音の無い世界で。ある時代の、ある戦場に赴いていた我々は、遡行軍相手に必死に戦っていた。
戦況はあまり芳しくない。撤退も視野にいれていた矢先だった。
「—っ、水心子っ!!」
清磨の声に反応し放たれた弓矢の直撃こそ避けるが、耳を掠めたそこから焼けるような痛みが広がった。何とか歯を食いしばって体制を整えると、最後の一体を清磨が仕留めた様子が見えた。
さすが、清磨だ。
ホッと胸をなでおろす。終わった…。何とか勝てた…。
張りつめていた緊張が解けたところで、ある違和感に気が付いた。
「水心子、大丈夫? 歩けるかい?」
「…、きよ、まろ…」
「ん? どうしたの水心子?」
ハッキリと…ハッキリと見えるのだ。清磨が、僕に向かって”何か”を語りかけているのが。
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