Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    Orr_Ebi

    @Orr_Ebi

    気ままに書いてます!メッセージなどお気軽に♡

    ☆quiet follow Yell with Emoji 😁 👌 🌷 🍤
    POIPOI 36

    Orr_Ebi

    ☆quiet follow

    ご当地CMの話です。ポイピクにあげてなかったので。
    ⛰️👑カプなし!
    ※沢深と同じ工場で生産しています

    #SD腐

    28個食べました金萬のcm

     深津が変な物好き、というのは有名な話で、とにかく普通だったらあまり気にしないものや、特徴的な物を愛でては嬉しそうにしているのは、周知の事実だった。
    中でも最近ハマっているのは、某秋田県の有名な焼き菓子土産のcmで、見かけるたびに口ずさんではずっと歌っているので、周りに「頭おかしくなるからやめろ」と言われていた。
    でも、俺は結構好きだった。
    「イチノだけピョン、俺の金萬の歌を聞いてくれるのは」
    厳密には金萬の歌は深津の歌ではないけれど、嬉しそうだったから何も言わなかった。
     しかしそこは強豪バスケ部、テレビをゆったりと観る時間もくつろぐ時間もないほど練習に追われていたから、深津があのcmを妙に流暢に歌えることは、ほとんどの人は忘れてしまっていた。
    例に漏れず俺も。
     そんな折、俺は盲腸で病院に運ばれた。我慢のしすぎが祟ったのだ。
    入院中はやることがない。
    みんな気を遣って雑誌や本や、学校の宿題などを届けてはくれたが、それでも余るほど時間があった。
    病室にはテレビがあって、ぼんやりそれを眺めながら貸してもらった漫画雑誌を読んでいる時だった。
    そのcmは鮮烈に俺の耳に入り、そして驚かせた。
    呆気に取られたまま見守って、いてもたってもいられなくなった俺は、急いで病室を抜け出し、山王工業バスケ部の寮の固定電話に電話をかけた。
    深津を、と言うと、深刻な俺の声に電話をとった寮母さんは何かを察してすぐに代わってくれた。
    「どうしたピョン」
    「深津、落ち着いて聞いてほしい」
    「盲腸またぶり返したピョン?」
    「違う、もっと大事なことだ」
    すぐに言ってしまいたいのをグッと堪えて、言葉を選ぶ。
    「もう、金萬のcmでダニー・リベラさんの歌声は聴けないんだ」
    ヒュッ、と息を呑む音がした。深津は無言だ。
    それもそのはず、あんなに気に入っていたのだから。
    そして、俺も深津があの歌を口ずさんでいるのが大好きだったのだから。
    「ディオスミオ…」
    深津が何か言ったが、意味はわからなかった。でも、スペイン語だ、きっと。
    ちょっと興味持ち始めて、スペイン語の勉強始めたばっかりだったのにな、深津。

