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    Orr_Ebi

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    Orr_Ebi

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    ご当地CMの話です。ポイピクにあげてなかったので。
    ⛰️👑カプなし!
    ※沢深と同じ工場で生産しています

    #SD腐

    28個食べました金萬のcm

     深津が変な物好き、というのは有名な話で、とにかく普通だったらあまり気にしないものや、特徴的な物を愛でては嬉しそうにしているのは、周知の事実だった。
    中でも最近ハマっているのは、某秋田県の有名な焼き菓子土産のcmで、見かけるたびに口ずさんではずっと歌っているので、周りに「頭おかしくなるからやめろ」と言われていた。
    でも、俺は結構好きだった。
    「イチノだけピョン、俺の金萬の歌を聞いてくれるのは」
    厳密には金萬の歌は深津の歌ではないけれど、嬉しそうだったから何も言わなかった。
     しかしそこは強豪バスケ部、テレビをゆったりと観る時間もくつろぐ時間もないほど練習に追われていたから、深津があのcmを妙に流暢に歌えることは、ほとんどの人は忘れてしまっていた。
    例に漏れず俺も。
     そんな折、俺は盲腸で病院に運ばれた。我慢のしすぎが祟ったのだ。
    入院中はやることがない。
    みんな気を遣って雑誌や本や、学校の宿題などを届けてはくれたが、それでも余るほど時間があった。
    病室にはテレビがあって、ぼんやりそれを眺めながら貸してもらった漫画雑誌を読んでいる時だった。
    そのcmは鮮烈に俺の耳に入り、そして驚かせた。
    呆気に取られたまま見守って、いてもたってもいられなくなった俺は、急いで病室を抜け出し、山王工業バスケ部の寮の固定電話に電話をかけた。
    深津を、と言うと、深刻な俺の声に電話をとった寮母さんは何かを察してすぐに代わってくれた。
    「どうしたピョン」
    「深津、落ち着いて聞いてほしい」
    「盲腸またぶり返したピョン?」
    「違う、もっと大事なことだ」
    すぐに言ってしまいたいのをグッと堪えて、言葉を選ぶ。
    「もう、金萬のcmでダニー・リベラさんの歌声は聴けないんだ」
    ヒュッ、と息を呑む音がした。深津は無言だ。
    それもそのはず、あんなに気に入っていたのだから。
    そして、俺も深津があの歌を口ずさんでいるのが大好きだったのだから。
    「ディオスミオ…」
    深津が何か言ったが、意味はわからなかった。でも、スペイン語だ、きっと。
    ちょっと興味持ち始めて、スペイン語の勉強始めたばっかりだったのにな、深津。

    それから数日が経った。


    「リコ」
    夕飯をみんなで食堂で摂ってる時に、突然深津が言った。
    「は?」
    「なんて?」
    「今全然違う話してたのに」
    同じ卓を囲っていた河田、野辺、松本が、それまで楽しくおしゃべりしていたのをやめて、一斉に深津を見る。
    当の本人は、口に入れたおかずをもぐもぐと咀嚼している。終わってから、静かに口を開く。
    「今日の新しいおかず」
    そう言って、深津の皿に乗ったほうれん草の白和えを箸で指す。ちょっと行儀が悪いが、親も監督も見ていない男子寮での食事風景では良くあることだ。
    あ。とその時俺はピンときた。
    「美味しかったんでしょ」
    深津が嬉しそうに俺を振り返る。
    「イチノ、正解ピョン」
    やったーいえーい、とハイタッチ。
    深津は、今日限定のおかず、ほうれん草の白和えを食べて美味しいと言ったのだ。
    いつもは無いおかずなのでどんな味なのかわからないのと、今日のメインの煮込みハンバーグがあまりに輝きすぎていて、他のメンバーは誰も取らなかった。
    ヒントは、例のcm。耳に残るあのリズムと印象的な映像だ。
    「なんの話だ…」
    「知らないピョン?新しくなったんだピョン」
    「ああ、金萬」
    「ああ〜、深津好きそうだもんなあれ」
    河田と野辺が納得している横で、松本が複雑そうな顔で「あれか…」と顔を曇らせた。
    「最初見た時全然意味わからなくて引いちゃったんだよな」
    「松本はダニー・リベラさんの時から引いてたピョン」
    「そうそう、今の何ってすごい顔してたよね」
    「あれは深津が横で完璧に歌い出したから引いたんだよ…」
    みんなでテレビを見ていたら流れ始めた金萬のcmに、松本だけ困惑していたのが懐かしい。ついでにその後流れた修学旅行安否連絡のcmにも「こんなの流すのか!?」とでかい声で驚いていた。
    「てっきり深津だば、ダニーさんのcm見れねくて拗ねてると思ってたけどな」
    先に食べ終わった河田が、お皿を片付けながら言った。確かに。あの時深津は、電話の向こうで驚愕していたはず。
    「気づいたんだピョン」
    「なにを?」
    フフ、と深津は得意げな顔をする。いつもは表情の変わりにくい深津も、好きなものの話となると表情豊かだ。
    「新しいcmも!ダニーさんの歌声だピョン!」
    高らかに宣言した。が、バスケ部特有の腹からの声量だったので、食堂に響いた。
    隣の一年生のテーブルの後輩たちが、キョロキョロと深津を不思議そうに見ている。
    「そんな事だろうと思った」
    「イチノならわかってくれると思ってたピョン」
    「良かったね、深津」
    分かり合えてついニヤニヤした。不思議なものを好きな深津がまた見れて、俺は嬉しくてたまらなかった。
    「明日買いに行ってみんなに配るピョン」
    「え〜いらないなあ」
    「あれパサパサして口の中の水分持ってかれんだよな」
    「というか、食べた事ないかも、実は」
    「あーオレも」
    「なんという事だピョン、ダニーさんに失礼だピョン」
    「いや、ダニーさんじゃなくて金萬の会社にだろ」
    そもそもお土産用でしょあれ、など口々に言いながら、山王工業バスケ部の夜は更けていく。

