邂逅「落としましたよ」
ぼんやりと明るい世界に、その声は突然響き渡った。
「感謝する」
淡々とした低い声は父。
「すみません、ありがとうございます」
少し控えめな、落ち着いた母の声。
「いえ、気づいて良かったです」
そして『知らないけれど、知っている』男の声。
私は、彼を知っている。
遥か昔。
ここではない、寒さの厳しい過酷な…美しいヒスイの大地。
私達は出逢って、新しい命を育み、そして朽ちた。
そう、私の最期の時──キミと約束をしたのだ。必ず、何百年かかっても、また逢おうと。
「今日は、お宮参りですか?」
「そうなんです。この子、今日が初めてのお出かけで…」
昔と変わらない声で彼が話しかけ、母が返答しているようだ。
悔しいかな。生まれて一ヶ月程度の目では、周りが明るいか暗いかしか判断できない。
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