Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    よるのなか

    二次創作文字書き。HRH🍣右、🍃右中心。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 👏 🎉 🍣 🍃
    POIPOI 62

    よるのなか

    ☆quiet follow

    ウィルガス続きです。任務に関しては適当ゆるふわですご容赦。

    仮初めルームメイト(7)■七 エンカウント

     そろそろ戻ろうか、あてもなく寮の周囲を歩き回っていたガストがそう思い始めた時だった。
    「なぁ、お前」
     聞き覚えのある声が、ガストを呼び止める。それは数日前にガストに声をかけてきた学生のものだった。面倒な奴に見つかったかもしれない、そう思ったが無視して余計なトラブルになるのは避けたい。ガストは仕方なく、声の方向に目を向けた。
    「何か用か?」
     そう問うと、その学生はガストを睨みつけてくる。前回よりも、その表情には余裕がない。
    「勝負」
    「しないって」
    「逃さねぇ」
     この間よりも強引に詰め寄ってくる。どうやら相当機嫌が悪いようだ。
    「むしゃくしゃしてるのを他人に当たって発散するのは良くないぜ」
    「それ位は俺もわかってる。でも、こうでもしないと治まらねぇんだよ」
     そんな理不尽な事を言われても、こちらには付き合う義理は全くない。
    「だったら、他を当たってくれ」
     そう言って、歩き去ろうとするガストだったが。

    「じゃあ、お前と同室の転入生」
     その言葉に、ぴたりと足を止めた。

    「お前か駄目ならそっちだ。お前と一緒に歩いているとこ、見たことあるし。つるんでるってことは、アイツも強いんだろ?」
    「……なんで、そうなるんだよ」
     ガストは、大きく息を吐いた。面倒だ。非常に面倒だが、ウィルに絡むというのなら、見過ごす訳にはいかない。表情を改めて、学生を見る。その眼光の鋭さに、学生の表情も変わった。
    「わかった。相手になってやるよ」
     ガストがそう言った瞬間だった。

     辺りが闇に包まれた。

    *****

     ウィルに声をかけてきたのは、数日前に現象に見舞われた学生だった。念の為療養を、ということで、自室にて面会禁止の状態で休んでいたはずだ。
    「えっと……何かな」
     もしかしたら何か情報が聞き出せるかもしれない、そう思ったウィルは柔らかく問いかける。内気そうに見えたその学生は、ウィルの言葉に緊張を解いたようで、こちらに近付いてきた。
    「僕を止めてくれた人にお礼言いたくて。君、同じ日に転入してきて同じ部屋だっていうから」
    「あぁ……」
     どこかでガストのことを聞いてきたのか。
    「どこかに忘れ物したみたいで、今ちょっと外に出てるんだ」
    「……そうか……」
    「すぐ戻ってくると思うけど、部屋で待つ?」
    「い、いや、そこまでは……」
     どうやら見た目の通り、かなり内気らしい。これで突然ああなったのだから周囲はさぞ驚いたのだろうとウィルは思った。だが、このまま帰してしまうのは勿体無いと思って。
    「じゃあ、少しだけ俺の話し相手になってくれないかな? あいつがまだ帰ってこなくて、時間を持て余してて」
     そう引き止めた。

