デカダンス「ここにいると変わってしまうの、全てが」
侮蔑の色が攻撃性を備え見下すローを逆に嘲るように女は赤黒い口紅を引いた端を吊り上げ、続けた。
「三週間なんてとんでもない。何ヵ月、いえ何年も、それは月日がわからなくなるほどに貴方もここにいるわ。神も見えなくなるの。それを何て言うか知っています?」
おれには関係ないとローはかつて神に遣えた女との会話を切り捨てた。
デカダンス
装飾過多の椅子は木製で樹木の清々しい匂いがする。手摺のやすりのかけかたも完璧で恐ろしいほど腕を置きやすい。いつまでも座っていられる気になる。ここはそう言うものに溢れているような気がした。椅子も机もベッドも絵画も音楽も調度品も娯楽も、永遠を見越して設え配置されていた。完璧な造形と泥沼のような魅力は人々をモナトリアムへと没入させる。
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