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    最近忘羨沼に落ちました

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    cql忘羨。
    43話で一夜を共にした後の知己が道侶になって2回目の知己越えをする話。
    ……を書きたかったのですが、冒頭しかできませんでした。
    今後知己越え予定ですが、現時点で全年齢なので制限かけてません。無念。
    後日書き終えた際は上げ直しの予定です。

    #忘羨
    WangXian

    2回目が越えられない 藍忘機は人肌を知らぬわけではない。
     しんしんと雪が降り積もる寒い夜、私室である静室で凍える身体を温めるように魏無羨を抱き寄せたのは、記憶に新しい。
     言葉はなかった。ふと、互いの視線が絡み、それを解くことが出来ないまま、気づけば二人の距離が縮まり、唇を重ねていた。魏無羨の唇は、口にしていた天子笑のせいで潤み、芳醇な味わいの残り香が鼻腔をくすぐる。魏無羨が日頃から絶賛しているその味は、確かに甘美に思えたが、結局のところ魏無羨と口づけをしている事実に高揚してそう感じているだけなのかもしれなかった。
    「藍湛」
    「…………魏嬰」
     唇を触れては離して、口づけを繰り返す。そのうちに冷えていた魏無羨の身体は徐々に熱が籠っていく。室内にいた藍忘機の身体はそれ以上に体温が上がり、その身に纏う冷えた檀香とは相反していて、ちぐはぐだった。心臓の鼓動は増していくばかりで、巡る血流も速まっていく。熱く滾る藍忘機の身体に魏無羨は擦り寄って、心地よさに身を預ける。燻ぶる熱を分かち合う行為はとどまることをしらず、そのまま共に寝床になだれ込んだのは自然な流れだった。続く口づけの間、藍忘機のみならず魏無羨までもがその多弁な口が留守になり、時折互いの名前を呼ぶためだけに動いた。身に着けた服は段々煩わしくなり脱がせ合い、露わになった肌に手のひらを滑らせる。
    「……っ」
     藍忘機の熱を帯びた手に驚いて、魏無羨が息を詰める。その微かな吐息でさえも煽られて、冷静な判断力は残されず、目の前の男を暴くことに藍忘機は夢中になる。そのうち、魏無羨は臥榻に横たわりのその上に藍忘機が覆いかぶさる体勢になっていた。漆黒の長い髪が、魏無羨を隠す帳のように流れた。
    「……魏嬰、抹額を」
     外して欲しい、と。けして大きな声でないのに、ぽそりと呟かれたその願いははっきりと魏無羨の耳に届く。魏無羨は目を大きく見開くが、藍忘機から注がれる視線を正面から受け止める。
    「……あぁ」
     そう返すと、魏無羨は両腕を伸ばしてしゅるりと藍忘機を律していた抹額を解く。そのまま白い頬を捉えると、己へと引き寄せて再び唇を重ねた。昂った熱情に委ねて肌を重ねた。その時に初めて、藍忘機は他人の温もりを——魏無羨の熱を知ったのだ。
     一晩を共に過ごし、翌朝少しうつらうつらとまどろむ魏無羨を横目に隣に並ぶ。この男を今世こそは守ってやりたいのだと、再会してから胸に秘めていた藍忘機の意志は確固たるものとなった。
     金光瑶の悪事が全て暴かれ、刀霊にまつわる事件の幕が下ろされると、魏無羨は旅に出ることを決意する。魏無羨自身は、その旅に藍忘機が同行するのを期待していたが、藍忘機は差し伸べられた手を取ることは出来なかった。知己の望みを叶えてやりたい、けれど彼が自由に平穏な日々を過ごせるよう、尽力したいのも事実であった。進む道は分かれても、通じた心は違えることはない。これが今生の別れになるわけではない、と魏無羨を自分の元に引き留めておきたい本心を抑えながら、それぞれ別の道を歩き出した。
     金光瑶がいなくなり、藍忘機は仙督の任を引き継いだ。混乱する修真界を治めるために、為すべき事は山積みである。日々忙しなく業務をこなしながらも、逢乱必出の呼び名は衰えず問題が起これば自ら赴き解決した。その道中で、一人放浪しながら夜狩をする黒衣の男の噂を聞いた。