    *****

     根気強く物事を進めるのは得意だと思う。植物を育てるように、大事に少しずつ、関係を育てていく。そして、良いと思ったところは本心から称賛する。そうすれば良い関係が築けると、ウィルは信じていた。
    「へぇ、そんな勉強方法があるんだ、知らなかったな」
    「僕は、結構その方法が性に合ってるみたいで。この方法を続けたら、成績が上がってきたんだ」
    「成果も出てるんだ、すごいね。俺も試してみようかな」
     この学生とも、そうだ。立ち話ではあったが、話していくうちに少しずつ緊張が取れてきたらしく、学生の口数は多くなっていった。
    「君は、話しやすいね。良い人なんだな」
    「そんなことないよ。俺の話に付き合ってくれてる君が良い人なんだと思うよ」
     そうウィルが言うと、学生は僅かに顔を曇らせた。
    「でも、僕はこの間事件を起こしてしまったし……」
    「君は覚えていないんだろ? 他にも同じようなことになった人もいるみたいだし、君のせいじゃないと思うよ」
     例の話題に差し掛かる。学生はウィルの励ましにも顔を曇らせたままで。ウィルは注意深く話を進めた。
    「それとも何か、思い当たることでもある?」
     ウィルの問いかけに学生は肩をびくりと動かす。何かが、あるのか。
    「良かったら俺に話してみない? ほら、俺は転入したばかりでまだ友達もいないし、誰かに言うようなことはないよ。人に話して楽になることも、あるだろ?」
     そう言うと、学生は暫しの沈黙の後で口を開いた。
    「ストレス、だったのかなって」
    「……ストレス?」
    「実は、先生に紹介してもらった進路があって。僕はそこに行きたいって思ったんだけど、ああなる前の日、電話で親に相談したら物凄く反対されて。せっかく紹介してくれた先生にもそのことは言い難いし、僕も諦めきれないしで……」
    「それが、ストレスに?」
    「誰にも相談できなくて、その日一日ずっとぐるぐる一人で悩んでたんだ。あんなに悩んだのは久しぶりで、その所為かなって」
     誰にも言えない悩みがあった。今の学生の告白と、今まで現象が発生した学生とを脳内で照らし合わせる。
    「…………あ」
    「どうしたの?」
    「あ、あぁ、いや、ちょっと思い出したことがあって。急にごめんね」
     脳裏に浮かんだ情報に思わず声を出してしまう。首を傾げる学生には答えを濁しつつ、ウィルは続けた。
    「それが本当の原因かはわからないけど、やっぱり一人で溜め込むのは君自身も辛いんじゃないかな」
    「そう、だね」
    「俺で良ければまた話を聞くし、その先生にも一度相談してみたらどうかな。君がその進路に前向きだったのは先生も知ってるんだろう?」
    「うん」
    「じゃあきっと、相談に乗ってくれるよ。先生なんだから何か良いこと、提案してくれるかもしれないし」
     ウィルがそう励ますと、学生の表情がようやく晴れた。
    「……そうだね。あんなことにならないためにも、行動してみる」
    「応援してる」
    「ありがとう。君と話せて良かった」
     学生はそう言うと一つお辞儀をして去っていく。その背が見えなくなるまで見送ったウィルは、その後勢い良く自室に戻り、情報を書き留めたメモを見返した。
     現象に遭った学生のうち、一人の女子学生だ。本人は事前に変わったことなど何も無かったと話していたそうだが、ウィル達は彼女に関するある噂を耳にしていた。
     学内の男子学生と恋人関係にあったが、別れたのではないかという噂。現象が起きる数日前から、二人が共にいる姿を見なくなったという。だが、気が強い性格だった彼女からは、誰も真実を聞き出すことができなかった。そして彼女は、かなりその男子学生に精神的に依存していたという。
    「別れたことを誰にも言えずに悩んでいた……とか?」
     その噂を耳にした当時も些か引っかかる内容ではあったが、他の現象が出た学生からは同様な情報がなかったため、共通点ではないという認識だった。だが。
    「もしかして皆、何かしら抱えてたけど、誰にも言えない状態だったのか?」
     もしそうならば、本人からなかなかその情報は引き出せない。だから今までわからなかったのか。勿論誰しも、人には言えない悩みを抱えているのだと思う。この学生達以外にも、このスクール内には多くのそんな人間はいるだろう。だが、中でもこの学生達が、一時的にその悩みが強くなって、そこをサブスタンスに発見されたのだとしたら。
    「……て、これがわかったところで、どうなるんだ……?」
     そこまで考えたところで、ウィルははたと気付いた。仮にこれが事実だったとしても、この情報では事前にサブスタンスの出現を察知することは難しい。そういった学生の特定は、少なくとも外から見ただけではわからない。
    「うーん……」
     やっと手掛かりを掴んだような気がしたのだが。
    「とりあえず、ヴィクターさんに報告してみるか……インカムなら、出歩いているアドラーにも伝わるし」
     ヴィクターなら、良い方法を思いつくかもしれない。そう考えたウィルは、インカムを通じて呼びかけようとした。
     だが。

