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    shizuka_shi

    @shizuka_shi

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    shizuka_shi

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    大人な現パロシャルぐだ♂
    全く書いてないけど世界史担当シャルと養護教諭のぐだくんのバレンタインデー。
    最初にちょっとだけモブ子ちゃんがいます。

    「せ、せんせい!」
    呼び止められて振り向くと赤い顔で緊張に震える唇をぎゅっと結んだ女子生徒がいた。
    胸に抱きしめるように抱えている箱は力の入りすぎで少し潰れているように見える。
    その姿に内心またかと肩を落とした。
    もちろん外には出していない、心でだけだ。
    今日でもう何度目だろうか、そう思うほどには声をかけられている。
    バレンタインデー、思春期の学生たちには一大イベントだろう。
    校則で菓子類の持ち込みは禁止だと言われていても、この日だけは当たり前のようにチョコレートを持ち込んでイベントを楽しんでいる。
    学生たちの間だけならまあこれも青春の一コマだと見なかったことにしてもいいが、それに巻き込まれるとなると話が変わってくる。
    義理チョコを片っ端から配っている女子から大袋の内の一つを投げて渡されるくらいならまだいい。
    注意して終わろう。
    しかし、このパターンは駄目だ。
    「ここここれ!」
    両手を伸ばし体を深く曲げて押し出されてきた箱はやはり握った部分がひしゃげていた。
    「……そういうものは受け取らないようにしている」
    そう言った途端、彼女は顔を上げる。その表情はくしゃりと拒否された悲しみに歪んでいた。
    それでもその箱を引っ込める事はせず「受け取ってくれるだけでいいんです」と震える声で言う。
    思わず同情してしまいそうになるがそれは駄目だとはっきりもう一度「受け取れない」と拒否すれば、箱を持つ両手から力が抜けてぶらんと垂れ下がった。
    ますます顔を歪め今にも泣きだしそうな様子ではあったが唇を噛んですみませんでしたとか細い声で言うとくるりと踵を返して走り去る。
    下手に優しいことを言って誤魔化さず、言うべきことをはっきりと言う。
    何も間違っていないはずなのにどこからともなくわいてくる罪悪感に今日と言う日を恨みたくなった。

    「失礼する」
    重たい気分を引きずったまま訪れた保健室の戸を開くと温かな空気がふわりと漂ってくる。
    中にいた養護教諭はシャルルマーニュの様子に驚いた後、困ったように笑って「いらっしゃい」と迎え入れた。
    「ずいぶん疲れてるね」
    「断るのはいいんだが、ああいう傷ついた姿を見るのはどうしてもしんどいな」
    どうぞと差し出されたパイプ椅子に普段はやらないような大きな音を立てて座ってぐったりと背もたれに寄りかかる。
    「シャルルはいい先生だからみーんな気になっちゃうんだよね」
    「何を言う。君だってたくさんの生徒から慕われているだろう」
    ついじっとりした視線で責めるように言うと立香はふっと噴き出すように笑った。
    気恥しさにむっとなるが、さっきの言葉に嘘も過言もない。
    養護教諭が立香に代わってから、保健室は何かとにぎわっている。
    体調不良や怪我をした生徒だけでなく、ちょっとした相談からずっと胸の内に押し込んでいた不安を抱えた生徒まで、ここにやってきては心を開いていく。
    少し前にも、立香が種になっている噂をいくつも聞いた。
    きっとその数以上には立香の元へやってきた生徒はいるはずだ。
    カッコ良い君をずっと見てきたのは自分だという自負がシャルルマーニュにはある。
    そんな彼から向けられる視線に、立香はコホンと咳ばらいをして笑いを止めた。
    「オレだって大人としての自覚と責任はもってるからね。ちゃーんとチョコ渡されても受け取らなかったし、欲しいって言ってもあげてないよ」
    「……ほらみたことか、やっぱり君もそう言われているんじゃないか」
    「それはまあ、オレだってカッコ良いの大人の男ですから」
    「ああそうだな」
    「……ツッコミ所だったのに!」
    ナルシストみたいになっちゃったじゃないか!と騒いでいるが君がカッコ良い人間でないなら世の中には数えるほどしかカッコ良い人はいなくなるだろうとシャルルマーニュは思う。これを言ったら真っ赤になった立香が照れて怒って話をしてくれなくなることは予想できたので言わなかったが。
    「でもシャルルほど本気の人は来てないよ。オレはちゃーんと恋人がいるって公言してるからね」
    「オレだって隠してるわけじゃないぞ!」
    「でも言ったことないんでしょ」
    「言う機会がないだけでだなぁ」
    「そんな風に理想的な大人でスマートにカッコ良いを決めようとするから生徒から雑談に誘われることが無いんだよ」
    「そんなこと……それは、褒めてるのか?」
    「褒めてますよーだ」
    悪戯が成功した子供の様に立香は笑っていて、シャルルマーニュは言葉が続かなかった。
    言いたいことはあるけれど、口を開くと褒め言葉をまっすぐ差し出す姿勢のカッコ良さと素直な笑顔へ可愛さへの言葉が転がり出そうで。
    もごもごと口ごもるシャルルマーニュに首をかしげながら立香は続けた。
    「オレはあと30分くらいで終わるけど、シャルルは?」
    「ん?そうだな、急げば同じくらいだな」
    「じゃあ、一緒に帰ろうか。冷蔵庫にガトーショコラ冷やしてるんだ」
    「……それはもちろん」
    「オレの手作りです!」
    「よし、急いで終わらせてくるな!」
    がしゃんと椅子を揺らして立ち上がったシャルルマーニュはいつも冷静な先生の姿を忘れて、きらきらと目を輝かせた少し子供のようなプライベートの姿をさらけ出している。
    それだけ喜んでくれたのかと思うと、昨日の夜こっそり頑張った甲斐があったというものだ。
    「お風呂から出たらシャルルがホットチョコレート作ってくれる?」
    「おう、まかせとけ!」
    にっと歯を見せて笑うシャルルマーニュを告白してきた生徒達は知らないのだと思うと、立香の胸は少しだけすっと軽くなった。
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