     藍忘機宛てに便りはない。それは魏無羨が壮健である証だと信じ、藍忘機は己の使命を果たすことに専念した。瞬く間に時は流れ、仙督の業務も就任した当時の目まぐるしさは大分落ち着いた。藍忘機が静室で琴を奏でていると、外から微かな調べが聞こえる。耳にした瞬間、ばっと藍忘機はその場から立ち、音の鳴る方へと足を運んだ。知己の笛の音を、聞き違えるはずはなかった。辿り着いた先には、藍忘機の焦がれた男が一人笛を鳴らしていた。
    「——魏嬰」
    「久しぶりだな、藍湛」
     藍忘機に呼ばれ陳情から口を離した魏無羨は、少しはにかみながら答えた。藍忘機の方へと歩み寄ると、正面に立って顔を合わせる。
    「仙督になったんだって? おまえの活躍は風の噂で聞いているよ。流石の手腕だな」
    「……そういうおまえは」
    「見ての通り、ピンピンしているさ! 林檎ちゃんと気ままにあちこちを巡ってさ。たまに夜狩をして、貰ったお礼でその地の酒を飲んだりして、その日暮らしを謳歌していたよ」
     くるくると器用に陳情を手の内で遊ばせながら、魏無羨は語る。
    「好きに放浪するのは楽しい。俺の性に合ってるみたいだ。見たことがない土地に足を踏み入れて、そこにいる人達と他愛のない話をして、うまいものを飲み食いして。生前のことを考えたら、こんな生活が出来るようになるなんて夢にも思わなかったよ」
     魏無羨という男は、義を貫くために、己自身の身を削りながら多くの重荷を背負い、雁字搦めになった前世を過ごした。舎身呪で蘇り、修真界の煩わしさのない身になったことで、奔放で身軽な生き方を出来ているのであれば、それは藍忘機にとって喜ばしいことであった。
    「そうか」
     だが、この邂逅がこのまま刹那に終わってしまうことは名残惜しい。せっかく姑蘇まで足を運んだのであれば、少しでも長く雲深不知処に滞在してくれないかと、身勝手にも藍忘機は願ってしまう。共には行けないと、魏無羨の手を取らなかったのは己だというのに。彼は自由であるべきだと思いながらも、ここに留めておく理由を探してしまっている。
     藍忘機の心は矛盾で満ちていた。
    「…………」
    「——ただ」
     告げるべき言葉に逡巡している藍忘機を置き去りに、魏無羨は続ける。
    「蘇ってから刀霊の件が片付くまで、おまえがずっと隣にいただろう? そのせいで、どうにも一人きりだと調子が狂っちゃってな。時折、誰もいない空間に話しかけちゃったり、食べ物を二人分買ってしまったり。そういう時は、林檎ちゃんで騙し騙し過ごしていたんだが、これがあんまりにも続いて林檎ちゃんにも呆れられたのか——あいつの背に乗って行き先を任せていたら、気づけば姑蘇の近くまで来てたんだよ」
     その言葉に、藍忘機は耳を疑った。自分の都合のいいように魏無羨の話を解釈してしまっていないか、思い返して反芻する。
    「隣におまえがいなくて、無性に恋しくなったなんて言ったら、子供っぽいと俺を笑うか? 藍湛」
     自嘲気味に魏無羨が笑う。そんな表情にさせておけず、藍忘機は反射的に魏無羨を掻き抱いた。
    「……笑わぬ」
     ぎゅっと力を込めると、己と上背はそう変わらないはずなのにその体躯のあまりの細さと頼りなさに驚く。捕らえたからには手放したくない、と一心に思う。
    「私も、同じだからだ」
    「……おまえも、俺がいなくて、寂しかった?」
    「……うん」
     すると、藍忘機の腕の中にいる魏無羨がふるふると震えだす。どうしたのかと顔を覗くと、どうやら笑いを堪えていたようだったが、耐え切れずに破顔する。
    「あははっ! なんて可愛らしい返事をするんだ藍湛! そんな調子で願いごとでもされたら、俺は何だって聞いちゃいそうだよ」
     魏無羨もぎゅうと藍忘機を抱きしめ返しながら、そんな軽口を叩く。
    「ならば魏嬰、聞いて欲しい」
     藍忘機は、好機を逃しはしなかった。真剣な眼差しで渾身の『お願い』をした。
    「私と道侶にならぬか」