    『ウィル! ドクター! 聞こえるか!』

     インカムからガストの鋭い声が聞こえた。

    「……アドラー!?」
     ウィルが呼びかけると、ガストから返答があった。
    『サブスタンスが出た!』
    「なんだって!?」
    『こちらでも反応を確認しました。ガストは今、サブスタンスの近くにいるということですね?』
     ヴィクターが質問を投げかける。ウィルはじっとガストの返答を待った。一人で、サブスタンスに遭遇してしまったのか。その状況に、心臓が激しく鳴り始める。
    『あぁ。それでドクターの装置を使ったんだけど……正確には、これ、サブスタンスに取り込まれてるって感じがする』
    「えぇ!?」
    『一人ですか? 他に学生は?』
    『俺の他に一人いる。そいつも一緒に――っ』
     ガストの声が、不自然に途切れた。それから何も聞こえない。
    「おい、アドラー!」
     一向に返答はなく、ざっと血の気が引いた。
    『ウィル、サブスタンスの出現場所を送ります。装置を使ったガストがサブスタンスに干渉しているいることで少し長く拘束できているようなので、すぐに向かってください』
    「わかりました!」
     すぐにヴィクターからメッセージで場所が送られてくる。それを確認しながら勢い良く部屋を出て、走りだした。
     ガストの無事を、祈りながら。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    よるのなか

    DONE幻想水滸伝webオンリーイベント「星の祝祭Ⅵ」のWEBアンソロ企画参加作品です。
    キャラ「2主人公とジョウイ」で、お題「緑」お借りしました(CPなし)
    ミューズ和議決裂後のどこか(設定はふわふわ適当)で、偶然二人だけで会うことになる2主とジョウイの話。
    ハーンとゲンカクも戦時中に酒を酌み交わしていたらしいし、二人にもそんな時があればいいのに、と想像した結果です。
    2主人公の名前→ミラン
     時折、一人になりたくなる時がある。城から出て、誰にも会わずに、ただ一人でぼうっと自然を眺める時間。勿論長時間そんなことをするわけにはいかないので、ごく短い間だけれど。そんな衝動に駆られた時は、ミランはこっそりビッキーを訪ねてどこかに飛ばしてもらい、一人の時間を過ごした後で鏡を使って戻っていた。
     今日も、そのつもりだったのだ。飛んだ先で、思わぬ人物に会うまでは。
    「やっばり、今の時期は緑が綺麗だと思ったんだよな。うん、ここにして良かった」
     そう呟いて、ミランは両の手を天に伸ばし一つ深呼吸をした。澄んだ空気と青々とした空の下で、鮮やかな緑が生い茂っている。乾いた風に揺られて緑が揺れる、その合間からきらきらと漏れる光が綺麗だ。人気のない山の中腹。少し歩けば、故郷が見えてくる。幼い頃冒険と称して、ナナミやジョウイと何度か訪れた場所だった。今日はどこで過ごそうか、そう考えていた時にふと頭の中に浮かんだのが、この場所だった。昔、ちょうどこの時期にも訪れたことがあり、その時に木々の緑がとても美しく感じたのを思い出したのだ。本来ならば今は訪れることは叶わない地であるが、こんな山奥に兵を置く程の余裕はハイランドにもないはずであり、ビッキーの転移魔法と鏡の力で、ほんの僅かな時間ならば滞在は可能だろうと判断して今に至る。勿論これが仲間に知られれば大目玉を食らうことは確実なため、こっそりと。
    2987

