羅針盤の行き先は 萌黄色の瞳を輝かせながら「もういっかい! もういっかいやろう」と小さな塊にせがまれる。このやりとりも、数にすればもう片手分をゆうに超えていた。未だ冷めやらない視線を向けられ、面倒だな……という気持ちをなんとか抑え込むこと数十回。母親と同じ色をした瞳に見つめられるたびに、ああ、この人の血が流れているんだなということを嫌というほど実感する。
それでも、この純粋無垢な眼差しを向けられるのは悪くない気分だった。ままごとのような遊びに付き合ってやるたび「ミスラおじさん、ミスラおじさん」と引っ付いてくるこの小さな塊を鬱陶しく思う。それなのに、引き剥がすことが出来ないのは何故だろうか。ミスラが気もそぞろに目を落とすと、なにやら服の裾を引っ張られる気配がした。
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