      ***


     山奥に位置し静けさと霧で包まれた雲深不知処。そこを拠点にする姑蘇藍氏はみな規則正しい生活をしている。卯の刻に目覚め、四千条以上もある家規を守りながら修練に励み、亥の刻には眠りに就く。姑蘇藍氏の第二公子である藍忘機も例に漏れず、仙督になってからも変わらぬ暮らしをしている。
     ただ、藍忘機と同じく静室で寝食を共にしている魏無羨のみが、例外であった。禁止されている酒を飲み、昼近くまで惰眠を貪る。味が薄く山菜を中心とした食事以外に、藍忘機が手ずから用意をした濃い味付けの料理を食べる。それを、藍忘機は咎めることはない。魏無羨にはありのままで過ごして欲しいという藍忘機自身の望みであった。藍忘機が執務をしている間は、静室で夜狩の役に立つような道具の開発に明け暮れたり、藍思追や藍景儀に誘われる形で指導をしているようだ。
     生前は、あまりの堅苦しさに息が詰まりそうだと嘆いていたが、放浪の旅から戻り雲深不知処に身を置くようになった現在は、案外と心地が良いのかその類の文句を魏無羨は漏らさない。自室に戻れば彼がいて、寡黙な藍忘機の分までよくしゃべりよく笑っている。魏無羨が二度目の生を憂いなく過ごせていることに藍忘機は安堵しつつ——同時に、歯痒さを覚える。
    「魏嬰」
     亥の刻が近づき、藍忘機は寝衣に着替えて就寝の準備をする。そろそろ休むことを伝えると、魏無羨も月夜を見ながら天子笑を嗜むのも程々にして藍忘機と同様に床に就くことにしたようだった。
     静室には寝台は一つしかない。長身の成人男性二人が並んで眠るには窮屈であるが、藍忘機は新しいものを準備するつもりはなかったし、魏無羨も自分の寝台が欲しいとは言わず、そのまま二人で使っている。灯していた明かりを落とし、横に並んだ二つの枕にそれぞれ頭を置く。
    「おやすみ、藍湛」
    「……おやすみ、魏嬰」
     横になると、必然的に藍忘機と魏無羨の身体は密着せざるをえない。触れている箇所から温かな熱を感じると、藍忘機の心臓の鼓動はどうしたって逸る。かあと頭に血が上り、男の本能のままにぐっと抱き寄せたくなるのを堪えながら、そっと魏無羨の手をまずは握ってみる。びくりと、その身を震わせるが藍忘機の手が振り払われることはない。握り込んだ手を己に引き寄せて横を向くと、藍忘機の方へと身体の向きを変えた魏無羨と間近で顔を突き合わせる形になる。夜目の利くため、夜闇の中でも魏無羨の表情が確認できた。じっと藍忘機を見つめてあどけなく開いたその口を己のもので塞ごうとゆっくりと距離を縮めるが、触れる寸前で魏無羨が顔を伏せた。
    「ふふっ、……はは! 駄目だ、そんなに見つめないでくれよ藍湛!」
     そのまま、魏無羨は藍忘機の胸元にぐりぐりと顔を埋めてしまう。こうなってしまうと、魏無羨は寝に落ちるまで離れない。はぁと静かに嘆息しながら、自分に抱き着く男の頭を優しく撫でる。風呂の後に藍忘機自ら梳いてやる黒髪はさらさらとして手に馴染んだ。
    「……ゆっくり休め」
     それだけ声をかけて、藍忘機もそのまま瞼を閉じる。今日もやはり、これ以上先に進めなかったことを残念に思いながら。
     ——再会をした時に告白し、魏無羨は藍忘機のお願いを受け入れた。正式に藍忘機と魏無羨が道侶の誓いを立ててから、三月は過ぎた。けれど道侶になって以降、藍忘機は魏無羨と身体を重ねるどころか、口づけさえも出来ずにいた。
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    Replies from the creator

    azusa_mtm

    PAST支部にあげてるものの再掲。
    現代高校生AU忘羨です。『ハロー、ハッピーバースデー』https://poipiku.com/602513/8742413.htmlの後日談になります。
    バレンタイン、前よりは進展してる二人。
    モーニン、ハッピーバレンタイン 二月という時期は、どうしてこうも寒さが堪えるのだろうか。暖房器具を使っていてもひんやりとした空気が部屋に充満している。カーテンの隙間から差し込む眩い日差しが朝を知らせ覚醒を促されるも、もぞもぞと魏無羨はベッドの上で布団に包まりそこから動こうとしない。
     本日は平日で、言わずもがな学生の身分である魏無羨は学校に登校しなければならない。そろそろ支度をするべきであると、頭では理解している。けれど、この温くて幸せな空間を自ら手放すのが惜しく、あっさりと欲に負けて再びうとうと微睡み始めてしまう。遅刻癖のある魏無羨が、より寝坊の頻度が増える季節である。
     入学した当時は、同級生兼幼馴染兼お隣さんの江澄がズカズカと自室に上がり込んで魏無羨を起こしに来てくれていたが、あまりの寝穢い様に早々に見切りをつけて来なくなってしまった。なんとも薄情な奴である。みの虫になっている魏無羨の名前を大声で呼びながら、遠慮なく身体を大きく揺らし、ベッドから引き摺り出されていたのは、今となっては懐かしい思い出だ。
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