさ、三井さんまたご飯行こうよ今度」
    「……」
    またご飯?またって、3年も前だろ。ツッコミたいが、何も言えない。
    「じゃあね」
    やけにあっさりと、宮城はそれだけ言って三井らの横を通り過ぎていく。
    またもなにも、お前のいまの連絡先知らねーよ。と言ってやりたい。けれど宮城が考えているのは、もしかしたらこの場をやり過ごす事だけであって、いわゆる社交辞令というやつなのかもしれない。
    それだけか?と言ってやりたい。
    けれどいまオレには彼女がいて、宮城と4年ぶりの再会をして、向こうはまだオレのこと好きみたいで、でもオレは…
    頭がぐちゃぐちゃだった。
    彼女と歩き出す。隣で、お腹すいたーなんて呑気な声を上げているが、三井の耳には入ってこない。
    追いかけたい。
    三井の頭にはそれしかなかった。
    偶然会えたのは嬉しい。でももうこれっきりかもしれない。今度こそ二度と会えないかも。
    そればかりが三井の頭を占めてしまう。
    「ごめん」
    三井は彼女の腕を振り払って、逆方向に走り出した。
    「えっ、ちょっと」
    突然彼氏が走り出したら驚きもする。三井はそれに構わず、振り返って宮城の背中を追った。
    ほんの数メートル。まだ間に合う。
    「宮城!」
    人混みでも構わず声を上げる。特徴的な頭が振り返った。その姿めがけて走った。
    「三井さん…?」
    振り返った顔は少し泣きそうで、目元が赤く潤んでいる。
    なんだお前、やっぱりまだオレのこと好きかよ。
    宮城の手を引いた。
    久しぶりに握った手は、まだ感触を覚えている。女子よりも少し硬い指先。バスケット選手の手。
    「お前の、いまの連絡先、くれ」
    数メートル走っただけで息が上がっているのは、三井の体力のせいではなく、本当に少し興奮していてだった。勢いをつけて言いたいことを言わないと間に合わない気がした。
    「はは、ずっと変わってないよ」
    そんな焦ってバカみたい。
    無理に笑った顔をして、相変わらず素直じゃないくせに、握った手の指先にきゅっと力を込めるから、宮城も緊張しているのが分かる。
    「じゃあ出てくれよ、ちゃんと。今度こそ」
    「今度こそ…」
    復唱したその言葉が頼りない。あの日、電話に出なかったのはやはり確信的だったのか。
    「オレは、またお前を諦めるなんてしねーからな」
    宮城が俯いた。久しぶりに見たつむじ。
    「俺はずっと諦めてないよ」
    小さな声でそう言うのが聞こえた。じゃあ、今までのはなんだったんだ?と言ってやりたくなる。
    でも、それにしては宮城の様子が弱々しくて、勢いが削がれた。
    「とにかく、電話するから。出ろよ」
    うん、と頷いた宮城の顔はやけに幼くて、居た堪れなくなる。
    宮城の手を離した。
    そんな名残惜しそうな顔をするな。オレだけに見せていた、可愛い顔で見上げるな。
    そう思ったけれど、今の三井では何を言っても薄っぺらな言葉に聞こえると思って言うのをやめた。
    「早く彼女のとこ戻りなよ」
    また素直じゃない言葉。
    今日だけは、それも許してやる。オレにもまだ準備ってやつがあるから。
    「絶対出ろよ!!」
    でかい声で言ったら苦笑された。
    「分かったって」
    言いつつ、宮城の顔が少し嬉しそうなことにも気付いている。三井は、忘れられない男に再会してしまった。


    「もしもし、三井さん?」
    電話の第一声を聞いて、あぁ良かったと安心した。ちゃんと出てくれた。
    「おう、寂しかったかよ宮城」
    「ぜーんぜん、何言ってんだか」
    「オレは寂しかったぜお前に会えなくて」
    電話口でハハッと軽やかに笑う声。この間会った時より全然余裕そうだなお前。
     言いたいことはたくさんある。聞きたいことも。
    それでも今は、どうにか繋いだ糸を途切れさせないようにしたい。途切れかけた結び目を、三井の方から結び直してやる。
    諦めの悪い男と一度でも付き合って、期待をもたせて、裏切って、また見つかったらどうなるかを教えてやりたい。
     
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    Orr_Ebi

    DOODLE3/1のうちにあげておきたかった沢深。
    沢への感情を自覚する深の話。※沢はほぼ出てきません
    ・深津の誕生日
    ・深津の名前の由来
    ・寮母、深津の母など
    以上全て捏造です!
    私の幻覚について来れる方のみ読ましょう。振り落とされるなよ。

    ※沢深ワンドロライのお題と被っていますがそれとは別で個人的に書いたお話です
    シオンの花束 同じ朝は二度と来ない。
     頭では分かっていても、慣れた体はいつもの時間に目覚め、慣れ親しんだ寮の部屋でいつも通りに動き出す。
     深津は体を起こして、いつものように大きく伸びをすると、カーテンを開け窓の外を見た。まだ少し寒い朝の光が、深津の目に沁みた。雪の残る風景は、昨日の朝見た時とほぼ同じ。
     同じ朝だ。けれど、確実に今日だけは違うのだと深津は分かっている。少し開けた窓から、鋭い冷たさの中にほんの少し春の甘さが混ざった風を吸い込む。
     3月1日。今日、深津は山王工業高校を卒業する。そして、奇しくもこの日は、深津の18歳の誕生日であった。

     一成、という名前は、長い人生の中で何か一つを成せるよう、という両親からの願いが込められている。深津自身、この名前を気に入っていた。苗字が珍しいので、どうしても下の名前で呼ばれる事は少なかったが、親しい友人の中には下の名前で呼び合う者も多く、その度に嬉しいようなむず痒いような気持ちになっていたのは、深津自身しか知らないことだ。
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    Orr_Ebi

    TRAINING沢深ワンライお題「横顔」で書いたんですが、また両片思いさせてるしまた深は叶わない恋だと思っている。そして沢がバカっぽい。
    全然シリアスな話にならなくて、技量が足りないと思いました。いつもこんなんでごめんなさい。
    横顔横顔

     沢北栄治の顔は整っている。普段、真正面からじっくりと見ることがなくても、遠目からでもその端正な顔立ちは一目瞭然だった。綺麗なのは顔のパーツだけではなくて、骨格も。男らしく張った顎と、控えめだが綺麗なエラからスッと伸びる輪郭が美しい。
     彫刻みたいだ、と深津は、美術の授業を受けながら沢北の輪郭を思い出した。沢北の顔は、全て綺麗なラインで形作られている。まつ毛も瞼も美しく、まっすぐな鼻筋が作り出す陰影まで、沢北を彩って形作っている。
     もともと綺麗な顔立ちの人が好きだった。簡単に言えば面食いだ。それは、自分が自分の顔をあまり好きじゃないからだと思う。平行に伸びた眉、重たい二重瞼、眠そうな目と荒れた肌に、カサカサの主張の激しすぎる唇。両親に文句があるわけではないが、鏡を見るたびに変な顔だなと思うし、だからこそ自分とは真逆の、細い眉と切長の目、薄い唇の顔が好きだと思った。それは女性でも男性でも同じで、一度目を奪われるとじっと見つめてしまうのが悪い癖。だからなるべく、深津は本人に知られないように、そっと斜め後ろからその横顔を眺めるのが好きだった。松本の横顔も、河田男らしい顔も悪くないが、1番はやっぱり沢北の顔だった。
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