    翌日、金萬を押し付ける深津とともに牛乳を配った俺は、受け取った部員から「ナイスアシスト」と感謝された。
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    Orr_Ebi

    DOODLE3/1のうちにあげておきたかった沢深。
    沢への感情を自覚する深の話。※沢はほぼ出てきません
    ・深津の誕生日
    ・深津の名前の由来
    ・寮母、深津の母など
    以上全て捏造です!
    私の幻覚について来れる方のみ読ましょう。振り落とされるなよ。

    ※沢深ワンドロライのお題と被っていますがそれとは別で個人的に書いたお話です
    シオンの花束 同じ朝は二度と来ない。
     頭では分かっていても、慣れた体はいつもの時間に目覚め、慣れ親しんだ寮の部屋でいつも通りに動き出す。
     深津は体を起こして、いつものように大きく伸びをすると、カーテンを開け窓の外を見た。まだ少し寒い朝の光が、深津の目に沁みた。雪の残る風景は、昨日の朝見た時とほぼ同じ。
     同じ朝だ。けれど、確実に今日だけは違うのだと深津は分かっている。少し開けた窓から、鋭い冷たさの中にほんの少し春の甘さが混ざった風を吸い込む。
     3月1日。今日、深津は山王工業高校を卒業する。そして、奇しくもこの日は、深津の18歳の誕生日であった。

     一成、という名前は、長い人生の中で何か一つを成せるよう、という両親からの願いが込められている。深津自身、この名前を気に入っていた。苗字が珍しいので、どうしても下の名前で呼ばれる事は少なかったが、親しい友人の中には下の名前で呼び合う者も多く、その度に嬉しいようなむず痒いような気持ちになっていたのは、深津自身しか知らないことだ。
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    Orr_Ebi

    TRAINING沢深ワンライお題「横顔」で書いたんですが、また両片思いさせてるしまた深は叶わない恋だと思っている。そして沢がバカっぽい。
    全然シリアスな話にならなくて、技量が足りないと思いました。いつもこんなんでごめんなさい。
    横顔横顔

     沢北栄治の顔は整っている。普段、真正面からじっくりと見ることがなくても、遠目からでもその端正な顔立ちは一目瞭然だった。綺麗なのは顔のパーツだけではなくて、骨格も。男らしく張った顎と、控えめだが綺麗なエラからスッと伸びる輪郭が美しい。
     彫刻みたいだ、と深津は、美術の授業を受けながら沢北の輪郭を思い出した。沢北の顔は、全て綺麗なラインで形作られている。まつ毛も瞼も美しく、まっすぐな鼻筋が作り出す陰影まで、沢北を彩って形作っている。
     もともと綺麗な顔立ちの人が好きだった。簡単に言えば面食いだ。それは、自分が自分の顔をあまり好きじゃないからだと思う。平行に伸びた眉、重たい二重瞼、眠そうな目と荒れた肌に、カサカサの主張の激しすぎる唇。両親に文句があるわけではないが、鏡を見るたびに変な顔だなと思うし、だからこそ自分とは真逆の、細い眉と切長の目、薄い唇の顔が好きだと思った。それは女性でも男性でも同じで、一度目を奪われるとじっと見つめてしまうのが悪い癖。だからなるべく、深津は本人に知られないように、そっと斜め後ろからその横顔を眺めるのが好きだった。松本の横顔も、河田男らしい顔も悪くないが、1番はやっぱり沢北の顔だった。
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    Orr_Ebi

    TRAINING喧嘩する沢深。でも仲良し。
    なんだかんだ沢が深に惚れ直す話。
    とあるラブソングを元に書きました!

    大学生深津22歳、留学中沢北21歳くらいをイメージしてます。2月のお話。
    期間限定チョコ味 足先が冷たくなっていく。廊下のフローリングを見つめて、何度目か分からないため息をついた。
    「ちょっと頭冷やしてきます」
     深津さんにそう告げて部屋を出てから、15分は経っている。もうとっくに頭は冷えていた。爪先も指先も冷たくなっていて、暖かい部屋の中に入りたいと思うのに、凍りついたようにその場から動けなかった。
     なんて事ない一言がオレたちに火をつけて、すぐに終わる話だと思ったのに、想定よりずっと長くなって、結局喧嘩になった。オレが投げかけた小さな火種は、やがて深津さんの「俺のこと信用してないのか?」によって燃え広がり、結局最初の話からは全然違う言い合いへと発展し、止まらなくなった。
     いつにも増して深津さんが投げやりだったのは、連日の厳しい練習にオレの帰国が重なって疲れているから。そんな時に、トレーニング方法について何も知らないくせに、オレが一丁前に口出ししたから。それは分かってるけど、でも、オレがやりすぎなトレーニングは体を壊すって知ってるから、心配して言ったのに。
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