なんで飲んでくれないの シュウはいつも、血を少量しか飲んでくれない。俺以外の血を飲んでる様子もないし、一口二口で足りるとも思えない。個人的にはもっと十分なぐらい飲んで欲しいって思うけど、それを聞いたら
「美味しいから飲み過ぎないように注意してるんだよ」
と笑われた。美味しいなら沢山飲んだっていいじゃん。俺、シュウの恋人だよ?
「ルカ、今日もでごめんね。 少し飲んでいいかな?」
「もちろん!」
シュウからの吸血のお誘いが来ると、少しそわそわする。そして、今日こそ沢山飲んでくれるかもって期待もする。だけど、今日もいつもと同じく少量で済まそうとしているらしい。俺の血じゃ役不足?思わずカッとなって、離れようとしたシュウの頭を力を込めて抑え込む。ぐぷりと肌に歯が突き刺さる感覚がして、ピリと痛みが走った。押さえつけた頭は離れようとするが、力の強さでは俺の方が上だ。暫くすると、血を吸われる感覚があった。それが嬉しくて、もっともっとと手に力が篭もる。血の気が足りなくなったと感じてから頭から手を離すと、シュウの目はとろりと潤んでおり、息も弾んでいた。揺れる体を慌てて抱きしめ、倒れないように引き寄せる。話を聞いてみれば、濃い血を飲みすぎると興奮作用があり自分では体を支えられないと言われる。どうしたらいいかと聞くと、時が経つのを待つしかないとのこと。オロオロと手を彷徨わせていると、シュウの手が力無く重ねられた。
「ね、ルカ…ルカがこんなにしたんだから、責任とってよね…」
欲情に染るアメジストがこちらを射抜く。ごくり、と唾を飲み込み、シュウを抱き上げた。
「ほんとごめん、こうなるって知らなくて」
「言わなかったからね」
「うん…ベッド、運ぶね」
「ここでいいよ」
「ダメだよ! 体痛めるじゃん!」
「いいから」
シュウの手が、自身の首に回される。
「めちゃくちゃにして、お願い、ルカ」
プツリ、何かが切れる音がしてそこからの意識は朦朧としている。俺自身血が不足していたし、可愛い恋人からの普段聞けない直接的な言葉を前にしたら、理性なんてちっぽけなんだと感じた。