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    kanaTa🦉

    @_mgmg457

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    2022.06.27 くりんば 梅雨
    pixivから

    #くりんば

    くりんば梅雨時期は、晴れていても雨が降っていてもじめじめとし、蒸し暑い。主が熱中症対策にとクーラーを設置してくれたが、経費の都合上大広間に3台が限界だった。後は各部屋に扇風機を購入。扇風機も弱から強へと様々な風を設定出来るが、それでも自分に当たるのは生ぬるい風だった。
    体中、汗でびっしょりし思わず布と小豆色の長袖のジャージを脱いだ。しかし誰にも見られたくない為、ほぼ全振りが居るであろう大広間には向かわず、執務室の付近の縁側へ向かう。

    ーーーチリン チリン

    暑がりの主がどうやら、少しでも冷を感じたいが為に、倉庫から引っ張り出してきたらしい。金魚鉢をモチーフにした風鈴だった。
    今日は誰もここに居ないようだ。ここで少し涼んで、休息を取ろう。
    そう思い、ジャージを軽く畳んで枕代わりにし、布を掛け布団代わりにするとゴロリと横になる。

    「あんたもそこに居たのか。」

    突然頭上から声が聞こえた。本丸随一の一匹狼もどうやら涼しくて、静かな場所を探していたらしい。

    「邪魔なら…そこをどく。」
    「いや、そのままでいい。」

    「これを光忠から預かって来た。」と言い、俺が寝転がる隣に腰掛けた。
    大倶利伽羅が差し出した皿の上には葛粉を使用した透明な生地に餡子が包まれた。水饅頭。

    「水饅頭か。」
    「主が光忠や歌仙に駄々をこねたらしい。」

    「主らしいな。」とふと笑うと、大倶利伽羅も口元を緩め、「そうだな。」と同意した。

    「俺は味の感想を求められて、厨で食べて来た。ここにあるのは山姥切の分だ。」
    「2つも食べていいのか…」
    「いらないなら俺が食べるが。」

    慌てて起き上がり、水饅頭の皿を受け取る。砕けた氷と水も一緒に掬い、口へ運ぶ。
    あんなにじめじめして、蒸し暑く嫌な気分だったのが幾分もましになる。

    「うまい。」
    「そうか。」

    もぐもぐと咀嚼する俺の頭をそっと撫でる。先程よりも顔つきが優しい。いや、甘ったるいと表した方がいいのだろう。
    目を細め、口は閉じたままではあるが口角が少し上がっている。
    折角水饅頭を食べることで少し口の中がひんやりとしたのにも関わらず、頬が熱くなる。

    「ん。」

    わざわざ探してきてくれた大倶利伽羅にお礼も込めて、スプーンで掬った水饅頭を差し出す。
    少し戸惑いながらも「あ」と開けた彼の口に放り込む。

    「慣れ合わないんじゃなかったのか。」
    「…」

    今口の中にあるのになぜ話しかけると言わんばかりの顔でじっとこちらを見つめられる。

    「ありがとう。」

    たまにはこういうのもいい。
    この季節も好きになれそうだ。
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