    それから数日が経った。


    「リコ」
    夕飯をみんなで食堂で摂ってる時に、突然深津が言った。
    「は?」
    「なんて?」
    「今全然違う話してたのに」
    同じ卓を囲っていた河田、野辺、松本が、それまで楽しくおしゃべりしていたのをやめて、一斉に深津を見る。
    当の本人は、口に入れたおかずをもぐもぐと咀嚼している。終わってから、静かに口を開く。
    「今日の新しいおかず」
    そう言って、深津の皿に乗ったほうれん草の白和えを箸で指す。ちょっと行儀が悪いが、親も監督も見ていない男子寮での食事風景では良くあることだ。
    あ。とその時俺はピンときた。
    「美味しかったんでしょ」
    深津が嬉しそうに俺を振り返る。
    「イチノ、正解ピョン」
    やったーいえーい、とハイタッチ。
    深津は、今日限定のおかず、ほうれん草の白和えを食べて美味しいと言ったのだ。
    いつもは無いおかずなのでどんな味なのかわからないのと、今日のメインの煮込みハンバーグがあまりに輝きすぎていて、他のメンバーは誰も取らなかった。
    ヒントは、例のcm。耳に残るあのリズムと印象的な映像だ。
    「なんの話だ…」
    「知らないピョン?新しくなったんだピョン」
    「ああ、金萬」
    「ああ〜、深津好きそうだもんなあれ」
    河田と野辺が納得している横で、松本が複雑そうな顔で「あれか…」と顔を曇らせた。
    「最初見た時全然意味わからなくて引いちゃったんだよな」
    「松本はダニー・リベラさんの時から引いてたピョン」
    「そうそう、今の何ってすごい顔してたよね」
    「あれは深津が横で完璧に歌い出したから引いたんだよ…」
    みんなでテレビを見ていたら流れ始めた金萬のcmに、松本だけ困惑していたのが懐かしい。ついでにその後流れた修学旅行安否連絡のcmにも「こんなの流すのか!?」とでかい声で驚いていた。
    「てっきり深津だば、ダニーさんのcm見れねくて拗ねてると思ってたけどな」
    先に食べ終わった河田が、お皿を片付けながら言った。確かに。あの時深津は、電話の向こうで驚愕していたはず。
    「気づいたんだピョン」
    「なにを?」
    フフ、と深津は得意げな顔をする。いつもは表情の変わりにくい深津も、好きなものの話となると表情豊かだ。
    「新しいcmも!ダニーさんの歌声だピョン!」
    高らかに宣言した。が、バスケ部特有の腹からの声量だったので、食堂に響いた。
    隣の一年生のテーブルの後輩たちが、キョロキョロと深津を不思議そうに見ている。
    「そんな事だろうと思った」
    「イチノならわかってくれると思ってたピョン」
    「良かったね、深津」
    分かり合えてついニヤニヤした。不思議なものを好きな深津がまた見れて、俺は嬉しくてたまらなかった。
    「明日買いに行ってみんなに配るピョン」
    「え〜いらないなあ」
    「あれパサパサして口の中の水分持ってかれんだよな」
    「というか、食べた事ないかも、実は」
    「あーオレも」
    「なんという事だピョン、ダニーさんに失礼だピョン」
    「いや、ダニーさんじゃなくて金萬の会社にだろ」
    そもそもお土産用でしょあれ、など口々に言いながら、山王工業バスケ部の夜は更けていく。

    翌日、金萬を押し付ける深津とともに牛乳を配った俺は、受け取った部員から「ナイスアシスト」と感謝された。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💜💜💜💜💜💜💜💜💜💜🎵🎻🎶🎤💴🈵💯💯😂😂😂👏🙏💖☺💜💜💜👍💯💯💯☺💴🈵💴🈵💯💯😂👍☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    Orr_Ebi

    DONEアラサー沢深が大人になってやっとくっつく話。🏀プロ選手×会社員パロ。深津さんが少し女々しいかもなので注意。沢深ハッピーになあれ🪄

    タイトルは同名の楽曲より。
    Love U like that 「結婚しないんですか?」
     麺をずるずると啜っていた俺は、その言葉に一瞬動きを止めた。結婚。また結婚の話か、と頭の中で反芻して麺を最後まで啜りきった。
     「なんでまた」
    咀嚼して飲み込んでからそう答えると、隣の席で同じ豚骨ラーメンを啜っていた後輩が、うーんと唸る。
     「だって深津さんの歳って、周り結構結婚してません?」
     「してる」
     「なんか焦りません?そういうの」
     三つ下の後輩は、人によっては無神経だと感じらるような発言をなんて事ないように言った。焦るか、と改めて自分に問うて見る。確かに、高校時代の友人たちはほとんど既婚者だ。
     河田は早々に学生時代からの彼女と入籍して3人のパパだし、松本はつい最近結婚したばかりだ。イチノは…、恋人はいるけどまだかなと言っていたような気がする。野辺も確か二年前に結婚式を挙げていたはずだ。そう考えると、学生時代につるんでいた5人の中で半分以上は結婚したことになる。まぁ、それもそうか。もう30を過ぎたのだからそういった選択をするようにもなる。
    11699

    related works

    recommended works