    よるのなか

    MOURNINGキスブラ。酔っぱらって暴君極まりないブさんです。ブさんが大分いけいけどんどんおかしなことになってます、すみません…キさんを暴君振りで振り回すブさんが急に書きたくなりまして。
    書いててとても楽しかった。
    割増暴君『三十分後、お前の家』
     受信したメッセージには、それだけが表示されていた。理由も状況もさっぱりわからねぇが、とりあえず三十分後に家にいろ、ということだけはわかったから、ディノにそれを告げてオレは自宅へ足を向ける。ちょうどパトロールが終わったところだから三十分後に着けるけど、これタワーで受け取ってたら三十分後に着けるかなんてわからねぇぞ、とそこまで考えて、いや、パトロール中だとわかっていたんだな、と思い直した。あの男のことだ、それくらい把握済みで送った指示なんだろう。
     ぴったり時間通りに着くと、既にブラッドは玄関先に立っていた。
    「……来たか」
     そう言って、オレをじっと睨んでくる。来るなり睨まれても、とオレは思わず後退りしそうになって、それからよくブラッドを観察した。どうも、目が据わっているように見える。なのにどこか覇気がなくて、それから目元や首筋、頬など全体的に妙に赤いような。
    2335

    recommended works

    佳芙司(kafukafuji)

    MOURNING前にピクシブに投稿してたやつ
    Like a bolt from the blue.(HeriosR/キース×ブラッド)

    「とにかく聞いてくれ、俺は昨日お前等と飲んで、リリーが帰った後にジェイと二軒目に行ったんだ、其処でもしたたか飲んじまって、まぁその時は後悔してなかったんだけど、会計済ませた後になってから段々吐き気を催す方向に酔いが回っちまったんだ、何度も泥酔の修羅場を潜り抜けてきた俺も流石にヤバいなと思って意識がある内にブラッドに連絡したんだ、俺はその時リニアの駅前のベンチにいたから大体の場所と、あとマジヤバい水飲みたいって事も伝えた、ちゃんと伝わってたのかどうか不安だったけどとにかくもう何とかしてくれーって気持ちだった、意識飛びそうなくらい眠気もあったけど、スられちゃ困ると思ってスマホと財布を握り締めて俺は大人しく待ってた訳だよ、そしたら着信があってさ、出たらブラッドなの、アイツなんて言ったと思う? 『項垂れてだらしなくベンチに座っているお前を見つけた。今そっちに向かう』って言ってさ、だらしなくって余計な事言いやがって、こっちはもう気分は最悪だってのによ、んで正面見たらさ、いたんだよ、真っ直ぐこっち見て、人混みの中を颯爽と歩いてくるブラッドがさ……なんかもう、今お前が歩いてるのはレッドカーペットの上ですか? ってな具合に迷いなくこっち来んの、しかも上手い具合に人の波も捌けててさ、もう何がなんだか分かんねーんだけど、目が離せなくて、ぼーっとしてる間にブラッドは俺の近くに来て、またアイツなんて言ったと思う? 『待たせたな』とかクッソ気障な事言いやがったんだよ笑いながら、いや待ってたけど、待ちかねてたけどさぁ、その確信を持った態度は何? って、唖然としちゃうってもんだよ、しかもこっちが何も言わないでいたら一言も言えないくらい体調が悪いのかって勘違いしたのかどうかは知らねーけど、わざわざ近寄って『立てるか?』とか訊いてくるし、いや立てるからって思って立ち上がろうとしたらさ、情けねーけど腰抜かしてたみたいで、よろけちまったんだよ、でもアイツは平然とこっちの腕引いて、オマケにアイツ、腰まで抱いて支えてきてさ、もう大混乱だよ明日雹でも降るんじゃねーのって思った、この天変地異の前触れを予感して困惑する俺を尻目にアイツは『手のかかる奴だな』とか笑いやがってさぁ」
    1817